一年目
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「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」
結局、断ることも出来ず四人で任務にやって来た。
場所は山奥の廃校、一級相当の呪霊を大将として数え切れないほどの低級霊が群れを成しているらしい。
そこまでドンパチやる様な任務でもないが、一般市民の為に帳を降ろすのは必須。
今回は補助監督ではなく、夏油くんが張ったようだ。
私にはまだ上手くできない芸当。
頭上から降り注ぐ黒を視界の端に入れながら、元昇降口であろう所から侵入する。
長年放置されていたせいで、汚れが溜まって仕方ない。
「じゃ、俺はとっとと親玉祓ってくるから」
手をひらひらと振りながら五条くんは真っ直ぐ校内に進む。
まるで「役立たずは来るな」と言っているようだ。
あそこまでハッキリ示されると、いっそ清々しさまで感じる。
「じゃあ、私たちは訓練も兼ねて低級霊たちを祓おうか」
「私はそこら辺を彷徨いてくるわ」
硝子が左に進んだので、私と夏油くんは右。
訓練、と言っていたので祓うのは私だろう。
気は乗らないが、渋々術式を発動させ蔓延っている呪霊たちを縛り上げていく。
実質三級の私でも簡単に祓える弱いやつらばかり。
地道に一体一体祓っていっても、最終手には五条くんが派手に殲滅させるだろうから、
私が祓うの意味は無いように思えるけど。
「大分上手くなったんじゃないかい」
一、二歩後ろにいる夏油くんが言った。
確かに、呪術師になりたての頃はこの糸を操ることさえ、ろくに出来なかった。
多少なり、進歩はしている。
「よくて二級までしか祓えないけどね」
皮肉たっぷりに返答。
私は三級程度なのにアンタのせいで命の危険に晒されています、ってね。
そんな私の意図を察してか、夏油くんは少しだけ頬を引き攣らせた。
彼なりに罪悪感を感じているのだろう。
それがあるから、私もそこまで強く言うことが出来ない。
これが五条くんなら容赦なく言い争っていたけど、この一件さえ抜きにしたら割と良い人だと思う。
ただ、この一件が大きすぎるだけで。
休む暇もなく淡々と祓っていると、バイブレーション。
夏油くんの携帯に着信。
「悟、どうかしたのかい?」
「やられた。親玉、低級霊を集めて自分の位置を誤魔化してる」
スピーカーモードにしていた為、私も一旦手を止めて話を聴いていると、引力。
「弦月さん!」
抗う術もなく、私は校舎の黒に飲み込まれていった。