短いもの(~4,000文字)
最期の日
酒の臭いで目を覚ます。いつもの如く、また私は酒を飲んでる途中で寝落ちしてしまっていたようだ。
テーブルに突っ伏していた身体を起こす。身体が重いのはおそらくしっかり休めていないからだろう。明日からまた仕事なのに、それまでに上手く切り替えられるか心配だ。
そんな事を考えながら暫くの間ぼんやりとしていた私だったが、いい加減、リビングに充満した酒の臭いに耐えきれなくなってきた。
「片付けるか」
重たい身体に鞭を打って立ち上がる。一瞬ふらついたが、それもこんな日にはよくあることだ。
改めてテーブルを見ると、なかなかに荒れていた。空き缶は立っているものと倒れてテーブルに零れているものがあり、コンビニで買ったつまみはテーブル一面に散らばっていた。一体、どれだけ飲んだくれたらこんな風になるのだろう。
私は、つまみを口に入れて、空き缶をキッチンに放り投げた。まだ少し中身があったから、多分キッチンで液体がぶちまけただろうが、私の知ったことではない。とりあえず、目の前のテーブルだけ片付けられればそれでいい。
何かの景品で貰ったウエットティッシュでテーブルを拭く。拭き取るには零れていたビールの量が多かったらしく、テーブルから液体が落ちていったが、これも特に気にする気分にはなれなかった。
そうして片付けが終わると、私は再びテーブルに突っ伏した。
昨日はどうしてこんなに酒を飲んだんだっけ。思い出そうとするも、特に何も思い出せない。ただ、目は痛いし、酒も大量に飲んでることから、何か相当辛いことがあったのは確かだ。
なんだっけ、なんだっけな……。
ブー、ブー
現実から意識を手放そうとしていた時、スマホの通知音で目を開ける。
「スマホ……どこだっけ」
立ち上がって、スマホを探す。その間、私の足の裏には先程零した液体がついていて、当然どんどん歩を進めるごとに床が汚れていっているが、もう気にすることでもないだろう。
それにしても、なかなかスマホが見つからない。まさか酔った勢いで窓から捨てた? と一瞬焦ったが、音はしっかり聞こえていたのでそんなことはない。
数分探しても見つからないので、仕方なく諦めて再び椅子に座ると、なんとテーブルにスマホが置いてあった。灯台もと暗しとはこのことだ。
通知を確認すると、友人からLINEが来ていた。
『ごめん! 昨日飲み会行っててさ〜』
何のことだろう? と少し前のトーク履歴を見ると、どうやら昨日、私が彼女に電話をかけていたらしい。彼女とは暇な時、気軽に電話をかけれる間柄で、私にはそういう友人が数人いる。まさか、他の友人にも電話をかけたのではないかと思い、過去の通知を見る。確認すると、やはり他の友人からも似たようなLINEが来ていた。いつもなら、最初に電話をかけた相手が駄目だったら諦めるのに……一体、どれだけ酔ってたんだよ、私。
返信するのがやけに面倒で未読無視を決め込む。別に返信が遅れたくらい、彼女らにはどうってこともないだろう。良くも悪くも、私の周りの人達はみんなマイペースだ。……それが時々、寂しく感じてしまうのは、きっと私の精神年齢が低いせいなのだろう。
そういえば昨日、自分が辛い時には誰もいないって、それで悲しくなって余計に酒を飲んだんだっけ。
私が辛い時には誰もいない……それは、昔からそうだった。誰かが辛い時には必ず私がいるのに、私の傍には誰もいない。私の周りの人達はみんな自分のペースで生きてて、いつまでも他人に合わせてばかりの私とは大違い。
私だけが取り残されて苦しくなるんだと思うと、なんだか無性に虚しい。
ブー
スマホが光る。確認すると、またもや友人からLINEが来ていた。
『ねえねえ。今晩、暇だったら飲みに行かない?』
私に声を掛けるくらいなんだから、よほど暇なのだろう。
「私が電話掛けた時は、出ないくせに……」
呟くと同時に、乾いた笑顔が落ちる。
