第12話「ザ☆漢」
「あんた、何かあたしに隠してること、ない?」
女子寮の部屋で、柴崎が見ている者の背筋を寒くさせる笑みを浮かべながら、そう聞いてきた。
だが郁は「何もない!」ときっぱりと断言した。
まったく怒涛のような日々だった。
査問が終わり、手塚慧の手紙から王子様の正体を知った。
その後、堂上に大外刈りを決めて、脳震盪を起こさせた。
さらに行政派の女性図書館員が、律を襲うという事件が起きた。
その女性館員は、律が図書隊に持ち込んだ図書寄贈の担当者にと行政派が押した人物だ。
律はあっさりとそれを却下し、郁でなければダメだと言ってくれた。
だがそれだけですまなかったのだ。
律はその場で、彼女が図書隊員として問題があるのだと指摘した。
男性利用者に色目を使うばかりで、満足に案内もできない。そんな人はごめんです。
律のその言葉を受けて、行政派は彼女を切り捨てた。
具体的には、他県の場末の図書館への異動を言い渡したのだ。
図書館では有名人の律に、正式な会議の場で指摘されて無視できなかったのだろう。
もしかすると、そこまで評価が低い図書館員を行政派の末席におきたくなかったのかもしれない。
逆恨みした女性図書館員が、逆上して律を襲った。
いや正確には襲いかけたのだ。
律と一緒にいた高野が、彼女を取り押さえた。
彼女は懲戒免職の上、武蔵野第一図書館に限らず全国の図書館で出入り禁止となった。
事件は解決したが、郁はずっと考えている。
律と高野は相思相愛の仲ではないのかと。
上司と部下と聞けば、自分と堂上の関係に似ていると思う。
だが大きく違うのは、高野と律は男同士だということだ。
それが悪いことだと思わなかった。
高野も律も思わず振り返るほどの美人であり、2人が寄り添う姿は想像するだけでうっとりしてしまう。
つまりどう見てもお似合いなのだ。
同性愛は自分には理解できない世界ではあるが、否定はしない。
っていうか、高野と律なら普通に応援したくなる。
小牧と毬江に対して思う気持ちと、少しも変わらない。
だけど世間的なことを考えると、大っぴらに応援はできなかった。
このことが知れ渡れば、律や高野が謂れのない誹謗中傷を受ける可能性が高い。
世間ではまだまだ、同性愛には寛容ではない。
考え込んでいる郁を見て、同室の柴崎は探りを入れてくる。
だがこればかりは、柴崎にも言えなかった。
柴崎は律に対して偏見を持つことはないと思うが、同性愛をどう思っているのかわからない。
同性を恋人に持つって、すごく大変だ。
あたしが好きなのは堂上教官でよかったなどと、妙な結論に落ち着く。
「律さんも大変なんだなぁ」
ベットに寝ころびながら、郁はポツリとそう呟いた。
炬燵で雑誌を見ていた柴崎が「律さんが何?」と聞き返してきたが「何でもない!」と誤魔化した。
女子寮の部屋で、柴崎が見ている者の背筋を寒くさせる笑みを浮かべながら、そう聞いてきた。
だが郁は「何もない!」ときっぱりと断言した。
まったく怒涛のような日々だった。
査問が終わり、手塚慧の手紙から王子様の正体を知った。
その後、堂上に大外刈りを決めて、脳震盪を起こさせた。
さらに行政派の女性図書館員が、律を襲うという事件が起きた。
その女性館員は、律が図書隊に持ち込んだ図書寄贈の担当者にと行政派が押した人物だ。
律はあっさりとそれを却下し、郁でなければダメだと言ってくれた。
だがそれだけですまなかったのだ。
律はその場で、彼女が図書隊員として問題があるのだと指摘した。
男性利用者に色目を使うばかりで、満足に案内もできない。そんな人はごめんです。
律のその言葉を受けて、行政派は彼女を切り捨てた。
具体的には、他県の場末の図書館への異動を言い渡したのだ。
図書館では有名人の律に、正式な会議の場で指摘されて無視できなかったのだろう。
もしかすると、そこまで評価が低い図書館員を行政派の末席におきたくなかったのかもしれない。
逆恨みした女性図書館員が、逆上して律を襲った。
いや正確には襲いかけたのだ。
律と一緒にいた高野が、彼女を取り押さえた。
彼女は懲戒免職の上、武蔵野第一図書館に限らず全国の図書館で出入り禁止となった。
事件は解決したが、郁はずっと考えている。
律と高野は相思相愛の仲ではないのかと。
上司と部下と聞けば、自分と堂上の関係に似ていると思う。
だが大きく違うのは、高野と律は男同士だということだ。
それが悪いことだと思わなかった。
高野も律も思わず振り返るほどの美人であり、2人が寄り添う姿は想像するだけでうっとりしてしまう。
つまりどう見てもお似合いなのだ。
同性愛は自分には理解できない世界ではあるが、否定はしない。
っていうか、高野と律なら普通に応援したくなる。
小牧と毬江に対して思う気持ちと、少しも変わらない。
だけど世間的なことを考えると、大っぴらに応援はできなかった。
このことが知れ渡れば、律や高野が謂れのない誹謗中傷を受ける可能性が高い。
世間ではまだまだ、同性愛には寛容ではない。
考え込んでいる郁を見て、同室の柴崎は探りを入れてくる。
だがこればかりは、柴崎にも言えなかった。
柴崎は律に対して偏見を持つことはないと思うが、同性愛をどう思っているのかわからない。
同性を恋人に持つって、すごく大変だ。
あたしが好きなのは堂上教官でよかったなどと、妙な結論に落ち着く。
「律さんも大変なんだなぁ」
ベットに寝ころびながら、郁はポツリとそう呟いた。
炬燵で雑誌を見ていた柴崎が「律さんが何?」と聞き返してきたが「何でもない!」と誤魔化した。
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