短編
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兎の衣を借る狼
噴水広場前の階段に座って辺りを見回す。
任務を終えたと思ったら、報告と同時に別の任務を言い渡された。エクソシストが不足しているとはいえ、相変わらず人使いが荒い。
噴水で戯れる子どもやカップルを眺める。見上げれば初夏とはいえ日差しは強く、黒い団服は暑さ対策を施されているものの、見た目には暑いことこの上ない。ため息が出て、視線を戻し目当ての赤毛が現れるのを待つ。
ラビが携わっている任務の助っ人に呼ばれた。
何やら面倒ごとがあったとかで、ラビにしては手こずっているらしい。コムイさんも、ラビのところへなら立続けの任務も駄々をこねずに行ってくれるだろうと思ったわけだ。
悔しいけどその通りで、取り敢えずラビの顔が見られるなら任務でもよかった。
座っているのも疲れてきたので、立ち上がって伸びをする。ついでに広場の向こうに目をやってみる。待ち合わせの時間は過ぎた。どこで何をやっているのか。
もう一度座ろうとしたら、階段の数段下でじっと見つめてくる男がいた。避けるように移動してみても、やっぱり見られている。何だこの人。
目を逸らしたら近付いてきた。こわ。
若干紅潮した顔で、無理やり手を握ってくる。
「君、可愛いね。一人?」
「え?」
テンプレみたいなことを言われて、逆に混乱してしまった。なにこれ、こういうタイプのアクマ?
噴水がどうのとか、美味しいケーキ屋がとかそんなことを言われている気がするけどよく理解できない。これがナンパってやつか。
どうにもできず突っ立っていたら、男の肩を叩く人がいた。待ち焦がれた赤毛。
暗い光を宿した翡翠の瞳は、今までに見たことがないくらい目付きが悪かった。ラビは思わず手を離した男とあたしの間に入り、男の胸ぐらを掴む。
「...オレの女に触るんじゃねぇッ......」
これまた聞いたことのないくらい低い、ドスの効いた声。
何より、そんな台詞が彼の口から出てくるとは思わなかった。
乱暴に手を離して、よろける男には見向きもせずにあたしの手を取る。その背中からはトゲが出ているんじゃないかってくらい怒りが見えた。こっちの方がアクマみたいだ。
階段を1番下まで降りたところで、ラビが振り返ってあたしの肩を掴んだ。必死な顔をして何を言われるかと思えば、
「***大丈夫?!何かされなかった?怖かったよね?大丈夫?!?!!」
「えっ?はぁ、まぁ」
驚いて変な返事をしてしまった。
いつものラビだ。
優しくて、ちょっとヘタレで、あたしのことを大好きでいてくれる、ラビだった。
少し安心した。
「...ちょっと手握られた、だけ」
「マジで?折れてない?!」
「い、今のほうが折れそう、ていうか酔いそう」
「えっごめん!!」
腕を掴んでがくがく揺さぶるのをやめさせる。静止して目が合うと、ラビが心底ほっとした顔をして息を吐いた。珍しくて笑ってしまった。
「...笑うなって、オレほんと心配して...いや、オレが遅かったからか、ごめん」
「いいよ、いいもの見れたし」
「いいもの...?」
「ラビ、ありがとう」
「......ん」
「ところで任務はどうなってるわけ?」
「あ、あぁ...」
取り敢えず昼食がてら打ち合わせを、と手を引かれ、通りの方へ歩き出す。バンダナで誤魔化したボサボサの頭に気付いたけど、それは言わないことにした。
(いつもはこんなに眠そうでやる気なさそうな顔してるのにな...)
(なー***、オレの顔そんなに好き?)
(うん、好き)
(...どうしたの今日、照れる)
噴水広場前の階段に座って辺りを見回す。
任務を終えたと思ったら、報告と同時に別の任務を言い渡された。エクソシストが不足しているとはいえ、相変わらず人使いが荒い。
噴水で戯れる子どもやカップルを眺める。見上げれば初夏とはいえ日差しは強く、黒い団服は暑さ対策を施されているものの、見た目には暑いことこの上ない。ため息が出て、視線を戻し目当ての赤毛が現れるのを待つ。
ラビが携わっている任務の助っ人に呼ばれた。
何やら面倒ごとがあったとかで、ラビにしては手こずっているらしい。コムイさんも、ラビのところへなら立続けの任務も駄々をこねずに行ってくれるだろうと思ったわけだ。
悔しいけどその通りで、取り敢えずラビの顔が見られるなら任務でもよかった。
座っているのも疲れてきたので、立ち上がって伸びをする。ついでに広場の向こうに目をやってみる。待ち合わせの時間は過ぎた。どこで何をやっているのか。
もう一度座ろうとしたら、階段の数段下でじっと見つめてくる男がいた。避けるように移動してみても、やっぱり見られている。何だこの人。
目を逸らしたら近付いてきた。こわ。
若干紅潮した顔で、無理やり手を握ってくる。
「君、可愛いね。一人?」
「え?」
テンプレみたいなことを言われて、逆に混乱してしまった。なにこれ、こういうタイプのアクマ?
噴水がどうのとか、美味しいケーキ屋がとかそんなことを言われている気がするけどよく理解できない。これがナンパってやつか。
どうにもできず突っ立っていたら、男の肩を叩く人がいた。待ち焦がれた赤毛。
暗い光を宿した翡翠の瞳は、今までに見たことがないくらい目付きが悪かった。ラビは思わず手を離した男とあたしの間に入り、男の胸ぐらを掴む。
「...オレの女に触るんじゃねぇッ......」
これまた聞いたことのないくらい低い、ドスの効いた声。
何より、そんな台詞が彼の口から出てくるとは思わなかった。
乱暴に手を離して、よろける男には見向きもせずにあたしの手を取る。その背中からはトゲが出ているんじゃないかってくらい怒りが見えた。こっちの方がアクマみたいだ。
階段を1番下まで降りたところで、ラビが振り返ってあたしの肩を掴んだ。必死な顔をして何を言われるかと思えば、
「***大丈夫?!何かされなかった?怖かったよね?大丈夫?!?!!」
「えっ?はぁ、まぁ」
驚いて変な返事をしてしまった。
いつものラビだ。
優しくて、ちょっとヘタレで、あたしのことを大好きでいてくれる、ラビだった。
少し安心した。
「...ちょっと手握られた、だけ」
「マジで?折れてない?!」
「い、今のほうが折れそう、ていうか酔いそう」
「えっごめん!!」
腕を掴んでがくがく揺さぶるのをやめさせる。静止して目が合うと、ラビが心底ほっとした顔をして息を吐いた。珍しくて笑ってしまった。
「...笑うなって、オレほんと心配して...いや、オレが遅かったからか、ごめん」
「いいよ、いいもの見れたし」
「いいもの...?」
「ラビ、ありがとう」
「......ん」
「ところで任務はどうなってるわけ?」
「あ、あぁ...」
取り敢えず昼食がてら打ち合わせを、と手を引かれ、通りの方へ歩き出す。バンダナで誤魔化したボサボサの頭に気付いたけど、それは言わないことにした。
(いつもはこんなに眠そうでやる気なさそうな顔してるのにな...)
(なー***、オレの顔そんなに好き?)
(うん、好き)
(...どうしたの今日、照れる)