第10話
名前変換
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「千寿郎くん?失礼します」
床にお盆を置き、すっと襖を空けると千寿郎くんは肘をついて起き上がった。
「はぁ…、美音さん今日は、ありがとうございました…」
力なく息を吐き、お礼を告げる千寿郎くんの横に座り頭を優しく撫でる。
「いいんだよ、そんなこと気にしないで。おかゆ食べられそう?少しでいいから食べてお薬飲んじゃおうか」
コクリと小さく頷いた千寿郎くんの背中を支えて起き上がらせる。
そして、やけどしない程度に温めてきたおかゆを蓮華にのせて千寿郎くんの口元へ運ぶ。
「あ、あの…自分で食べます…っ」
「はい、あーんする!力あまり入らないでしょう?」
恥ずかしいのかもじもじとしていたが、ぎゅっと目を閉じて口を空けておかゆを食べる。
ちょっとお節介だったかな。でも起き上がるのも大変そうだったし…。
すると、千寿郎くんの瞳からポロリと一粒の涙が。
「…っ、」
「ごめんね千寿郎くん…!そんなにあーん嫌だった…?」
「!!……いぃぇ…違うんです…。僕が小さい頃に母を亡くしたので…、母をあまり覚えてなくて」
「母がいたら、こんな感じなのかな、と。兄上も僕が風邪を引いたら、ずっと手を握ってくれてとても安心するんです。」
「でも、兄上も夜は仕事があるので迷惑はかけたくなくて…」
だから、
「いま、美音さんが…っ、こうしていてくれて、ご飯食べさせて頂いて……嬉しいんです…っ」
ボロボロと拭っても拭っても、あふれてくる涙。
熱のせいでもあるのだろうけれど。
迷惑かけまいと、寂しさを必死に押し殺していた
いつだって1人で。
風邪を引いたときも、兄が不在の時も、不安で。
おかゆをお盆の上に戻し、腰を上げてそっと千寿郎くんの頭を引き寄せて優しく抱き締める。
「大丈夫。これから千寿郎くんが不安な時は私が一緒にいるよ」
お母様の代わりにはなれないけど、
少しでも千寿郎くんの心が休まればいいな。
「っは、は…ぅえぇ……っ」
すがり付くように私の背に手をまわして抱きつく千寿郎くん。
寂しいよね
私も、子供たちにこんな気持ちにさせてしまってるのかな…
ごめんなさい
でも夫は、ちゃんと私の分も子供たちを愛して育ててくれているはずだ。
置いていってしまった身だからこそ思う。
私が過ごせなかった時間を、
子供たちに愛を、