小悪魔テクニック(Gift)
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私は、小悪魔になる!
小悪魔テクニック
もう一度言おう、私は小悪魔になってエリックを誘惑する!
…落ち着こう。なぜそんな事を考え付いたのか。まずはそこからだ
なんて事はない。エリックがミューズに微笑まれて芸術という海に身を投じただけ
そう、一ヶ月前から
そろそろ女神とやらから現に戻っていただきたい
何かの映画でピアノに乗って演奏に夢中だった男の気を惹いた女がいたが
私には魅力が足りないし、何より彼の愛器を汚す気がするのでいやだ
にわか小悪魔な私は、はじめから躓いているのだ
だが今日中には現に戻っていただかないと
アイシャだって拗ねてお散歩から帰ってこないし
……私だって寂しいのだ
いまだオルガンに釘付けのエリックの背中を見てため息ひとつ。
決行は今日。私だってイメージがないわけではない。無策で飛び込むなど愚の骨頂だ。
イメージは不本意ながら懐かしき悪友。参考資料は昔無理やり見せられた雑誌の特集から
確か小悪魔テクニックとか悪女の秘密などを見るともなく見ていた記憶だけ。
…む、無策でなどないぞ…たぶん
まずは、自分の飲み物を「飲む?」と聞く。
…日常茶飯事なんだが…どの辺が小悪魔テクニックなんだ?
唐突の「あーん」
「あーん」はした事があるが、“唐突”の「あーん」はクルものがあるのだろうか?
後は確か「人の集まる所にいて」「常に笑顔」で「みんなの目を奪う事」
…皆?無理だ、ここに私の友達はいないし(そもそもマダムを一方的に見ているだけだ)
いつもと違った香水を!
…前に香水を買った時ふたつ買ったな片方のを普段用にしていたから
愛用したのをやめてもう片方をつければいいのだろうか?…だがもうひとつは…
アップヘアーに、プルプルのくちびる
…くちびるはあれから荒れた事がないからOKとして
アップヘヤーか…。ダサい方のお団子とかポニーテールなら出来るが…元来私は器用ではない。
仕方が無い、こっちの新聞で得た知識を使ってアップにしてみよう
あえて会えない時間を作る
…これ、エリックの得意技じゃあ…エリック、小悪魔だったの?…だめだ笑える
思いついた順にチェックしていったら
「香水」「アップヘアー」「唐突の、あーん」「プルプルのくちびる」これだけが残った
ほとんどが部屋で用意するものだ
頭を切り替えて、まずは入浴して香水の匂いを取らなければ次が使えないな
私が部屋へのドアを閉めた直後にエリックがこちらに戻ってきたと事を
小悪魔になるとしか頭になかった私にはあずかり知らぬ事だった
お風呂で2時間。髪がさらさらになると購入しただけで使ってない物を発見
少しだけ多めにつけてタオルで巻いて浸透させる
念のために今日使う香水をお風呂に2・3滴入れておいた。馴染み易くなってくれるといいが…
逆上せないうちにお風呂から上がり
なぜか前の知識とモード誌を組み合わせてみたら、夜会巻きもどきになってしまった
が、これ以上いじりようがないと、ため息ひとつで諦めて
飾り物の棚を開ける。そこからパールの髪飾りとイヤリングを出してつければ
うん、何とかなったかな?
ワンピースは撫子色を。私が着るには可愛らしい色だがエリックが好みそうだ
後は香水を吹きかけて。よし、いざ参る!!
意気揚々とドアを開ければ
少し驚いた顔をする紳士を発見。
あれ?
