狐神と、


 ざっざっざ、と竹箒を動かせば、ざっざっざ、と、黄色や茜色に染まった落ち葉で小山が出来る。まだ少し木にしがみついていそうだったのに、昨晩の嵐で落とされてしまったらしい。ざっざと葉を積み重ね、大きくなる小山の周囲で、茶色と白色のまだらな毛を持つ狐神がぴょこぴょこと跳ねる。少し前までは、茶色の毛だけだった。今は痩せて見えるその身体も、これから先の白く冷える季節に向けて、もこもこと丸くなっていくだろう。

「葉っぱで芋を焼くと美味しいと、隣の町に住む神(せんぱい)が言っておったぞ!」

「はいはい」

「芋はどの芋が良いのだろう⁉ さつまいもか? さといもか? じゃがいもはバターと塩をふりかけるのが好きだなあ! どうせなら、栗や魚も焼いてみないか⁉」

「お供えには何の作物があったかなあ!」と、狐神はぴょこぴょこと跳ねて、倉へと向かった。
 竹箒を持つ者は、その小さくもふもふとした背中を見送りながら、短く息を吐き出した。
 その食い意地も、この季節ならではだろうか。
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