短編
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どんな貴方も
最近は本業が忙しく、それを言い訳に鍛錬もサボり気味だった。今までもそういう期間はあったが、多少身体が鈍っていても任務は頭で切り抜けてこれた。まだ大丈夫だろうと考え始めた頃、広い書庫で脚立を使って本を探しているときに気付いた。
身体が重い。
疲れているし、そんな日もあると目当ての本を抱え慎重に下に降りる。テーブルに本を置き、座ったところで下に目を落としてみた。
「...マジか、オレ」
思わず触る。そこには触り心地のいい腹、もとい脂肪が確かに存在していた。ちょっと落ち込む。自分の身体がもう少年でないことはわかっていたが、まさかこんなことで実感するとは。
今度は腹だけでなく、腰回りや胸、腕も触ってみた。元々骨格は太い方だが、全体的に若干脂肪を纏っている気がする。ため息が出た。一般人なら普通くらいの体型かもしれないが、日々鍛錬を積む戦士たちの中でダントツにだらしないことは確実だ。特にユウと並ばれたら、あちらの方が元来細身であるにせよとんでもない差だ。アレンも然り。やばい。これはやばい。
真っ先に浮かんだのは***だ。***に嫌われるなんてことがあったらオレは。オレは......
椅子を倒す勢いで立ち上がり、広げた資料をざっと見渡した。今やっている作業は急ぎではない。が、早く済ませるに越したことはない。今日から鍛錬を再開することを心に誓い、その為に猛スピードで記録を開始した。
―――――――――――――――――――――――
気付いてしまったら何もかも気になる。こっちを見ているわけではない他人の視線も、ちょっとキツくなった気がする鍛錬着も、自分が普段何を食べているかも。普段の自分では選ばない蒸し鶏のサラダなんかを、虚ろな目で咀嚼する。向かいに座るブックマンが話しかけてきた。
「小僧、目が死んでおるぞ」
「...んなことねーよ、じじいの方こそ死にかけさ」
「軽口を叩く元気はあるか。そんなことをしとる前に...いや、それは腹に手を当てて考えんでもわかっとるか」
「おい腹じゃなくて胸だろ...って、うっせーじじい!」
「やっとその弛んだ身体に気付いたか、遅いわ!」
「ぐっ......」
親代わりでもあるブックマンには何もかもお見通しらしい。というか、寝起きも一緒なのだからオレの生活態度など筒抜けだ。自分で気付くまで言わないところが彼らしい。
しかし、はっきりと言葉で言われるとなかなかに刺さる。
「......最近は籠りきりだったからな、しばらく外に出て身体を動かせ」
「...わーったよ」
「未熟者め」
いつもなら言い返しているところだが、いろいろ考えて飲み込んだ。じじいもそれ以上は何も言わなかった。
こんなどうでもいい会話をブックマンの独自言語でやることはないはずなのだが、それもわかりづらい気遣いかもしれない。
と思ったが、食堂を出て歩きながら腹をつついて笑われたので、全てなかったことにした。
―――――――――――――――――――――――
一通りトレーニングを終えたあと、落ちた体力を実感しながら広いフロアを横切る。そこかしこで組手をするのを見ながら、今誰かとやったら負けるんじゃないかと不安が過ぎる。久しくみんなの顔を見ていないことを思い出し立ち寄ったが、引き返してシャワーを浴びることにした。脳内シミュレーションでもして、その時に備えよう。
「ラビ!」
ちょうどフロアを出たところで、呼び止められた。いちばん会いたかった、いや会いたくなかったかもしれない人物。
同じく汗をかいた***が立っていた。
「ラビがここに来るの久しぶりじゃない?やっと会えたー」
「お、おー...」
会ったら何と言おうかずっと考えていたのに、気の抜けた声しか出なかった。もう終わりなのかと聞かれたので頷くと、あたしも、と言って腕を絡めてきた。久しぶりの感触。腰に手を回すと***も胴体に抱きついてきてハッとする。
「***、オレ汗かいてるからあんまくっつくなって」
