第25話「日和」
「すごい、並んでるね。」
由紀ががっかりしたようにため息をつく。
日和も「そうだね」と肩を落とした。
読みたい漫画雑誌があって、でも書店では手に入らないので、図書館に来た。
だが館内には閲覧待ちの人々の長蛇の列ができており、読むのにはすごく時間がかかりそうだった。
雑誌「自由」第3号はすべてメディア良化隊の検閲により、回収されてしまいました。
そこで第3号は欠番として、第4号に第3号の内容をそのまま掲載します。
現在増刷中であり、発売日は現在調整中です。
先行して全国の主要図書館にて、閲覧が可能です。
丸川書店からそんな告知がなされた。
そしてその翌日、発売された「新世相」のトップ記事はこの第3号の話だった。
すべて良化隊が持って行き、店頭には並ばなかった第3号。
それがなぜかネットで高値で取引されている。
はっきりと明言はしていないが、良化隊による雑誌の横流しを暗示した内容だ。
メディア良化委員会はすかさず「新世相」のを検閲対象にした。
するとその一連の流れは、メディア良化法と良化委員会を批判するパス報道で伝えられたのだ。
手塚慧はバッチリとカメラ目線で「これはもう検閲ではなく、犯罪ですね」と言い切った。
こうしてメディア良化法は、ますます世間の批判を集めることになっていったのだ。
そんな中、桐嶋日和は友人の由紀と共に武蔵野第一図書館に向かった。
日和も由紀も雑誌「自由」に連載されている吉川千春の漫画の大ファンなのだ。
どうしても第4号が読みたい。
だが東京都内で置いている図書館は、武蔵野第一と第二だけだ。
だが勢い込んで図書館に入った2人は、ため息をつくしかなかった。
雑誌「自由」は貸出はしておらず、館内の閲覧のみ可能だ。
しかもその閲覧も順番待ちで、長蛇の列ができていたのだった。
「うわぁ、これは無理だね。」
「うん。あんまり遅くなったら親が心配する。」
日和と由紀は顔を見合わせると、ため息をついた。
自宅マンションから武蔵野第一図書館まで来るだけでも、時間がかかるのだ。
この列に並んでいたら、何時に帰れるかわからない。
「ひよちゃんのお父さんは『自由』の編集長さんでしょ?本当に何とかならないの?」
由紀は無邪気にそう聞いた。
日和は「無理だと思う」と答えて、首を振った。
そう、日和の父の桐嶋禅は雑誌「自由」の編集長をしている。
もしかして頼めば、何とかなるのかもしれない。
だが2つの雑誌の編集を引き受け、前よりももっと忙しくなった父にわがままはいいたくなかった。
それに他の人は苦労して読んでいるのに、自分だけ特権を使うのもよくないと思う。
だから日和が雑誌「自由」を読ませてほしいと、父に頼んだことはなかった。
「せっかくだから、本を見ようよ。」
日和がそう告げると由紀は「そうだね」と答え、2人はティーンズラブと呼ばれる小説のコーナーに向かう。
たまたま2人の会話を耳にし、その後ろ姿をじっと見ている男には日和はまったく気づかなかった。
由紀ががっかりしたようにため息をつく。
日和も「そうだね」と肩を落とした。
読みたい漫画雑誌があって、でも書店では手に入らないので、図書館に来た。
だが館内には閲覧待ちの人々の長蛇の列ができており、読むのにはすごく時間がかかりそうだった。
雑誌「自由」第3号はすべてメディア良化隊の検閲により、回収されてしまいました。
そこで第3号は欠番として、第4号に第3号の内容をそのまま掲載します。
現在増刷中であり、発売日は現在調整中です。
先行して全国の主要図書館にて、閲覧が可能です。
丸川書店からそんな告知がなされた。
そしてその翌日、発売された「新世相」のトップ記事はこの第3号の話だった。
すべて良化隊が持って行き、店頭には並ばなかった第3号。
それがなぜかネットで高値で取引されている。
はっきりと明言はしていないが、良化隊による雑誌の横流しを暗示した内容だ。
メディア良化委員会はすかさず「新世相」のを検閲対象にした。
するとその一連の流れは、メディア良化法と良化委員会を批判するパス報道で伝えられたのだ。
手塚慧はバッチリとカメラ目線で「これはもう検閲ではなく、犯罪ですね」と言い切った。
こうしてメディア良化法は、ますます世間の批判を集めることになっていったのだ。
そんな中、桐嶋日和は友人の由紀と共に武蔵野第一図書館に向かった。
日和も由紀も雑誌「自由」に連載されている吉川千春の漫画の大ファンなのだ。
どうしても第4号が読みたい。
だが東京都内で置いている図書館は、武蔵野第一と第二だけだ。
だが勢い込んで図書館に入った2人は、ため息をつくしかなかった。
雑誌「自由」は貸出はしておらず、館内の閲覧のみ可能だ。
しかもその閲覧も順番待ちで、長蛇の列ができていたのだった。
「うわぁ、これは無理だね。」
「うん。あんまり遅くなったら親が心配する。」
日和と由紀は顔を見合わせると、ため息をついた。
自宅マンションから武蔵野第一図書館まで来るだけでも、時間がかかるのだ。
この列に並んでいたら、何時に帰れるかわからない。
「ひよちゃんのお父さんは『自由』の編集長さんでしょ?本当に何とかならないの?」
由紀は無邪気にそう聞いた。
日和は「無理だと思う」と答えて、首を振った。
そう、日和の父の桐嶋禅は雑誌「自由」の編集長をしている。
もしかして頼めば、何とかなるのかもしれない。
だが2つの雑誌の編集を引き受け、前よりももっと忙しくなった父にわがままはいいたくなかった。
それに他の人は苦労して読んでいるのに、自分だけ特権を使うのもよくないと思う。
だから日和が雑誌「自由」を読ませてほしいと、父に頼んだことはなかった。
「せっかくだから、本を見ようよ。」
日和がそう告げると由紀は「そうだね」と答え、2人はティーンズラブと呼ばれる小説のコーナーに向かう。
たまたま2人の会話を耳にし、その後ろ姿をじっと見ている男には日和はまったく気づかなかった。
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