短編
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Happy April Fool's Day
「ラビ、お土産!」
***が笑顔で箱を差し出してくる。任務から帰ったばかりの彼女は、まだ荷解きもしていない。まぁ、またすぐに発つことになるのだろうけど。礼を言いながら箱を受け取ると、やけに軽い。心の準備をして箱に手をかける。
「何が入ってんのかなー...ってうわあぁっ!!」
中から出てきたのは、子ども騙しみたいなバネつき人形。内心やっぱり、と思ってしまった自分がいる。驚いた顔のまま***を見ると、目を細めてオレをじっとみていた。
「...迫真の演技どうも」
「...え」
「箱もらった瞬間になんかくるなって思ったでしょ、今日エイプリルフールだし」
「...はは、せいかーい」
驚いたフリは通用しなかったようだ。オレがさっきまで読んでいた新聞の一面には、嘘か本当か微妙なラインの、面白おかしい記事がでかでかと出ている。かく言うオレも、朝イチでユウやクロウリーにイタズラを仕掛けてきた身だ。これくらいの仕掛け、簡単には騙されない。
「つまんないのー。はい、こっちが本物のお土産。このチョコ美味しいんだー」
「お、サンキュー」
今度はしっかりと重さのある箱だった。警戒心を完全に解く。開けると、いくつか形の異なるチョコレートが入っている。ひとつ取り上げて口に放り込んだ。
「お、うめーさ!」
「よかったー」
にこりと笑った***に、急に影がさした。黙ってうつむいている。
「***どした?チョコ食べる?」
「......ラビ、実は、言わないといけないことが、あって」
「なんさ改まって」
「実は...他に好きな人、できたの......」
「......は」
オレの喉の音が思いの外大きく響く。ほろ苦さだけが、ほんの少し喉の奥に残った気がした。
「任務先で親切にしてくれてさ、何度か会ってて...昨日はゴーレム繋がらなくて、ごめんね」
「***...」
そういえば、昨日は何度呼びかけても***は応えてくれなかった。その前の日はいつもより話す時間が短かった。その前は。
思い出せば思い出すほど引っかかることに行き着いて、自分の記憶力が憎い。もしかして昨日、***はそいつと。嫌な想像してしまう。
「これ、その人の写真」
***が差し出したものを引ったくるように受け取る。そこには見慣れた赤毛が写っていた。
「......え?」
「ぷっ......あははは!ラビすごい顔してる!」
***が差し出したのは、書庫にいるオレの写真だった。撮られた覚えはないが、こちらを見て笑っている。周りに積まれたものから察するに、1ヶ月くらい前のものだ。隣で笑い転げる***の腕を掴む。
「ちょっとちょっと***ちゃん、どういうことさ?!」
「それ、ティムが記録したやつを紙に焼いてもらったの。無防備っぽくていい写真でしょー」
「あーそういえばティムが珍しく一人でいたことあったな...いや、それはたいしたことじゃねぇさ!昨日は?何で繋がんなかったんさ?」
「天気が悪くてね、電波が繋がんなくて」
「あ、そう......」
さっきした嫌な想像がただの邪推だったと知って安心すると同時に、まんまと騙されてしまった自分に驚く。もしかして、最初の箱のくだりから計算されていたのだろうか。たぶんそうだ。憎らしい顔で舌を出して転がっている、びっくり箱の人形を恨めしく見つめる。***に向き直ると、それはもう眩しいほどの笑顔で笑っていた。
「あたしの好きな人、かっこいいでしょ?」
こんな可愛いことを言ってくれるなら、騙されてみてもいいかもしれない。
(この写真すごくいいよねー。やっぱりラビはかっこいいなー)
(そ、そんなん言われると照れるさ...それ嘘じゃないよね?)
「ラビ、お土産!」
***が笑顔で箱を差し出してくる。任務から帰ったばかりの彼女は、まだ荷解きもしていない。まぁ、またすぐに発つことになるのだろうけど。礼を言いながら箱を受け取ると、やけに軽い。心の準備をして箱に手をかける。
「何が入ってんのかなー...ってうわあぁっ!!」
中から出てきたのは、子ども騙しみたいなバネつき人形。内心やっぱり、と思ってしまった自分がいる。驚いた顔のまま***を見ると、目を細めてオレをじっとみていた。
「...迫真の演技どうも」
「...え」
「箱もらった瞬間になんかくるなって思ったでしょ、今日エイプリルフールだし」
「...はは、せいかーい」
驚いたフリは通用しなかったようだ。オレがさっきまで読んでいた新聞の一面には、嘘か本当か微妙なラインの、面白おかしい記事がでかでかと出ている。かく言うオレも、朝イチでユウやクロウリーにイタズラを仕掛けてきた身だ。これくらいの仕掛け、簡単には騙されない。
「つまんないのー。はい、こっちが本物のお土産。このチョコ美味しいんだー」
「お、サンキュー」
今度はしっかりと重さのある箱だった。警戒心を完全に解く。開けると、いくつか形の異なるチョコレートが入っている。ひとつ取り上げて口に放り込んだ。
「お、うめーさ!」
「よかったー」
にこりと笑った***に、急に影がさした。黙ってうつむいている。
「***どした?チョコ食べる?」
「......ラビ、実は、言わないといけないことが、あって」
「なんさ改まって」
「実は...他に好きな人、できたの......」
「......は」
オレの喉の音が思いの外大きく響く。ほろ苦さだけが、ほんの少し喉の奥に残った気がした。
「任務先で親切にしてくれてさ、何度か会ってて...昨日はゴーレム繋がらなくて、ごめんね」
「***...」
そういえば、昨日は何度呼びかけても***は応えてくれなかった。その前の日はいつもより話す時間が短かった。その前は。
思い出せば思い出すほど引っかかることに行き着いて、自分の記憶力が憎い。もしかして昨日、***はそいつと。嫌な想像してしまう。
「これ、その人の写真」
***が差し出したものを引ったくるように受け取る。そこには見慣れた赤毛が写っていた。
「......え?」
「ぷっ......あははは!ラビすごい顔してる!」
***が差し出したのは、書庫にいるオレの写真だった。撮られた覚えはないが、こちらを見て笑っている。周りに積まれたものから察するに、1ヶ月くらい前のものだ。隣で笑い転げる***の腕を掴む。
「ちょっとちょっと***ちゃん、どういうことさ?!」
「それ、ティムが記録したやつを紙に焼いてもらったの。無防備っぽくていい写真でしょー」
「あーそういえばティムが珍しく一人でいたことあったな...いや、それはたいしたことじゃねぇさ!昨日は?何で繋がんなかったんさ?」
「天気が悪くてね、電波が繋がんなくて」
「あ、そう......」
さっきした嫌な想像がただの邪推だったと知って安心すると同時に、まんまと騙されてしまった自分に驚く。もしかして、最初の箱のくだりから計算されていたのだろうか。たぶんそうだ。憎らしい顔で舌を出して転がっている、びっくり箱の人形を恨めしく見つめる。***に向き直ると、それはもう眩しいほどの笑顔で笑っていた。
「あたしの好きな人、かっこいいでしょ?」
こんな可愛いことを言ってくれるなら、騙されてみてもいいかもしれない。
(この写真すごくいいよねー。やっぱりラビはかっこいいなー)
(そ、そんなん言われると照れるさ...それ嘘じゃないよね?)