第27話「どうしても、やる?」
「何か、悪いなぁ。」
律は恐縮しながら、黒子が淹れた茶をすする。
アメリカにいるとついついコーヒーが増えがちだが、やはり綺麗な緑色の日本茶は美味だった。
律は黒子たちの部屋にいた。
しばらくはここに寝泊まりすることになったのだ。
律たちの部屋より、少しだけ広い部屋。
だが実は黒子たちの部屋と律たちの部屋では、家賃が全然違う。
理由は簡単、このマンションの上層階は特にセキュリティが固いのだ。
エレベーターはある程度の階まではフリーで止まるが、上層階は部屋のキーを差し込まなければ行けない。
元々このマンションの入口はオートロックだし、ガードマンも常駐している。
だが上層階はさらに堅い守りになるというわけだ。
火神も青峰も有名人であるから、渡米のときにこのマンションへの入居を決めた。
他にも上層階には、有名人が多数住んでいる。
高野と律も、本当は上層階に住みたかった。
日本でのいきさつから、追手がかかるかもしれないからだ。
だがとにかく上層階の家賃は高い。
まだこちらで収入の当てもない2人には、余裕がなかった。
そんなわけで、ジムでの事件以降、律は黒子たちの部屋にいることになったのだ。
犯人が誰か、その目的もわからない。
だがとにかく少しでも安全な場所にいるに越したことはない。
「別に気にしないで下さい。」
黒子はいつも通りの無表情で、そう言った。
知らない者なら、不機嫌極まりなく見える素っ気なさ。
だが黒子をある程度知る者なら、これが普段の彼なのだとわかる。
そして黒子と親しい者なら、今の黒子が本当に機嫌が悪いことがわかるのだ。
「気持ちはわかるけど、許してあげれば?」
律はとりなすように、そう言った。
黒子は表情を変えないまま「そうはいきません」と答える。
律は「火神君は黒子君のことを思ってしたんだと思うけど」とさらにフォローした。
そう、黒子は今、火神に対して怒っているのだった。
「そんなことより、事件のことですが」
黒子は怒りの原因には触れないまま、するりと話題を変えた。
律はそんなことなのかとツッコみたくなったが、黙っていた。
はっきり言って、今一番の最大関心事はそれなのだ。
そこが解決する頃には、黒子と火神の喧嘩(?)もおさまっているに違いない。
何しろ何だかんだ言って、傍から見ていてはっきりわかるほど惚れ合っている2人だからだ。
「俺が襲われた事件と、この前の事件って関わりがあると思う?」
「思います。そんな偶然がそうそうあってはたまりませんから。」
「・・・だよね。」
偶然なんて、そうそう重なるわけはない。
つながっていると考える方が、自然なだと黒子は言いたいのだ。
その意見には、律も大いに同意する。
「だけどこのまえのエアロバイクの件は、あまりにも稚拙です。」
黒子はきっぱりと断言した。
それは律も考えたことだ。
マンション内のジムに入れる人間は、限られている。
仕掛けられた時間を逆算すれば、犯人はかなり限定されるはずだ。
「もしも犯人が焦っているなら、誘い出せそうな気もするんですけど」
黒子は何とも思い切ったことを、迷いなく告げた。
律は「それって」と言いながら、嫌な予感に顔をしかめる。
誘い出す作戦はどんなものであれ、エサになるターゲットが必要なのだ。
「どうしても、やる?」
律がそう聞くと、黒子は「はい」と頷いた。
その表情には、まったく迷いがない。
律は火神の心中を思いやり、思わずため息をついていた。
律は恐縮しながら、黒子が淹れた茶をすする。
アメリカにいるとついついコーヒーが増えがちだが、やはり綺麗な緑色の日本茶は美味だった。
律は黒子たちの部屋にいた。
しばらくはここに寝泊まりすることになったのだ。
律たちの部屋より、少しだけ広い部屋。
だが実は黒子たちの部屋と律たちの部屋では、家賃が全然違う。
理由は簡単、このマンションの上層階は特にセキュリティが固いのだ。
エレベーターはある程度の階まではフリーで止まるが、上層階は部屋のキーを差し込まなければ行けない。
元々このマンションの入口はオートロックだし、ガードマンも常駐している。
だが上層階はさらに堅い守りになるというわけだ。
火神も青峰も有名人であるから、渡米のときにこのマンションへの入居を決めた。
他にも上層階には、有名人が多数住んでいる。
高野と律も、本当は上層階に住みたかった。
日本でのいきさつから、追手がかかるかもしれないからだ。
だがとにかく上層階の家賃は高い。
まだこちらで収入の当てもない2人には、余裕がなかった。
そんなわけで、ジムでの事件以降、律は黒子たちの部屋にいることになったのだ。
犯人が誰か、その目的もわからない。
だがとにかく少しでも安全な場所にいるに越したことはない。
「別に気にしないで下さい。」
黒子はいつも通りの無表情で、そう言った。
知らない者なら、不機嫌極まりなく見える素っ気なさ。
だが黒子をある程度知る者なら、これが普段の彼なのだとわかる。
そして黒子と親しい者なら、今の黒子が本当に機嫌が悪いことがわかるのだ。
「気持ちはわかるけど、許してあげれば?」
律はとりなすように、そう言った。
黒子は表情を変えないまま「そうはいきません」と答える。
律は「火神君は黒子君のことを思ってしたんだと思うけど」とさらにフォローした。
そう、黒子は今、火神に対して怒っているのだった。
「そんなことより、事件のことですが」
黒子は怒りの原因には触れないまま、するりと話題を変えた。
律はそんなことなのかとツッコみたくなったが、黙っていた。
はっきり言って、今一番の最大関心事はそれなのだ。
そこが解決する頃には、黒子と火神の喧嘩(?)もおさまっているに違いない。
何しろ何だかんだ言って、傍から見ていてはっきりわかるほど惚れ合っている2人だからだ。
「俺が襲われた事件と、この前の事件って関わりがあると思う?」
「思います。そんな偶然がそうそうあってはたまりませんから。」
「・・・だよね。」
偶然なんて、そうそう重なるわけはない。
つながっていると考える方が、自然なだと黒子は言いたいのだ。
その意見には、律も大いに同意する。
「だけどこのまえのエアロバイクの件は、あまりにも稚拙です。」
黒子はきっぱりと断言した。
それは律も考えたことだ。
マンション内のジムに入れる人間は、限られている。
仕掛けられた時間を逆算すれば、犯人はかなり限定されるはずだ。
「もしも犯人が焦っているなら、誘い出せそうな気もするんですけど」
黒子は何とも思い切ったことを、迷いなく告げた。
律は「それって」と言いながら、嫌な予感に顔をしかめる。
誘い出す作戦はどんなものであれ、エサになるターゲットが必要なのだ。
「どうしても、やる?」
律がそう聞くと、黒子は「はい」と頷いた。
その表情には、まったく迷いがない。
律は火神の心中を思いやり、思わずため息をついていた。
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