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独り言

おばあちゃん家の猫





 雨の中、生まれて数ヶ月の俺は飼い主に捨てられ、ダンボールの中で凍えていた。

 ろくに食事も与えられてなかったせいか動けもしなくて、幼いながらに死を覚悟した。
 そんな俺の元に傘を持ったアンタが現れた。
 愛想のない俺を見て微笑み、食事を与えてくれるアンタは、まだ拾われて間もない頃、心底気持ち悪くて理解出来なかった。

 俺はアンタに拾われてから、随分丸くなった。アンタの優しさに甘えて、食事を多く強請ったから。
 そんな丸くなった俺の事を、幸せそうに見つめてたアンタを見て、なんとも言えない気持ちになった事をよく覚えている。

 暫くして、暑い時期になるとうるさい奴らが頻繁に来るようになった。家にやって来ては、大きな声で騒ぎながらドタドタと走り回る。
 更にうるさいだけでは飽き足らず、俺を無理矢理抱きかかえて撫でたり、興味のない猫じゃらしを執拗に目の前でブンブン振ってくる、とにかく迷惑な奴ら。
 でも、もみくちゃにされてる俺を見て微笑んでる時のアンタの顔は、嫌いじゃなかった。

 冬、寒さに耐えかねてアンタに擦り寄った俺に、決まってアンタは『レオは寂しがり屋さんだねぇ』と言いながら、しわくちゃな手で撫でるまでがお決まりだった。
 別に寂しくなんかねぇよ。
 いつも心の中でそう毒づいていた。

 寂しくなんかない。でもな、なんでだろうな。うるさい奴らも居なくて、寒くて。
 こんな日に横になって動かないアンタを見てると、少し、ほんの少しだけ、胸が苦しいよ。

 俺、随分丸くなったみたいだよ。
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