第7話「どうですか?」
「どうですか?」
一通りの説明をした律が、黒子の顔を覗き込む。
黒子はいつになく明るい表情で「すごくいいと思います」と答えた。
黒子と律は、珍しくビジネスの話をしていた。
人気作家「まこと・りん」こと黒子の小説の翻訳本出版についての打ち合わせだ。
場所は黒子の部屋のリビング。
今日はまだ1回目だが、実はまだ正式契約をしていない。
まずは律が翻訳本のイメージをプレゼンテーションして、黒子が判断することになっていた。
「とりあえず、冒頭はこんな感じです。」
律は普段とは違う、改まった口調でそう言った。
そして律は1枚の紙片を、黒子の前に滑らせる。
パソコンで打ち出されたA4サイズの用紙には、英語の文章が書かれていた。
「先生のデビュー作の、最初の数行だけ訳してみました。」
律の言葉を聞きながら、黒子は英文を読んだ。
そして予想外の内容に、驚く。
黒子ははっきり言って、まだまだ英語は苦手だった。
簡単な日常会話程度は何とかなるが、入り組んだ話は無理だ。
ましてや英語の小説などは、辞書がないと読めない。
だが律に渡された英訳分は難なく読めてしまったのだ。
「何か簡単な文章ですね。」
「はい。一応中学英語レベルでまとめようかなと。」
思わず黒子がもらした感想に、律は即答した。
黒子は「なるほど」と相槌を打ち、残りの文章を読む。
律の言葉通り、最後までわかりやすい文章だった。
「なんなら日本人が英語の学習用に読んでくれてもいいと思っています。」
律は控えめな微笑を浮かべて、そう言った。
だけど内心には、しっかりと野心が見える。
単に欧米だけでなく、日本まで販売のターゲットに入れている。
つまり本をよりたくさん売ろうという見事な商魂だ。
「どうですか?」
一通りの説明をした律が、黒子の顔を覗き込む。
黒子はいつになく明るい表情で「すごくいいと思います」と答えた。
元々の原文からは、かなり離れた訳になっている。
だけど黒子が目指すわかりやすくて綺麗な文章とは、見事に合致していた。
これならば原作のイメージが壊れることもなさそうだ。
「じゃあ、契約していただけますか?」
「はい」
「それではさっそく、契約書を用意します。」
律はニッコリと笑顔でそう言い、黒子はそんな律の態度に感心する。
何せ黒子は会社勤めなどの経験がなく、ましてやプレゼンなどしたことがない。
だから堂々と自分の意見をアピールする律は、ちゃんとした大人なんだと思う。
「今日は高野さんが早いから、夜、ごはん食べに来ない?」
仕事の話が終わると、律はいつもの口調に戻って、そう言った。
今日は火神は遠征で、帰って来ない。
黒子は「うかがいます」と答えて、唇を緩めた。
わかる人にはわかる、黒子にしては最上級の笑顔だ。
こうして黒子と律の翻訳本はスタートした。
そして2人の友情も、ますます深くなったのだ。
一通りの説明をした律が、黒子の顔を覗き込む。
黒子はいつになく明るい表情で「すごくいいと思います」と答えた。
黒子と律は、珍しくビジネスの話をしていた。
人気作家「まこと・りん」こと黒子の小説の翻訳本出版についての打ち合わせだ。
場所は黒子の部屋のリビング。
今日はまだ1回目だが、実はまだ正式契約をしていない。
まずは律が翻訳本のイメージをプレゼンテーションして、黒子が判断することになっていた。
「とりあえず、冒頭はこんな感じです。」
律は普段とは違う、改まった口調でそう言った。
そして律は1枚の紙片を、黒子の前に滑らせる。
パソコンで打ち出されたA4サイズの用紙には、英語の文章が書かれていた。
「先生のデビュー作の、最初の数行だけ訳してみました。」
律の言葉を聞きながら、黒子は英文を読んだ。
そして予想外の内容に、驚く。
黒子ははっきり言って、まだまだ英語は苦手だった。
簡単な日常会話程度は何とかなるが、入り組んだ話は無理だ。
ましてや英語の小説などは、辞書がないと読めない。
だが律に渡された英訳分は難なく読めてしまったのだ。
「何か簡単な文章ですね。」
「はい。一応中学英語レベルでまとめようかなと。」
思わず黒子がもらした感想に、律は即答した。
黒子は「なるほど」と相槌を打ち、残りの文章を読む。
律の言葉通り、最後までわかりやすい文章だった。
「なんなら日本人が英語の学習用に読んでくれてもいいと思っています。」
律は控えめな微笑を浮かべて、そう言った。
だけど内心には、しっかりと野心が見える。
単に欧米だけでなく、日本まで販売のターゲットに入れている。
つまり本をよりたくさん売ろうという見事な商魂だ。
「どうですか?」
一通りの説明をした律が、黒子の顔を覗き込む。
黒子はいつになく明るい表情で「すごくいいと思います」と答えた。
元々の原文からは、かなり離れた訳になっている。
だけど黒子が目指すわかりやすくて綺麗な文章とは、見事に合致していた。
これならば原作のイメージが壊れることもなさそうだ。
「じゃあ、契約していただけますか?」
「はい」
「それではさっそく、契約書を用意します。」
律はニッコリと笑顔でそう言い、黒子はそんな律の態度に感心する。
何せ黒子は会社勤めなどの経験がなく、ましてやプレゼンなどしたことがない。
だから堂々と自分の意見をアピールする律は、ちゃんとした大人なんだと思う。
「今日は高野さんが早いから、夜、ごはん食べに来ない?」
仕事の話が終わると、律はいつもの口調に戻って、そう言った。
今日は火神は遠征で、帰って来ない。
黒子は「うかがいます」と答えて、唇を緩めた。
わかる人にはわかる、黒子にしては最上級の笑顔だ。
こうして黒子と律の翻訳本はスタートした。
そして2人の友情も、ますます深くなったのだ。
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