「エリック、いつこっちに戻ってきたの?」
「随分な言い草だね、オルガンの前にずっと居たじゃないか」
「身体はね。心が女神の泉へとダイブしたままじゃいた事にならないのよ?」
「痛い所を突くな」
「たまにはね」
軽口を叩きながらエリックが私の隣に来る
柔らかなぬくもりを、エリックから頬へ
「あえてスキンシップはしない」そんな一説があったがそれは今したらエリックが可愛そうだし
…私だってしたいのだ
エリックに少しかがんでもらって私も頬にキス
でも予定には忠実に。
さっとエリックの手を交わして駆ける様にキッチンに向かいながらエリックに釘を刺す
「疲れているでしょう?食堂で待っていて?今日は一日男子厨房入るべからずなの」
エリックの追求が出る前にキッチンへ飛び込む。
とりあえず下味をつけた魚のパイ包みにちょっと手を加えてオーブンへ
この日で指定購入したエリックの好きなパン屋さんバケットがまだほんのりと暖かい
かぼちゃの冷製スープはちゃんと冷えていたし。なかなかな出来だった
サラダは昨日作ったから問題はないだろう
プリンも昨日から氷室に入れてある。
食前酒などはエリックに聞いたほうが良さそう
「えり……なんでこんなところにいるの?」
「居てはいけないかい?つれない恋人を追って、多分作られている食事を運ぼうと待機して居たんだよ」
「はいはい、邪険に扱ったわけではないのよ?ただお腹が空いてるだろうと思っただけで」
「分かっているよ。これは私が持って行こう…おや?私の好物ばかりじゃないか。何かあったかい?」
「んー?ああ、今日こそこちらに戻ってもらうつもりだったから…うーん…迷惑料?」
「迷惑料?私は美咲が居て迷惑だと思った事はないが…」
私の持っていたトレイをひょいっと持ち上げてけろりとしているエリック
…私が持っていたときは最高に重かったのに…男女の差か…
腕は私の方が太いと思うんだけどなぁ…自虐はやめよう。
後で持っていく予定だったティータイムの用意を持てば非難を示す瞳
多分、私が荷物を持つのが気に入らないのだ。
気づかない振りをしてエリックの横に並ぶ
「だって芸術が生まれる邪魔をしているわけだから、迷惑でしょう?
エリックだって寝食忘れて1ヶ月だし」
「返す言葉もないが、差し入れのサンドウィッチは、いつも助かっていたよ。
それを目安に時間が分かったし、何より心遣いが愛おしかった」
「はいはい、無意識に口説かない。私これ以上エリックにめろめろになっちゃうでしょ」
「こんな言葉でいいのならもっと虜になって欲しいんだが」
「それは無理な相談ね。とっくに限界値を越えてるもの」
「それは私もだよ。あまり可愛い事をしないでおくれ。お前の自由を奪ってしまいそうになる」
「まあ、それは怖いわ」
くつくつとエリックが笑うから、久しぶりに隣にエリックを感じて嬉しくなる
そのまま軽口を言い合いながら食堂に入り準備を整える
食前酒は、私を思ってか甘口の白だった。花の香りがふんわりしていて美味しい
美味しいとやや微笑みながら食事を続けるエリックに
自分でも唐突だなと思いつつパイに包まれた魚をフォークに乗せ、エリックの口元へ
「はい、エリック、あーん」
「おや、食べさせてくれるのかい?……ほら、今度は美咲の番だよ、口を開けてごらん?」
「……」
エリックは差し出したフォークを優雅に口の中に入れ、パイ包みをこちらに差し向ける。
めったにない笑顔まで添えて
…私より、小悪魔っぽいのがなんだか敗北感でいっぱいなんだが…
いや、ここでへこたれるわけにはいかない!
決意新たに挑んだが、その度にお返しがあり
なんだかただのバカップルのように食べさせあいっこで夕食を終えた
……なぜだ
敗北感満載で、迎え撃つは食後の軽いティータイム
エリックはいつものようにひとり掛けではなく二人掛けのソファーに座り込んだ
そしてその真ん中で私に手を差し伸べる
「おいで、美咲」
「…うん」
またまた敗北感。
私のほうから膝に乗ってしまおうとしていたのに、誘われてしまった
ふーむ、どこからか作戦が見破られているのか?
いや、それはない。
まあ、渡りに船と導かれるまま、エリックの膝の上に座を落ち着ける
「浮かない顔だね。どうかしたかい?」
私のくちびるに、果物の砂糖漬けを押し付けながらエリックは首を傾げる
それをおとなしく食べ、エリックに問う
「エリック、眠くないの?」
「いや?何故だい?」
「あのさ、人間の三大欲求って知ってる?」
「?食欲・睡眠欲・性欲だろう?それがどうしたというんだい?」
「食事をしたでしょう?そうしたら次は眠くなるものじゃないの?」
「いや?特に眠気はないよ。…ところで何時もとは違って髪を上げているね、外出する心算かい?」
「ううん。意地でもエリックをこっちに戻すつもりだったから気合を入れたの」
「気合、ね…。ではこの香水もそうなのかな?
