短編
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あなたに守られてるフリをして
オレは基本的に女の子に頼られたいし、尊敬されたい。だからビンのフタを開けてほしいとか、高いところの物を取ってほしいとか、そういう単純なことで甘えてくる***のことが可愛くて仕方がない。
ということを任務帰りの汽車の中でユウに滔々と説いたら、ずっと無視していた(聞いているとすら思っていなかった)くせに降りる直前にとんでもないことを言われた。
「あいつ、ビンのフタくらい自分で開けられるぞ」
...ユウは何を言っているのか。か弱い***がそんなことできるはずがない。しかし詳しく聞こうにもそれきりガン無視のユウには取りつく島もなく、オレは真相を確かめるために翌朝食堂へ急いだ。
―――――――――――――――――――――――
***が起きた頃を見計らって食堂に行くと、ちょうど席に着いたところだった。ナイスタイミング。***はいつもパンに塗るジャムのフタが開けられないので、オレに頼ってくるのだ。ほら、開いたよ♡ありがとう♡みたいな会話が、オレの1日の活力だ。
***がイチゴジャムに手を伸ばす。案の定手間取っているようで、ほらやっぱりユウの見間違いだったんじゃ...と思った瞬間、テーブルに置いてある布巾を滑り止めにして普通に開けた。なん...だと...目をこすってもう一度見るがやはり幻ではない。いやいや、いつも一緒にいられるわけではないし、自分で開ける日だってあるだろう。...と思いつつやっぱりちょっとショックなので、もう一眠りしてブランチにすることにして部屋へ戻った。昨日からの疲れだろうか、脚が重い。
―――――――――――――――――――――――
午後、重い脚を何とか動かして書庫室に向かった。本業に精を出す。いつもは下の階の大きなテーブルを占拠して記録に勤しむのだが、今日は入り口がよく見える二階のテーブルを陣取っている。もちろん、***をいち早く見つけるためだ。来るかはわからないが、アンテナは張っておきたい。
しばらく記録に没頭していると、目当ての黒髪が現れた。アレンと一緒らしい。何やら指差して二人が分かれた。次の任務地のことを調べるのかもしれない。***も方向感覚はあまりよろしくないほうなので、渡される資料だけでは心配だといつも言っている。アレンと一緒なら、いろいろと入念な下調べが必要だろう。
アレンはどうでもいいので、目は***を追いかける。目当ての本は、***の身長より少し高いところにあったらしい。目一杯手を伸ばしているが届かなさそうだ。そんな姿も可愛い。するとどこからか踏み台を持ってきて、難なく本を手に入れた。踏み台...だと...
驚いている間に二人が見えなくなった。階段の下から声がする。オレは階段沿いに置いてある本を探すフリをして、二人の会話が聞こえるところまで降りた。他愛もない会話をしながらページをめくる音が聞こえていたが、しばらくして静かになった。
「ねぇアレン、この単語どういう意味かわかる?」
「いえ...わかりません」
何がわからないのかわからないが、たぶんオレならすぐ教えてやれる。思わず降りて行きそうになったが、***が辞書を持ってきて即解決した。二人が納得した様子でまたページをめくる音が続く。***...辞書使えるんか...