「暑くても寒くてもベタベタしてくる人に言われたくないですー...あ、あたしも汗かいてたごめん」
「いや、それはいい、けど...」
「...一緒に、シャワー、浴びない?」
「え?あー......う、ん」
久しぶりの可愛い恋人、腕に押し付けられる身体、上目遣い。運動後の昂ぶった気持ちも後押しして、断ることはできなかった。
というか、正直に言ってめちゃくちゃ***とセックスしたい自分に気付いた。
もうどうにでもなれ。
―――――――――――――――――――――――
着替えを持ってくる間に、先にバスルームに入ってもらった。***は長い髪を洗うのに時間がかかるから、オレが遅れて入るのが丁度いいのだ。
バスルームの扉の前までくると、微かに鼻歌が聞こえる。脱ぎながら声をかけると返事が返ってきて、扉を開けてくれた。湯気の中で少し照れたようにしている***は最高に可愛い。
***が髪の泡を流している間にオレはシャンプーを泡立てて、流し終わった頃にはもうオレの番。流した髪をかきあげるとじっと見られていて、照れ隠しのようにキスをした。
ふざけ合いながらお互いの背中を流して、バスタブに身体を沈める。自室に浴室があるというのは有り難いものだ。その点は、女性団員が羨ましい。
オレの脚の間にすっぽりと収まった***が、胸に顔を埋める。幸せそうな***にこっちまで頬が緩む。
「ふかふかー」
「よかったねー...って、え、ふかふか?」
「うん、ふかふかー」
***がオレの胸を手のひらで押して言う。そうか、オレの身体はふかふかなのか。
......落ち込む。
腕や背中にも手を回す***に、思い切って聞いてみた。
「あのさ***、オレ...太った...?」
「んー、ちょっとおっきくなったかな」
「あ、そう、よね」
「ラビは食べたらすぐついちゃうよねー」
「...待って***、オレの身体をそんな目で見てたの」
「そんな目ってどんな目?...でも、ちょっと身体動かしたらすぐ筋肉つくよね。いいなー」
「え、そう?」
「あたし食べても鍛えてもあんまり身体変わらないから、羨ましいなー」
「...確かに、まぁ」
腰に置いていた手を尻に回し、下からウエスト、胸へ滑らせる。教団に入る前よりはるかに健康的な生活をしているはずだが、普通の女の子より多少引き締まっているくらいなものだ。控え目な胸を両手でやんわり包み込むと、意図に気付いた***が頬を膨らませる。可愛い。
「ラビはあたしの身体をそんな目で見てたんだね」
「...恋人の身体をいやらしい目で見て何が悪いんさ」
「じゃああたしもいいでしょ」
「それとこれとは別さ」
「えー」
***がまたオレの胸に寄りかかる。腹をつつきながら、唐突に笑い出した。
「おいおい、どした」
「だって、気にしてたの?かわいー」
「だ、黙りなさい」
「普通は、女の子の方が太るの気にするんじゃない?」
「確かに」
「別に気にしないよ。...いや、Tシャツからお肉はみ出たりしたらさすがに、あれだけど」
「さすがにそこまで肥える才能はねーさ」
「そうだね、それも才能だね」
適当に言ったが納得されてしまったので、そういうことにしておく。
しばらく黙っていた***が、肩に手をかけて跨ってきた。首に抱きついてきたので抱きしめ返す。
「***?」
「...ちょっとなら、手伝ってあげてもいいよ、運動」
「いや、適当にメニュー組んでるししばらくはそれで...ん?あ、あー......」
まさか***の方からそんなことを言ってくるとは思っていなかったので、思考が追いつかなかった。湯船のせいではない頬の火照りが首筋から離れない。
「じゃあ今夜...、いや、今からお願いするさ」
「ん......」
「出よっか。ここじゃのぼせちゃうさ」
「ん」
なかなか積極的だったのに、今のが精一杯だったのかすっかり大人しくなってしまった。なんだか困ったような顔をしている。心配せんでも、ここからはお兄さんに任せなさい。という気持ちで頭を撫でる。
髪を梳きながら、長い長いキスをした。
(やっぱ、1回3セットくらい?)
