夏の暑い休日。
原作エリックと美咲は二人で現代の街中にいた。

「ここが･･･美咲がいた未来の日本か」
「はい！」

美咲は背の高いエリックの顔を見上げた。

彼の顔にいつもの白い仮面はない。
今日はアイシャ姉さまの魔法で、鼻のある“普通の顔”にしてもらっているからだ。

キリッとした眉に黄金色の目は厳格で強く自信が溢れており、鼻筋も通った薄い唇はどこをどう見ても普通の顔だった。

美咲から見ても、渋くてカッコいい背の高い外国人のおじさんだった。

隣で歩いていると、チラチラと通りすがりの人も自分達に視線が向いているのがわかる。

恐らくみんな、自分じゃなくて背も高くて渋くてカッコいいエリックさんの方を見ているのだろう。

エロックさんと一緒に現代でデートした時も、周りの女性がエロックさんの事をチラチラ見ていたのだから―。

やっぱり外国のオペラ座の怪人のみんなって、日本人から見ればすごくカッコいいんだなぁ。

わたしはそんなカッコいいエリックさんの隣にいても失礼のないように、ちゃんとした振る舞いをしなくっちゃ。


「どこか行きたい所とかはありませんか？」
「いや･･･寧ろどういうものがあるのか見当がつかないから、キミの行きたい場所やよく行く場所でも構わないよ」
「うーん･･･そうですねぇ。あ、じゃあ最初に本屋さんに行ってもいいですか？」
「ああ」

全身黒のシャツにスーツを着たエリックと水色の白の裾が長めのプリーツワンピースを着た美咲は、並んで歩み始めた。