ふいに、雷に打たれたような衝撃が走った。もしかして、***はオレなんかいなくても生きていけるのか。
オレが助けてあげないと死んでしまう生き物、くらいに思っていた***が...いや、今までオレのいない世界で生きていたのだから、当たり前か。...自分で思ったくせにヘコんだ。
そういえば、***はオレが帰ってきたというのにまだ会いに来てくれない。オレは静かに立ち上がり、二人に遭遇しないように気をつけて、しょぼくれながら反対側の階段を使って書庫室を後にした。
―――――――――――――――――――――――
「あれ...?」
「どうしたんですか?」
「ラビが見えたような...」
「ついに幻覚ですか?だめですよちゃんと休まなきゃ」
「そんなわけないでしょ。連絡くれないからまだ帰ってないと思ってたけど...あのさ」
「...いいですよ、コピーしときますから、行ってきてください」
「ほんと?ありがとう!」
―――――――――――――――――――――――
残った本を抱えて廊下を歩く。自室に戻るかとぼんやり考えていると、後ろから***の声が聞こえてきて本を落としそうになる。
「やっぱりラビだ!おかえり!」
「お、おぉ、たでーま...」
そのままオレの左腕に絡みつく***。ちょっと目が怒っている。
「もう、連絡ないからまだ帰ってないんだと思ってた!」
「あれ、オレ言ってなかった?」
「言ってないよ。いつ帰ってきたの?」
「マジかごめん...昨日の夜中」
いろいろテンパって忘れていたらしい。連絡寄越さなかったのはオレの方だった。オレってばなんてバカなんかな。***はオレの腕にぎゅうぎゅう抱きついてきて、それだけで幸せだ。
「ねぇ、おやつ食べに行こー」
「ん、行こ」
お茶をするにはいい時間だ。***と話したら急に腹が減ってきた。オレも結構単純だ。
―――――――――――――――――――――――
オレはサンドイッチ、***はホットケーキを前にして仲良く手を合わせる。***がはちみつのビンに手を伸ばした。頑張って開けようとしているのが可愛い。別に***がオレを頼らなくたって、どうってことはない。オレは***と一緒にいられればそれでいいのだ。
サンドイッチを咀嚼しながらコーヒーの湯気を見つめていると、目の前にビンが差し出された。
「ねーラビ、開けて?」
ちょっと首をかしげて、両手でビンを差し出す***。可愛さに見とれながら開けたビンを差し出すと、***はもっと可愛い顔をして笑った。
「わーいありがとー!」
その瞬間わかった。***は、オレにわざわざ甘えているのだ。ちょっと頑張ればできることを。普通に考えればあざといしぶりっ子なんだが、オレにしか向けられていないのだから百倍、いや千倍可愛い。むしろあざといくらいのほうが、何の努力もしていないくせにありのままの私を好きになって、とか言っているやつより一億倍好きだ。オレの前だけで可愛い***が可愛い。超絶可愛い。
ものすごく感動していると、***と目が合って首をかしげられた。可愛いが飽和状態だ。
「ねぇ***、オレも甘いもの、食べたくなっちゃった。...付き合ってくんない?」
「んー......いいよ?」
指についたはちみつを舐めとる***を見て、オレはこの可愛さに殺されたいと思うのだった。
(ねーラビ、あの本取って?)
(どれ?!もう全部取ってあげちゃうさ!!)
(いや、そんなにいらないよ)
オレは基本的に女の子に頼られたいし、尊敬されたい。だからビンのフタを開けてほしいとか、高いところの物を取ってほしいとか、そういう単純なことで甘えてくる***のことが可愛くて仕方がない。
ということを任務帰りの汽車の中でユウに滔々と説いたら、ずっと無視していた(聞いているとすら思っていなかった)くせに降りる直前にとんでもないことを言われた。
「あいつ、ビンのフタくらい自分で開けられるぞ」
...ユウは何を言っているのか。か弱い***がそんなことできるはずがない。しかし詳しく聞こうにもそれきりガン無視のユウには取りつく島もなく、オレは真相を確かめるために翌朝食堂へ急いだ。
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***が起きた頃を見計らって食堂に行くと、ちょうど席に着いたところだった。ナイスタイミング。***はいつもパンに塗るジャムのフタが開けられないので、オレに頼ってくるのだ。ほら、開いたよ♡ありがとう♡みたいな会話が、オレの1日の活力だ。
***がイチゴジャムに手を伸ばす。案の定手間取っているようで、ほらやっぱりユウの見間違いだったんじゃ...と思った瞬間、テーブルに置いてある布巾を滑り止めにして普通に開けた。なん...だと...目をこすってもう一度見るがやはり幻ではない。いやいや、いつも一緒にいられるわけではないし、自分で開ける日だってあるだろう。...と思いつつやっぱりちょっとショックなので、もう一眠りしてブランチにすることにして部屋へ戻った。昨日からの疲れだろうか、脚が重い。
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午後、重い脚を何とか動かして書庫室に向かった。本業に精を出す。いつもは下の階の大きなテーブルを占拠して記録に勤しむのだが、今日は入り口がよく見える二階のテーブルを陣取っている。もちろん、***をいち早く見つけるためだ。来るかはわからないが、アンテナは張っておきたい。
しばらく記録に没頭していると、目当ての黒髪が現れた。アレンと一緒らしい。何やら指差して二人が分かれた。次の任務地のことを調べるのかもしれない。***も方向感覚はあまりよろしくないほうなので、渡される資料だけでは心配だといつも言っている。アレンと一緒なら、いろいろと入念な下調べが必要だろう。
アレンはどうでもいいので、目は***を追いかける。目当ての本は、***の身長より少し高いところにあったらしい。目一杯手を伸ばしているが届かなさそうだ。そんな姿も可愛い。するとどこからか踏み台を持ってきて、難なく本を手に入れた。踏み台...だと...