(...無理です)
最近は本業が忙しく、それを言い訳に鍛錬もサボり気味だった。今までもそういう期間はあったが、多少身体が鈍っていても任務は頭で切り抜けてこれた。まだ大丈夫だろうと考え始めた頃、広い書庫で脚立を使って本を探しているときに気付いた。
身体が重い。
疲れているし、そんな日もあると目当ての本を抱え慎重に下に降りる。テーブルに本を置き、座ったところで下に目を落としてみた。
「...マジか、オレ」
思わず触る。そこには触り心地のいい腹、もとい脂肪が確かに存在していた。ちょっと落ち込む。自分の身体がもう少年でないことはわかっていたが、まさかこんなことで実感するとは。
今度は腹だけでなく、腰回りや胸、腕も触ってみた。元々骨格は太い方だが、全体的に若干脂肪を纏っている気がする。ため息が出た。一般人なら普通くらいの体型かもしれないが、日々鍛錬を積む戦士たちの中でダントツにだらしないことは確実だ。特にユウと並ばれたら、あちらの方が元来細身であるにせよとんでもない差だ。アレンも然り。やばい。これはやばい。
真っ先に浮かんだのは***だ。***に嫌われるなんてことがあったらオレは。オレは......
椅子を倒す勢いで立ち上がり、広げた資料をざっと見渡した。今やっている作業は急ぎではない。が、早く済ませるに越したことはない。今日から鍛錬を再開することを心に誓い、その為に猛スピードで記録を開始した。
―――――――――――――――――――――――
気付いてしまったら何もかも気になる。こっちを見ているわけではない他人の視線も、ちょっとキツくなった気がする鍛錬着も、自分が普段何を食べているかも。普段の自分では選ばない蒸し鶏のサラダなんかを、虚ろな目で咀嚼する。向かいに座るブックマンが話しかけてきた。
「小僧、目が死んでおるぞ」
「...んなことねーよ、じじいの方こそ死にかけさ」
「軽口を叩く元気はあるか。そんなことをしとる前に...いや、それは腹に手を当てて考えんでもわかっとるか」
「おい腹じゃなくて胸だろ...って、うっせーじじい!」
「やっとその弛んだ身体に気付いたか、遅いわ!」
「ぐっ......」
親代わりでもあるブックマンには何もかもお見通しらしい。というか、寝起きも一緒なのだからオレの生活態度など筒抜けだ。自分で気付くまで言わないところが彼らしい。
しかし、はっきりと言葉で言われるとなかなかに刺さる。
「......最近は籠りきりだったからな、しばらく外に出て身体を動かせ」
「...わーったよ」
「未熟者め」
いつもなら言い返しているところだが、いろいろ考えて飲み込んだ。じじいもそれ以上は何も言わなかった。
こんなどうでもいい会話をブックマンの独自言語でやることはないはずなのだが、それもわかりづらい気遣いかもしれない。
と思ったが、食堂を出て歩きながら腹をつついて笑われたので、全てなかったことにした。
―――――――――――――――――――――――
一通りトレーニングを終えたあと、落ちた体力を実感しながら広いフロアを横切る。そこかしこで組手をするのを見ながら、今誰かとやったら負けるんじゃないかと不安が過ぎる。久しくみんなの顔を見ていないことを思い出し立ち寄ったが、引き返してシャワーを浴びることにした。脳内シミュレーションでもして、その時に備えよう。
「ラビ!」
ちょうどフロアを出たところで、呼び止められた。いちばん会いたかった、いや会いたくなかったかもしれない人物。
同じく汗をかいた***が立っていた。
「ラビがここに来るの久しぶりじゃない?やっと会えたー」
「お、おー...」
会ったら何と言おうかずっと考えていたのに、気の抜けた声しか出なかった。もう終わりなのかと聞かれたので頷くと、あたしも、と言って腕を絡めてきた。久しぶりの感触。腰に手を回すと***も胴体に抱きついてきてハッとする。
「***、オレ汗かいてるからあんまくっつくなって」
「暑くても寒くてもベタベタしてくる人に言われたくないですー...あ、あたしも汗かいてたごめん」
