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※はちゃめちゃギャグです。
ここまでのあらすじ:
庭のベンチで耳かきをしながらイチャついているエダさんとエミール君を見かけた私は、適当に耳かきをしてくれそうな人物を探すことにした。
するとそんな適当な人物は案外簡単に見つかったのだった。
「ガンジく~ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、素振りをしていたガンジ君は汗を拭いながらこちらにくるりと振り返った。
「…【名前】か。どうした?」
側にやって来た私に首を傾げつつそう言うガンジ君。この人、かっこいいけれどどこかかわいくてちょっと天然。だからごり押しすれば耳かきしてもらえるかも……なんてことを考えた私は心の中で悪い顔を浮かべてみる。だけど対して表面上では、ふんわり握った拳を顎に当てながら体をくねくねとくねらせるという典型的なぶりっ子ポーズをしておいた。
「耳掃除、してほしいなぁ~…な~んて♡」
渾身のぶりっ子ポーズに続き猫なで声でそう言った私は、上目遣いをしながら持っていた耳かきを見せてみる。これはキマッたはずだ、参ったか!? なんて考えながらちらりとガンジ君を見てみると……、なぜかガンジ君ったらきょとんとしてるんですけど。
「…何だ?」
何だ、じゃねーよ。今説明したやろがい。
思わず口からそんな言葉が出そうになったものの、私はちゃんと堪える。
「だからね~、耳かきをしてほしくってぇ~」
「どうしてだ?」
「されたいから♡」
「……今か?」
「うん♡」
渾身のぶりっ子を継続させたまま頑なに耳かきをされたいということを主張し続けていると、次第にガンジ君は困っているような照れているような顔をしながら頭をポリポリと掻いている。そんなガンジ君の様子を見た私がちょっとかわいいななんて呑気に考えている内にガンジ君は観念したらしい。その困った照れ顔のままその場で胡坐をかくと、しばらくしてから私をじっと見据えてきた。
「何をしてる。早く来い。」
よっしゃー!ゴリ押し作戦大成功ッ!!
そう思って思わず心の中で小躍りをしつつガンジ君の元へ行く。そして組まれた足に頭を置いて横になると、「はい♡よろしく♡」なんて言いながらガンジ君に耳かきを渡した。相変わらず照れたような顔をしているガンジ君はそれを受け取ると、早速耳かきを始めてくれた。
念願のリア充的行動をできたという喜びとは裏腹に、正直に言おう。すっごく気持ちがい……くはない。人に耳かきをしてあげたことがないのかただ単に怖いだけなのかもしかしあたらその両方なのか、ガンジ君は耳のほんの入り口しかかきかきしてくれない。これじゃくすぐったいだけで思わず「ふっ」とか「んっ」とか変な声が出る。
「ガンジく~ん、もうちょっと奥まで来ていいよ?」
このまんまじゃなんかいかんと思った私はそう声をかけてみる。するとなぜだかガンジ君の動きがぴたりと止まってしまった。これに思わず疑問符が浮かんだ私がガンジ君の顔を見上げてみると……、どういうわけだかガンジ君の顔はほんのりと赤くなっていた。
「ん? どしたのガンジ君?」
「……今日はもう終わりだ。」
「ええ~? なんで~? もっとしようよ~!」
「そういう言い方はやめてくれ。」
この後もこのおいしいリア充体験を早々に手放してなるものかと散々ごねてみたものの、ガンジ君が頑なに終わりだと言い続けたためにこの日のリア充体験は残念ながら終了となった。だけど消化不良の私は、後日も「続きをお願い♡」とめいいっぱいのぶりっ子込みでお願いしたにも関わらず、ガンジ君は顔をほんのり赤らめながら断固拒否。なんでやねん。
「ナワーブさ〜ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、木陰で気持ちよく寝ていたらしいナワーブさんはフードを軽く上げてこちらを見た。だから私はとびきりの笑顔で手を振りながら近付いていった……
というのにっ!
ナワーブさんは上げたはずのフードを深く被りなおすとまた寝始めたんですけどっ!!