驚いている間に二人が見えなくなった。階段の下から声がする。オレは階段沿いに置いてある本を探すフリをして、二人の会話が聞こえるところまで降りた。他愛もない会話をしながらページをめくる音が聞こえていたが、しばらくして静かになった。
「ねぇアレン、この単語どういう意味かわかる?」
「いえ...わかりません」
何がわからないのかわからないが、たぶんオレならすぐ教えてやれる。思わず降りて行きそうになったが、***が辞書を持ってきて即解決した。二人が納得した様子でまたページをめくる音が続く。***...辞書使えるんか...
ふいに、雷に打たれたような衝撃が走った。もしかして、***はオレなんかいなくても生きていけるのか。
オレが助けてあげないと死んでしまう生き物、くらいに思っていた***が...いや、今までオレのいない世界で生きていたのだから、当たり前か。...自分で思ったくせにヘコんだ。
そういえば、***はオレが帰ってきたというのにまだ会いに来てくれない。オレは静かに立ち上がり、二人に遭遇しないように気をつけて、しょぼくれながら反対側の階段を使って書庫室を後にした。
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「あれ...?」
「どうしたんですか?」
「ラビが見えたような...」
「ついに幻覚ですか?だめですよちゃんと休まなきゃ」
「そんなわけないでしょ。連絡くれないからまだ帰ってないと思ってたけど...あのさ」
「...いいですよ、コピーしときますから、行ってきてください」
「ほんと?ありがとう!」
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残った本を抱えて廊下を歩く。自室に戻るかとぼんやり考えていると、後ろから***の声が聞こえてきて本を落としそうになる。
「やっぱりラビだ!おかえり!」
「お、おぉ、たでーま...」
そのままオレの左腕に絡みつく***。ちょっと目が怒っている。
「もう、連絡ないからまだ帰ってないんだと思ってた!」
「あれ、オレ言ってなかった?」
「言ってないよ。いつ帰ってきたの?」
「マジかごめん...昨日の夜中」
いろいろテンパって忘れていたらしい。連絡寄越さなかったのはオレの方だった。オレってばなんてバカなんかな。***はオレの腕にぎゅうぎゅう抱きついてきて、それだけで幸せだ。
「ねぇ、おやつ食べに行こー」
「ん、行こ」
お茶をするにはいい時間だ。***と話したら急に腹が減ってきた。オレも結構単純だ。
―――――――――――――――――――――――
オレはサンドイッチ、***はホットケーキを前にして仲良く手を合わせる。***がはちみつのビンに手を伸ばした。頑張って開けようとしているのが可愛い。別に***がオレを頼らなくたって、どうってことはない。オレは***と一緒にいられればそれでいいのだ。
サンドイッチを咀嚼しながらコーヒーの湯気を見つめていると、目の前にビンが差し出された。
「ねーラビ、開けて?」
ちょっと首をかしげて、両手でビンを差し出す***。可愛さに見とれながら開けたビンを差し出すと、***はもっと可愛い顔をして笑った。
「わーいありがとー!」
その瞬間わかった。***は、オレにわざわざ甘えているのだ。ちょっと頑張ればできることを。普通に考えればあざといしぶりっ子なんだが、オレにしか向けられていないのだから百倍、いや千倍可愛い。むしろあざといくらいのほうが、何の努力もしていないくせにありのままの私を好きになって、とか言っているやつより一億倍好きだ。オレの前だけで可愛い***が可愛い。超絶可愛い。
ものすごく感動していると、***と目が合って首をかしげられた。可愛いが飽和状態だ。
「ねぇ***、オレも甘いもの、食べたくなっちゃった。...付き合ってくんない?」
「んー......いいよ?」
指についたはちみつを舐めとる***を見て、オレはこの可愛さに殺されたいと思うのだった。
(ねーラビ、あの本取って?)
(どれ?!もう全部取ってあげちゃうさ!!)
(いや、そんなにいらないよ)