23話 迷い
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「それで、例の男の話は?」
「はい。奇術師の男の存在は確認できました」
商人の話から、奇術師の男の話を白状させた。
噂の通り、不思議な手品を使い神の歌声で人々を魅了させる男がロシアに実在しているという事がわかった―。
「―して、噂で聞いたのだが”青き美しき鳥”という女を聞いたことがあるか?」
「それは…確かに噂では。しかし商人よれば、その女は随分昔の記憶で幼き頃の奇術師と共にいたという話であって、今はその奇術師は一人のみでございます」
「容姿も美しく、その口から奏でる歌は未だ聞いたことない変わった曲調、そして聞いたものの心を揺さぶる歌詞に皆聞き惚れるという―そうだな」
シャーの目の奥が一瞬光ったように思えた。
こういう時のシャーを知っているだけに、自分でも嫌な予感がした。
「ならば余も、その”青き美しき鳥”と呼ばれた女とやらを見てみたいものだ。ダロガ、もし見つけたらその者も男と共にここに連れてこい。
もし連れて来られなかったとしても、その奇術師の男を連れて来てから真実を聞けばよい。わかったな?太后と余の御旨だ」
それを聞いた瞬間、落胆と絶望が己を襲った。
まさかこうなるとは、自分でも思ってみなかった。
奇術師の男ならともかく、噂でしか聞いたことが無い女を探すことなど、見つかるかどうかもわからないのだから。
女と聞いてシャーはきっと興味を持つだろうと思った内部のどこぞの奴らが、きっと噂を広めたに違いない。
ああ、本当に面倒な仕事を押し付けられたものだ。
病気の容体があまり良いとは言えない息子のレイザーがいてできる限り傍にいてやりたいと思っていた先に、この有様だ。
今回の任務ばかりは、噂の男(そして女)を見つける限りいつ帰って来られるのかわからないため、レイザーに上手い言い訳ができそうにない。
私はやり場の無いその憤りに、内心その奇術師―「エリック」とその「青い鳥の女」に毒づいた―。