ルチアーナと仲直りをしたあの日から、美咲は行動にでた。


早朝―。
美咲は遠くの方から、緊張しながら居間にぽつんと立っているルチアーナの様子を伺っていた。

「（ルチアーナ、大丈夫かな？）」



今日の最初の目標は、『自然な挨拶』。
果たして、ルチアーナはちゃんとエリックに普通の挨拶ができるだろうか。

地下室のドアが静かに開く音がした―。
よし、エリックが来る！
ルチアーナ、頑張って！！

意を決して、ルチアーナは口を開いた。

「お、おはよう！エリック」
「…！！」

ルチアーナは両手を握りしめて、緊張して若干声が上ずっていた。
しかし、エリックにとっては、ルチアーナがこんな朝早くから起きていることを珍しく思ったのか、目を見開いていた。

さぁ、どうくるエリック！？

固まっていたのも一瞬のことで、エリックは彼女に決まりきった挨で応えた。

「…おはようございます、お嬢様」

それからは二人の間に変な間が開いたが、その後、エリックから先に「失礼致します」と言って、そそくさとその場を去って行った。


ほどなく、ルチアーナが興奮した様子で、私の所へやって来た。

「ねえっ、あれでよかったのかしら？　あの人、やっぱり私には挨拶だけして行っちゃったけれど」
「最初はそういうものじゃない？　エリックだって、あまりおしゃべりな性格じゃないし」
「そうかしら？　何だか、不安だわ」
「大丈夫！この調子で、少しずつルチアーナも頑張ってみようよ」
「…はぁい」

それから―…ルチアーナとわたしのタッグ戦が始まった。