第7話「新天地」
「あの2人って、付き合い始めたんだね。」
律は書架を指さし合いながら、本を選んでいる1組の男女を指さす。
郁はニコニコと笑いながら「そうなんですぅ~♪」と答えた。
律が指さした先にいたのは、郁の上官であり、尊敬する副班長、小牧。
そしてその隣に立つのは、小牧より10歳年下の少女、中澤毬江だった。
毬江は耳に障害を持っており、実はその件で事件があった。
小牧が障害を持つヒロインが恋をするという小説を、毬江に薦めたのだ。
そのことがメディア良化委員会に知られ、人権侵害の疑いがあるとされ、連行された。
郁は毬江に違うと証言させればいいと考えた。
そして巻き込みたくないという小牧や、それを支持する堂上を騙す形で、毬江を連れ出したのだ。
毬江の証言で小牧の疑いは晴れた。
そしてずっと幼なじみだった2人は、恋人同士になったのだ。
もちろんそんな経緯を、律に話すことはできない。
だけど律はその辺りを気にすることもない。
毬江が携帯電話に文字を打ち込み、小牧がそれを見て笑う。
律はそんな2人を見守りながら「お似合いだね。美男美女だし」と微笑した。
賛同者を得た郁は「そうですよね~!」と大いに喜んだ。
「10歳も年齢が離れてるなんて、釣り合わないっていう人たちもいるんです。」
「え?全然おかしくないでしょ。もっと年が離れた夫婦とかいくらでもいる。」
「小牧教官が同情してるだけっていう人も」
郁は耳の障害のことは敢えて口に出さずに、そう言った。
律はもちろんそれを察して「あんなラブラブなのに?」と眉をひそめた。
「まるでメディア良化委員会みたいな発想だね。」
「え?」
「そうじゃない。好き合ってるカップルを勝手な感情で別れさせようとしてるなんてさ。」
「・・・言われてみれば、そうですね。」
「本気でそうしようとしているなら、図書館員失格だよ。」
律の言葉に、2人の会話に聞き耳を立てていた何人かの女性図書館員の顔色が変わった。
図書大最後の首席で、特殊部隊のエリート、おまけにイケメン。
そんな小牧に目をつけていて、毬江との関係にケチをつけている者たちだ。
郁は自分たちの会話が、そんな女性図書館員たちに衝撃を与えているなんて、気づいていない。
だが律は表情が変わった者たちに気付いており、わざと「図書館員失格」などとキツイ言葉を使った。
「そう言えば堂上教官も。10歳年下は妹みたいなもので、恋愛なんかあり得ないって言ったんです!」
郁は告げ口よろしく、暴露した。
ちなみに堂上班は、現在図書館業務中だ。
堂上と郁は配架作業中で、小牧と手塚は休憩中。
小牧は休憩の合間に毬江と本を選んでおり、堂上はすぐ近くで本を書架に戻している。
そして堂上には、郁たちの会話はもちろん聞こえている。
というより、わざと聞こえるように言ったのだ。
「うわ。堂上さんって意外と頭固い。すでにおじさんだね。」
律も郁の悪ノリに乗っかって、容赦なく言い放つ。
その一言が聞こえたらしい堂上は、思わず本を取り落しそうになった。
そんな堂上のコミカルな姿を見た郁と律は、顔を見合わせて笑う。
堂上はガックリと肩を落としながら「笠原、仕事しろ」と力のない声で命じた。
律は書架を指さし合いながら、本を選んでいる1組の男女を指さす。
郁はニコニコと笑いながら「そうなんですぅ~♪」と答えた。
律が指さした先にいたのは、郁の上官であり、尊敬する副班長、小牧。
そしてその隣に立つのは、小牧より10歳年下の少女、中澤毬江だった。
毬江は耳に障害を持っており、実はその件で事件があった。
小牧が障害を持つヒロインが恋をするという小説を、毬江に薦めたのだ。
そのことがメディア良化委員会に知られ、人権侵害の疑いがあるとされ、連行された。
郁は毬江に違うと証言させればいいと考えた。
そして巻き込みたくないという小牧や、それを支持する堂上を騙す形で、毬江を連れ出したのだ。
毬江の証言で小牧の疑いは晴れた。
そしてずっと幼なじみだった2人は、恋人同士になったのだ。
もちろんそんな経緯を、律に話すことはできない。
だけど律はその辺りを気にすることもない。
毬江が携帯電話に文字を打ち込み、小牧がそれを見て笑う。
律はそんな2人を見守りながら「お似合いだね。美男美女だし」と微笑した。
賛同者を得た郁は「そうですよね~!」と大いに喜んだ。
「10歳も年齢が離れてるなんて、釣り合わないっていう人たちもいるんです。」
「え?全然おかしくないでしょ。もっと年が離れた夫婦とかいくらでもいる。」
「小牧教官が同情してるだけっていう人も」
郁は耳の障害のことは敢えて口に出さずに、そう言った。
律はもちろんそれを察して「あんなラブラブなのに?」と眉をひそめた。
「まるでメディア良化委員会みたいな発想だね。」
「え?」
「そうじゃない。好き合ってるカップルを勝手な感情で別れさせようとしてるなんてさ。」
「・・・言われてみれば、そうですね。」
「本気でそうしようとしているなら、図書館員失格だよ。」
律の言葉に、2人の会話に聞き耳を立てていた何人かの女性図書館員の顔色が変わった。
図書大最後の首席で、特殊部隊のエリート、おまけにイケメン。
そんな小牧に目をつけていて、毬江との関係にケチをつけている者たちだ。
郁は自分たちの会話が、そんな女性図書館員たちに衝撃を与えているなんて、気づいていない。
だが律は表情が変わった者たちに気付いており、わざと「図書館員失格」などとキツイ言葉を使った。
「そう言えば堂上教官も。10歳年下は妹みたいなもので、恋愛なんかあり得ないって言ったんです!」
郁は告げ口よろしく、暴露した。
ちなみに堂上班は、現在図書館業務中だ。
堂上と郁は配架作業中で、小牧と手塚は休憩中。
小牧は休憩の合間に毬江と本を選んでおり、堂上はすぐ近くで本を書架に戻している。
そして堂上には、郁たちの会話はもちろん聞こえている。
というより、わざと聞こえるように言ったのだ。
「うわ。堂上さんって意外と頭固い。すでにおじさんだね。」
律も郁の悪ノリに乗っかって、容赦なく言い放つ。
その一言が聞こえたらしい堂上は、思わず本を取り落しそうになった。
そんな堂上のコミカルな姿を見た郁と律は、顔を見合わせて笑う。
堂上はガックリと肩を落としながら「笠原、仕事しろ」と力のない声で命じた。
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