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更新履歴

更新履歴一覧

  • 20210918(土)12:17

    「あ」



     机の端に置いていた消しゴムが、手に当たってころんと落ちる。それと同時に、気分が少し下がっていくのを感覚で悟った。

     どうして机の端になんか置いたのだろう。数秒前の自分の気が知れない。

     もし、数秒前からやり直せるのなら、真ん中に置くとは言わず筆箱の中にしまっておきたい。ドラ〇もんでも呼ぶか。いないなら作るか。



     ため息を吐く。こんなことを考える暇があるのなら、さっさと拾うのが賢明だろう。どんなに頑張っても数秒前に戻ることは出来ないし、ドラ〇もんもいない。作るくらいなら拾う方が圧倒的に労力が少ない。



     消しゴムに手を伸ばす。

     地味に遠い。

     再度ため息を吐く。



     席を立つ。先生と目が合ったが、床に落ちた消しゴムを見て状況を把握したのか、何も言わずに視線をそらした。

     先生から許しをもらえた僕は、堂々と歩いて消しゴムに手を伸ばす。

     すると、僕の手と同じような色の物体が僕の手に触れてきた。



     その物体は手のような形をしていて、隣の席から伸びているようだ。

     不思議に思って見上げると、松原さんと目が合った。



    「あ、ご、ごめん。席から遠いかなと思って拾おうとしたけど……タイミング悪かったね」



     そう言うと、松原さんは頬を赤らめて顔をそむけた。



    「あ……ありがとう」



     呆気にとられながらも、何とか感謝を伝える。

     僕の感謝に、松原さんはそっぽを向いたまま頷いて応えた。



    「広瀬、消しゴム拾ったんなら早く座りなさい」



     先生に注意されて、大人しく席に戻る。どうやら、松原さんを見つめていたせいで、少し時間が経っていたらしい。





     ……もし、数秒前に戻れるのなら。

     今度は拾わずに、彼女が拾ってくれるのを待ちたいな。
  • 20210918(土)11:44

    短いもの(~4,000文字)」に「[#book=3:p=17#]」を追加しました。
  • 20210804(水)19:43

    短いもの(~4,000文字)」に「博愛主義な彼」を追加しました。