「いや、それはいい、けど...」
「...一緒に、シャワー、浴びない?」
「え?あー......う、ん」
久しぶりの可愛い恋人、腕に押し付けられる身体、上目遣い。運動後の昂ぶった気持ちも後押しして、断ることはできなかった。
というか、正直に言ってめちゃくちゃ***とセックスしたい自分に気付いた。
もうどうにでもなれ。
―――――――――――――――――――――――
着替えを持ってくる間に、先にバスルームに入ってもらった。***は長い髪を洗うのに時間がかかるから、オレが遅れて入るのが丁度いいのだ。
バスルームの扉の前までくると、微かに鼻歌が聞こえる。脱ぎながら声をかけると返事が返ってきて、扉を開けてくれた。湯気の中で少し照れたようにしている***は最高に可愛い。
***が髪の泡を流している間にオレはシャンプーを泡立てて、流し終わった頃にはもうオレの番。流した髪をかきあげるとじっと見られていて、照れ隠しのようにキスをした。
ふざけ合いながらお互いの背中を流して、バスタブに身体を沈める。自室に浴室があるというのは有り難いものだ。その点は、女性団員が羨ましい。
オレの脚の間にすっぽりと収まった***が、胸に顔を埋める。幸せそうな***にこっちまで頬が緩む。
「ふかふかー」
「よかったねー...って、え、ふかふか?」
「うん、ふかふかー」
***がオレの胸を手のひらで押して言う。そうか、オレの身体はふかふかなのか。
......落ち込む。
腕や背中にも手を回す***に、思い切って聞いてみた。
「あのさ***、オレ...太った...?」
「んー、ちょっとおっきくなったかな」
「あ、そう、よね」
「ラビは食べたらすぐついちゃうよねー」
「...待って***、オレの身体をそんな目で見てたの」
「そんな目ってどんな目?...でも、ちょっと身体動かしたらすぐ筋肉つくよね。いいなー」
「え、そう?」
「あたし食べても鍛えてもあんまり身体変わらないから、羨ましいなー」
「...確かに、まぁ」
腰に置いていた手を尻に回し、下からウエスト、胸へ滑らせる。教団に入る前よりはるかに健康的な生活をしているはずだが、普通の女の子より多少引き締まっているくらいなものだ。控え目な胸を両手でやんわり包み込むと、意図に気付いた***が頬を膨らませる。可愛い。
「ラビはあたしの身体をそんな目で見てたんだね」
「...恋人の身体をいやらしい目で見て何が悪いんさ」
「じゃああたしもいいでしょ」
「それとこれとは別さ」
「えー」
***がまたオレの胸に寄りかかる。腹をつつきながら、唐突に笑い出した。
「おいおい、どした」
「だって、気にしてたの?かわいー」
「だ、黙りなさい」
「普通は、女の子の方が太るの気にするんじゃない?」
「確かに」
「別に気にしないよ。...いや、Tシャツからお肉はみ出たりしたらさすがに、あれだけど」
「さすがにそこまで肥える才能はねーさ」
「そうだね、それも才能だね」
適当に言ったが納得されてしまったので、そういうことにしておく。
しばらく黙っていた***が、肩に手をかけて跨ってきた。首に抱きついてきたので抱きしめ返す。
「***?」
「...ちょっとなら、手伝ってあげてもいいよ、運動」
「いや、適当にメニュー組んでるししばらくはそれで...ん?あ、あー......」
まさか***の方からそんなことを言ってくるとは思っていなかったので、思考が追いつかなかった。湯船のせいではない頬の火照りが首筋から離れない。
「じゃあ今夜...、いや、今からお願いするさ」
「ん......」
「出よっか。ここじゃのぼせちゃうさ」
「ん」
なかなか積極的だったのに、今のが精一杯だったのかすっかり大人しくなってしまった。なんだか困ったような顔をしている。心配せんでも、ここからはお兄さんに任せなさい。という気持ちで頭を撫でる。
髪を梳きながら、長い長いキスをした。
(やっぱ、1回3セットくらい?)
(...無理です)