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独り言

人殺し





 ただ、君が生きていてくれるだけでよかったんだ。

 君が笑っていて、みんなに囲まれていて。……誰よりも幸せそうで。

 そんな君を見てるだけで、僕も幸せになれた。



「私は幸せになんかなれないよ」



「君は……幸せだったじゃないか」



 そう言うと、君は疲れたような瞳で僕を見た。瞳の中で、頼りない僕の姿が揺れている。

まるで、僕の言葉を否定しているかのように。



「そうやって、私にあなたの幸せを押し付けてきたんだね」



「……え、」



 思いがけない言葉に目を見開く。

 僕が、自分の幸せを君に押し付けてるだって…………?



 それはありえない。だって、僕は君の幸せなしでは幸せを感じることができないから。そもそも君が幸せじゃなきゃ成立しないんだ。そんな僕のひ弱な幸せを、君に押し付けられるわけがない。



「そうやって逃げて、浸って、善人ぶってたんだね……本当に勝手だよ、あなたは」



 何を言ってるのか、分からない。



「いつまで逃げるの」



 君は一体、何を言ってるのだろう。



「醜いよ」



 君がそう言った直後、君の首元から赤い水しぶきが飛び散って僕の頬に付く。



「……この、人殺し…………」



 君は焦点の合わない目で僕を……いや、何かを見つめていた。



「君が、何を言ってるのか、僕には分からないよ」



 そう言うと、君は乾いた笑みを零した。

 それから間もなくして静かに目を閉じた。
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