「美咲！」

彼女の名前を読んだ刹那、彼女は青い鳥と一緒に光を発して消えてしまった。

美咲がいない！
どこにいったんだ！？

さっきまで彼女が居た場所を、呆然として見ていた。
しかし、いるのは僕とジプシーから盗んだ馬１頭だけ―…。
夜の静かなオペラ座前で、少し風が吹いている。
それだけでも、１人の僕に余計寂しさを感じさせた。

その後、オペラ座の手前で１人残された僕は、少しの期待を持って他の場所も探してみた。
これは唯の美咲が冗談でやった手品なんだ。
またかくれんぼとか何かの遊びに違いない。
そう思ったけれど、どこを探しても、彼女は見つからなかった―…。

オペラ座の裏の暗い馬小屋に、連れて来た馬と身を隠した。
美咲はどこに行ったんだ？

まさか―…
…もう、美咲は元の時代に帰ってしまった？
もしそうだとしたら―…
こんな形で、美咲と別れてしまうなんて…。

どうしてだよ―…。
ついさっき、彼女を守るって自分で誓っておきながら…美咲がいないだなんて！
余りにも滑稽な自分に、自嘲せざるを得ない。

また僕は、美咲と出会う前と同じ、独りぼっちになってしまった。

美咲…
美咲…

この１ヶ月間で、僕の心は美咲でいっぱいだった。
それだけ、彼女のことが大切な存在になっていたのだ…。
折角、無事にジプシーから逃げ出してきたのに…。

たった一晩だけで色々な事が起こりすぎて、その時の僕はもう、心身共に疲れ果てていた…。
段々、眠気が襲ってくる。
ジプシーから逃げて来た僕に、帰る場所は無い。まだ自分の居場所も決まっていない。
少し休んだら、見つからないようにまたどこかに身を隠せばいい。
それまで、少し眠っていよう。

…そうして、僕は瞳を閉じた