第30話「絵になりますね。」
「きゃ~~!律さん、綺麗~~!!」
桃井の黄色い声が響き渡る。
黒子も「本当に綺麗です」と、冷静に極めて客観的な感想を述べた。
律は黒子と共に、同じマンションの青峰の部屋にいた。
青峰と火神は、所属チームの遠征で出払っている。
高野はこれから出かける3人のために車で送迎をしてくれることになっており、エントランスで待っている。
この部屋にいるのは、青峰夫人の桃井と3人だけだ。
そして律は今、普段とは違う装いをしていた。
細身のいわゆるマーメイドラインのパーティドレス。
色は瞳の色と合わせた緑色だ。
そしてたっぷりと盛り髪のウィッグも元々の髪色に合わせた茶色。
さらに桃井によって施された、念入りなメイク。
かくしてスーパー美女、律に仕上がっていた。
「やっぱり元が美人だと、仕上がりが違いますね。」
黒子はいつもの通りの淡々とした口調で、そう言った。
実は黒子も、女性に扮している。
先日自書の著者近影撮影用の装いと同じドレスとメイクだ。
これはこれで、元々の黒子からは想像も出来ない美少女仕様だ。
だが元々美人の律と並ぶと、やはり見劣りする感は否めない。
桃井は「テツ君も綺麗だよ~」と言ってくれるが、黒子は信じない。
「姿形を褒められてもなぁ。黒子君の文才の方が、よっぽどすごいし」
律は面白くなさそうに、そう言った。
はっきり言って、天性の美貌を持つ律は「綺麗」という賛辞は聞き飽きている。
そもそも自分の手柄でも何でもないことを褒められても、うれしくないというのが基本スタンスだ。
「それじゃ、行きましょうか。」
黒子はそう告げると、律が頷く。
今日は律が訳した黒子の本の新作が発売される日だった。
2人はその記念イベントに出席する。
黒子が自分の素性を隠して、美少女メイクにしたのに倣って、律も女装することにしたのだった。
いろいろな問題はクリアしたが、やはり顔バレするといろいろと面倒だ。
もちろん何か喋ってしまっては、性別がバレてしまう。
だから黒子は英語が喋れないことにして無言、律の挨拶スピーチは口パクだ。
そしてスピーチ時の律の声を演じる役が、桃井だった。
桃井は黒子の付き人というポジションで会場入りする。
そのために旧姓と同じ、桃色のドレスを着ていた。
「きっと会場中の男の人たち、律さんとテツ君に惚れちゃうわねぇ」
桃井はウットリとした口調で、そう言った。
黒子が如才なく「桃井さんが一番綺麗ですよ」と答えると、桃井が「テツ君、嬉しい!」と抱き付いた。
律はそれを見ながら、苦笑する。
青峰夫人である桃井は、黒子が初恋の人だと公言して憚らない。
そして何かにつけて「テツ君、大好き」を繰り返すのだ。
最初のうちは律もどういう関係なんだと勘ぐったが、最近では気にもならなかった。
青峰によると、もう桃井の「テツ君」は口癖みたいなもので、逆に言わない方が不自然な域らしい。
かくして3人はパーティに出かけた。
桃井はともかく、どちらかと言えばこもりがちな律と黒子が女装してパーティに行ける。
これはとりもなおさず、平和な証拠だ。
桃井の黄色い声が響き渡る。
黒子も「本当に綺麗です」と、冷静に極めて客観的な感想を述べた。
律は黒子と共に、同じマンションの青峰の部屋にいた。
青峰と火神は、所属チームの遠征で出払っている。
高野はこれから出かける3人のために車で送迎をしてくれることになっており、エントランスで待っている。
この部屋にいるのは、青峰夫人の桃井と3人だけだ。
そして律は今、普段とは違う装いをしていた。
細身のいわゆるマーメイドラインのパーティドレス。
色は瞳の色と合わせた緑色だ。
そしてたっぷりと盛り髪のウィッグも元々の髪色に合わせた茶色。
さらに桃井によって施された、念入りなメイク。
かくしてスーパー美女、律に仕上がっていた。
「やっぱり元が美人だと、仕上がりが違いますね。」
黒子はいつもの通りの淡々とした口調で、そう言った。
実は黒子も、女性に扮している。
先日自書の著者近影撮影用の装いと同じドレスとメイクだ。
これはこれで、元々の黒子からは想像も出来ない美少女仕様だ。
だが元々美人の律と並ぶと、やはり見劣りする感は否めない。
桃井は「テツ君も綺麗だよ~」と言ってくれるが、黒子は信じない。
「姿形を褒められてもなぁ。黒子君の文才の方が、よっぽどすごいし」
律は面白くなさそうに、そう言った。
はっきり言って、天性の美貌を持つ律は「綺麗」という賛辞は聞き飽きている。
そもそも自分の手柄でも何でもないことを褒められても、うれしくないというのが基本スタンスだ。
「それじゃ、行きましょうか。」
黒子はそう告げると、律が頷く。
今日は律が訳した黒子の本の新作が発売される日だった。
2人はその記念イベントに出席する。
黒子が自分の素性を隠して、美少女メイクにしたのに倣って、律も女装することにしたのだった。
いろいろな問題はクリアしたが、やはり顔バレするといろいろと面倒だ。
もちろん何か喋ってしまっては、性別がバレてしまう。
だから黒子は英語が喋れないことにして無言、律の挨拶スピーチは口パクだ。
そしてスピーチ時の律の声を演じる役が、桃井だった。
桃井は黒子の付き人というポジションで会場入りする。
そのために旧姓と同じ、桃色のドレスを着ていた。
「きっと会場中の男の人たち、律さんとテツ君に惚れちゃうわねぇ」
桃井はウットリとした口調で、そう言った。
黒子が如才なく「桃井さんが一番綺麗ですよ」と答えると、桃井が「テツ君、嬉しい!」と抱き付いた。
律はそれを見ながら、苦笑する。
青峰夫人である桃井は、黒子が初恋の人だと公言して憚らない。
そして何かにつけて「テツ君、大好き」を繰り返すのだ。
最初のうちは律もどういう関係なんだと勘ぐったが、最近では気にもならなかった。
青峰によると、もう桃井の「テツ君」は口癖みたいなもので、逆に言わない方が不自然な域らしい。
かくして3人はパーティに出かけた。
桃井はともかく、どちらかと言えばこもりがちな律と黒子が女装してパーティに行ける。
これはとりもなおさず、平和な証拠だ。
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