使う時は私を誘惑する時に、と私と交わした約束は覚えているかい?」
忘れるわけがない。この香水はイランイランとジャスミンがベースなのだから
話しながら、夕食さながらお菓子の食べさせあいをしていたので
お菓子もお茶も、何も残っていない
「ところで美咲、実は私はお前の髪に触れるのが大好きでね
面倒だとは思うだろうが、下ろしてしまっては駄目かい?」
「エリックが気に入るようにお洒落をしたんだから、エリックの好みにしていいよ?」
「ありがとう」
額に口付けられて、そっと飾りが解かれて髪がおちる
エリックは楽しげに、解かれてうねった髪を梳いて直してくれている
ゆっくり優しく梳かれて、気持ちがいい
このままでは、私が先に寝てしまいそうだ
それはいけない
「三大欲求に話を戻すけど、お腹が満たされたら眠くなる筈だわ。
だってここ一ヶ月ろくに寝ていないんだから」
「まあ、確かに全然眠気を感じないかと問われると困るのだが…」
「でしょう?ベッドへ行かない?私もまだちょっと早いけど一緒に寝るから」
「おや、誘惑でもしてくれるのかい?」
エリックは済んだ食器をトレイに乗せて、私をからかうようにくつりと笑った
…片づけを明日に回すつもりだな…
「人間の三大欲求で一番最下位なのは性欲よ。睡眠欲の方が上なの。
一ヶ月ろくに寝てないのなら一緒に寝ましょう?」
「眠くはないのだが?」
トレイに食器を片付けたら、エリックは私の髪に顔を埋め首筋に痣を残した
…私だって一ヶ月我慢していたわけで声を抑えるのに苦労したが、ここは譲れない
今日は小悪魔な私なのだ。エリックの首に手を回して耳元で囁く
「ベッドまで、連れて行ってくれるでしょう?」
「…はあ、ここまで言われて誘惑ではないと言う。まるで拷問だよ?」
「ふたりで起きたらあなたの望む通りにしていいわ?」
私の言葉に、私を抱えて歩き出していたエリックが足を止めた
「ふたりで起きたら、お前の望まない朝からの行為になるのは分かっているのかい?」
「ええ。一ヶ月もそのままだったのよ?欲しているのが自分だけだと思わないで頂戴」
「…では、おとなしく従おう。抱いて眠るのは許されるのかな?ドアを開けてもいいかい?
頷いたら、翌朝から求めてしまうよ?」
「どうぞ?開けて?ここはあなたの寝室でもあるんだから」
そっとベッドへ下ろされワンピースに手がかかった
「ちょ、待って、それは明日のはずよ?」
「ワンピースで寝れば皺になってしまう。どうせ朝脱ぐのだから直接体温を感じたいね」
「……エリックも、脱ぐって事?仮面も鬘も?」
「仮面…どうしても、かい?」
「だって窮屈そうなんだもの。ゆっくりくつろげば?
それに私は…こうしてエリックの胸に頬を寄せて眠るから見えないわよ?」
「行為の時にも外せと言うね。今の会話では取らざるをえないね」
「ふふ、抱き締めて眠ってくれるでしょう?」
「お前が望まなくても、抱き締めて眠る心算だよ?せっかく素肌になったのだからね」
ゆっくりと腰に回された腕、もう片方は私の髪をやさしく梳いていく
「ダメ、それ眠くなっちゃう…」
「寝るのだろう?ならそれでいいじゃないか」
「エリックの寝顔、見たいのに…」
「いずれ見るようになるよ。今はお休み」
優しい声に促されゆっくりと意識は落ちていった
因みに、一ヶ月禁欲生活をしたエリックのすごさに
今度からは2週間で起こそうと心に決めた
お礼の言葉→