「また失敗しちゃっ……た……？」

オペラ座の怪人『エリックを幸せにし隊』のお色気担当の美咲は、キッチンでため息をついた。彼女が持っているものは、とても料理と呼べるものではなく、むしろ試作品の慣れの果てと言っても過言ではない。


ゴミ箱に失敗作を入れること数回、自分の料理の腕のなさに嫌になってしまうと、美咲はべそをかいた。

「料理が上手くなりた～い！」
「あら、泣いている姿もなかなか……」
「――はっ！　その声はアイシャお姉さま！」

美咲は後ろを振り返ると、ボン・キュッ・ボンの美女が立っていた。首には豪華な宝石が煌めいているのだが、その美貌と美しさは宝石以上。

「は～い♪　美咲。今日もまた可愛いわね！」

美咲をトリップで各世界に連れてきている、エリックの飼い猫のアイシャ（人間モード）は、ウィンクしながら言った。


「アイシャお姉さま！　私、どうしても料理が上手くなりたいんです～！」

ひーんと泣きながら、美咲はアイシャにくっつくいた。
昔は「おいちぃ♪」って言ってくれたのに……。


――あれ、自分の妄想？　
エリック、一度も「おいちぃ♪」って言ってない！？


「エリックに美味しいって言わせたいよ～！　どうしたら良いかなぁ～！」
「美咲のお友達で、料理が上手な子がいるじゃない」
「でも、住んでいる世界が違うんじゃ……」
「私を誰だと思っているの？」

にっこりと笑ってアイシャは言った。


ご主人様の為に腕を上げたい気持ち！　ああ！　純粋で可愛いわ！　むしろ、私がひと肌だろうが猫肌だろうが脱がないでどうするの！　
……という変に屈折した気持ちは、笑顔の裏に隠されていることを、美咲は知らない。