私がオノレでも、オノリーヌでも。

オノリーヌ・ドーヴェルニュ=リーバーマン。三十代に入った女医である。名門の末娘として生まれた。きょうだいは姉妹ばかりで、両親は本当は男児が欲しかったのを知っている。
オノレ。それはオノリーヌの男性形である。彼女はもし自分が男だったらどうだったろう、と思うことが昔から少なくない。
幸せなお嬢さんとして育つだけの環境はあったけれど、そういう気質ではなかった。
そんな彼女も結婚だけはしている。でもそれは、男性同性愛者の幼馴染・エルネストとの奇妙な友情結婚。
パリを流れるセーヌ川の中州サン=ルイ島にある夫婦の家に、今日は可愛いオノリーヌの甥っ子・イヴ=ガブリエル和泉が遊びに来た。

続きを読む

閉じる

スキ
スキ