「もう、死のう」
酒の臭いで目を覚ます。いつもの如く、また私は酒を飲んでる途中で寝落ちしてしまっていたようだ。
テーブルに突っ伏していた身体を起こす。身体が重いのはおそらくしっかり休めていないからだろう。明日からまた仕事なのに、それまでに上手く切り替えられるか心配だ。
そんな事を考えながら暫くの間ぼんやりとしていた私だったが、いい加減、リビングに充満した酒の臭いに耐えきれなくなってきた。
「片付けるか」
重たい身体に鞭を打って立ち上がる。一瞬ふらついたが、それもこんな日にはよくあることだ。
改めてテーブルを見ると、なかなかに荒れていた。空き缶は立っているものと倒れてテーブルに零れているものがあり、コンビニで買ったつまみはテーブル一面に散らばっていた。一体、どれだけ飲んだくれたらこんな風になるのだろう。
私は、つまみを口に入れて、空き缶をキッチンに放り投げた。まだ少し中身があったから、多分キッチンで液体がぶちまけただろうが、私の知ったことではない。とりあえず、目の前のテーブルだけ片付けられればそれでいい。
何かの景品で貰ったウエットティッシュでテーブルを拭く。拭き取るには零れていたビールの量が多かったらしく、テーブルから液体が落ちていったが、これも特に気にする気分にはなれなかった。
そうして片付けが終わると、私は再びテーブルに突っ伏した。
昨日はどうしてこんなに酒を飲んだんだっけ。思い出そうとするも、特に何も思い出せない。ただ、目は痛いし、酒も大量に飲んでることから、何か相当辛いことがあったのは確かだ。
なんだっけ、なんだっけな……。
ブー、ブー
現実から意識を手放そうとしていた時、スマホの通知音で目を開ける。
「スマホ……どこだっけ」
立ち上がって、スマホを探す。その間、私の足の裏には先程零した液体がついていて、当然どんどん歩を進めるごとに床が汚れていっているが、もう気にすることでもないだろう。
それにしても、なかなかスマホが見つからない。まさか酔った勢いで窓から捨てた? と一瞬焦ったが、音はしっかり聞こえていたのでそんなことはない。
数分探しても見つからないので、仕方なく諦めて再び椅子に座ると、なんとテーブルにスマホが置いてあった。灯台もと暗しとはこのことだ。
通知を確認すると、友人からLINEが来ていた。
『ごめん! 昨日飲み会行っててさ〜』
何のことだろう? と少し前のトーク履歴を見ると、どうやら昨日、私が彼女に電話をかけていたらしい。彼女とは暇な時、気軽に電話をかけれる間柄で、私にはそういう友人が数人いる。まさか、他の友人にも電話をかけたのではないかと思い、過去の通知を見る。確認すると、やはり他の友人からも似たようなLINEが来ていた。いつもなら、最初に電話をかけた相手が駄目だったら諦めるのに……一体、どれだけ酔ってたんだよ、私。
返信するのがやけに面倒で未読無視を決め込む。別に返信が遅れたくらい、彼女らにはどうってこともないだろう。良くも悪くも、私の周りの人達はみんなマイペースだ。……それが時々、寂しく感じてしまうのは、きっと私の精神年齢が低いせいなのだろう。
そういえば昨日、自分が辛い時には誰もいないって、それで悲しくなって余計に酒を飲んだんだっけ。
私が辛い時には誰もいない……それは、昔からそうだった。誰かが辛い時には必ず私がいるのに、私の傍には誰もいない。私の周りの人達はみんな自分のペースで生きてて、いつまでも他人に合わせてばかりの私とは大違い。
私だけが取り残されて苦しくなるんだと思うと、なんだか無性に虚しい。
ブー
スマホが光る。確認すると、またもや友人からLINEが来ていた。
『ねえねえ。今晩、暇だったら飲みに行かない?』
私に声を掛けるくらいなんだから、よほど暇なのだろう。
「私が電話掛けた時は、出ないくせに……」
呟くと同時に、乾いた笑顔が落ちる。
「もう、死のう」