第14話「過保護」
「それはまた」
図書隊の面々はそう言ったきり、その後の言葉が出ないようだ。
確かに持ちかけた話は、あまりにも無謀で危険なものだった。
新年会から3ヶ月経った4月某日。
丸川書店の面々は、特殊部隊事務所を訪れた。
メンバーはエメラルド編集部の高野と羽鳥と律、そしてジャプンの編集長の桐嶋。
対する特殊部隊は、隊長の玄田と副隊長の緒形、そして堂上と小牧が応対してくれた。
特殊部隊側のメンバーを指名したのは、図書隊に詳しい律だった。
これから話す案件の内容を考えて、選んだのだ。
そして彼らは会議室に集まり、向かい合った。
「このたびは無茶な面会に応じて下さって、ありがとうございます。」
まず高野が先陣を切るように、話し始める。
これは極秘の会談だった。
本来なら図書隊の上層部に通さなければいけない話だ。
でもその前に、特殊部隊に打診をしておいた方がいいと告げたのもまた律だった。
郁の査問などを見ていた律は、図書隊が綺麗な組織ではないことをよく知っている。
正しくこちらの意思を伝えるためには、直接担当者と話した方がいいと判断した。
「図書館を舞台にした新連載の企画が上がっています。」
高野はすぐに本題を切り出した後、実際の担当である羽鳥に視線を送った。
図書隊の4名は、すぐに営業用の笑顔から真剣な表情に変わる。
企画段階ですでに、検閲にかかりそうな匂いがプンプンする。
「主人公は武蔵野第一図書館に勤務する女性隊員。彼女の仕事や恋愛の物語です。
作家は実際に図書隊で働く女性隊員に取材をしたいと希望しています。」
羽鳥がそう告げると、ちらりと律に視線を送る。
律は「はい」と頷くと、図書館に来ているときとは違う仕事モードの顔で特殊部隊の面々を見た。
「作家は主人公を、図書館員ではなく防衛方の図書隊員とイメージしています。
そこで俺は、笠原郁さんをモデルにしたらと提案しました。」
律の言葉に小牧が「それはまた」と言ったが、その後の言葉が出なかった。
確かに持ちかけた話は、あまりにも無謀で危険なものだった。
郁の日常をモデルにするなら、それは間違いなく検閲対象になるだろう。
しかも郁は全国で唯一の図書特殊部隊の女性隊員で、実際に良化隊と向き合うからだ。
そしてある程度内部事情に詳しければ、モデルが郁であるとわかるかもしれない。
そうなった場合、郁自身に危険が及ぶ可能性がある。
良化隊は表立って何かをすることはないだろうが、賛同団体ならば。
または賛同団体を名乗って、良化隊が自ら郁を狙う可能性だってあるのだ。
「絶対に反対です。上官として許可できません。」
堂上は唐突に話をぶった切った。
その剣幕に驚いた小牧が「堂上!」と咎める声を上げる。
だが堂上は動じることなく「せめて士長昇任試験が終わるまで、笠原の耳に入れたくありません」と言った。
「過保護だなぁ」
律は予想していたと言わんばかりの顔でと苦笑した。
堂上以外の図書隊の面々、玄田、緒形、小牧も同じようなリアクションだった。
図書隊の面々はそう言ったきり、その後の言葉が出ないようだ。
確かに持ちかけた話は、あまりにも無謀で危険なものだった。
新年会から3ヶ月経った4月某日。
丸川書店の面々は、特殊部隊事務所を訪れた。
メンバーはエメラルド編集部の高野と羽鳥と律、そしてジャプンの編集長の桐嶋。
対する特殊部隊は、隊長の玄田と副隊長の緒形、そして堂上と小牧が応対してくれた。
特殊部隊側のメンバーを指名したのは、図書隊に詳しい律だった。
これから話す案件の内容を考えて、選んだのだ。
そして彼らは会議室に集まり、向かい合った。
「このたびは無茶な面会に応じて下さって、ありがとうございます。」
まず高野が先陣を切るように、話し始める。
これは極秘の会談だった。
本来なら図書隊の上層部に通さなければいけない話だ。
でもその前に、特殊部隊に打診をしておいた方がいいと告げたのもまた律だった。
郁の査問などを見ていた律は、図書隊が綺麗な組織ではないことをよく知っている。
正しくこちらの意思を伝えるためには、直接担当者と話した方がいいと判断した。
「図書館を舞台にした新連載の企画が上がっています。」
高野はすぐに本題を切り出した後、実際の担当である羽鳥に視線を送った。
図書隊の4名は、すぐに営業用の笑顔から真剣な表情に変わる。
企画段階ですでに、検閲にかかりそうな匂いがプンプンする。
「主人公は武蔵野第一図書館に勤務する女性隊員。彼女の仕事や恋愛の物語です。
作家は実際に図書隊で働く女性隊員に取材をしたいと希望しています。」
羽鳥がそう告げると、ちらりと律に視線を送る。
律は「はい」と頷くと、図書館に来ているときとは違う仕事モードの顔で特殊部隊の面々を見た。
「作家は主人公を、図書館員ではなく防衛方の図書隊員とイメージしています。
そこで俺は、笠原郁さんをモデルにしたらと提案しました。」
律の言葉に小牧が「それはまた」と言ったが、その後の言葉が出なかった。
確かに持ちかけた話は、あまりにも無謀で危険なものだった。
郁の日常をモデルにするなら、それは間違いなく検閲対象になるだろう。
しかも郁は全国で唯一の図書特殊部隊の女性隊員で、実際に良化隊と向き合うからだ。
そしてある程度内部事情に詳しければ、モデルが郁であるとわかるかもしれない。
そうなった場合、郁自身に危険が及ぶ可能性がある。
良化隊は表立って何かをすることはないだろうが、賛同団体ならば。
または賛同団体を名乗って、良化隊が自ら郁を狙う可能性だってあるのだ。
「絶対に反対です。上官として許可できません。」
堂上は唐突に話をぶった切った。
その剣幕に驚いた小牧が「堂上!」と咎める声を上げる。
だが堂上は動じることなく「せめて士長昇任試験が終わるまで、笠原の耳に入れたくありません」と言った。
「過保護だなぁ」
律は予想していたと言わんばかりの顔でと苦笑した。
堂上以外の図書隊の面々、玄田、緒形、小牧も同じようなリアクションだった。
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