「なんでやねんッ!!?」
「うるせーよ!」
ナワーブさんの元へやって来るなりナワーブさんのフードをガバリと捲り上げてそう叫んでみたところ、当のナワーブさんは額にうっすら青筋を浮かべながらこう答えてきた。女の子に「うるせー」なんて失礼だな、そんなことを思ったけれど私はめげない。だって耳かきしてもらいたいもん。
「ところでさ、突然なんだけど耳かきして?」
「……本当に突然だな。」
「だってぇ!してもらいたいんだも~ん♡」
ナワーブさんはなんだか今度は事情を掴めないといわんばかりに呆れたような薄ら笑みを浮かべているけれど、やっぱりめげない私はナワーブさんの太ももにドスンと頭を下ろして寝転んだ。
ふふふ…、わかってるんだよナワーブさん。あなたは目つきが悪い癖にいい人だ。だからこうやって半ば強引に甘えてしまえばため息を吐きつつも付き合ってくれるんでしょ。そんなことを考えながら心の中でニヤリとほくそ笑んだ私はナワーブさんに耳かきを渡してみる。すると案の定ナワーブさんは、はあ、とため息を吐くと「ちょっとだけだからな」と言いながら耳かきを受け取ってくれた。
そんなナワーブさんだけど、耳かきがすごく上手だった。もしかして誰かにやってあげたことがあるんだろうか。ナワーブさんが荘園 に来るまでの家族構成とか交友関係とかは聞いたことないけれど、どこかお兄ちゃんっぽさあるもんなぁ。兄弟とかの世話でやってあげてたり?
そんなことを考えながらもあまりの心地よさに体をブルルルルと震わせる。
「うぅ~ん、そこそこ!めっちゃ気持ちええのぉ~」
「やめろ。おっさんかお前は。」
「いやあ、こんなに上手に耳かきしてくれるんなら最初に見つけたのがナワーブさんでよかった。」
あまりの気持ちよさにポロリと本音をこぼしたその時、なぜかナワーブさんの動きがぴたりと止まる。これに「ん? どしたの?」と言いながら体勢を変えてナワーブさんの顔を見上げてみると、ナワーブさんはなんだか怪訝な顔というか何か言いたげな顔をしていた。
「いや、お前……、『最初に見つけた』って何だ?」
「いやあ、エダさんとエミール君がね、耳かきしながらイチャついてたんよ。めっちゃうらやましいじゃん? だから私も誰かに耳かきされながらイチャつきたくて。で、最初に見つけたのがたまたまナワーブさんだったわけよ。」
「…じゃあ、他の奴に会ったらそいつに耳かき頼んでたのかよ?」
「うん、そだよ?」
なんでこんな質問するんだ、そう思った私が頭の上に疑問符を浮かべながらそう答えた次の瞬間、ナワーブさんはその怪訝な表情のまま持っていた耳かきをパキリと折る。これに「あ!」と声を漏らしたのも束の間、なんだかナワーブさんが禍々しいオーラを放ち始めたような……?
「……ナ…、ナワーブさん…? なんか怒ってはります?」
「全然。」
「いや!絶対なんか怒ってんじゃん!いや、顔怖!顔すんごく怖くなってきてる!」
段々とそれはもう恐ろし気な顔になっていくナワーブさんを目の当たりにして身の危険を感じた私はその場から逃げ出すことにした。
……だけども!なぜか逃げる私の後ろから汚い緑色が猛追してくる…ッ!!いやああああああああああああッッッ!!!!!
「イライく~ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、ベンチに座ってるイライ君はにこやかにこちらへと振り返る。
「やあ【名前】さん、今日はいい天気ですね。どうかしましたか?」
「うん♡ 耳かきして♡」
いやあ、最初に見つけたのがイライ君とはラッキーだ。だってイライ君は何を隠そう超絶いい人だ。だから変な小細工なんて必要ない。だから直球勝負で十分なのだ!!
「ええ? 困ったなぁ。でもまあ、私でよければ。」
すると案の定OKしてくれたイライ君は自身の太ももにどうぞと誘ってくれる。だから私は「わーい!」なんて子供じみた喜びの声を出すと、遠慮なく膝枕してもらった。
次いで図々しく耳かきを渡すと、それを受け取ったイライ君はいつもしている目隠しに手をかける。その時私はあることに気が付いた。……そう、実はイライ君の素顔を初めて見るかもしれないということだ。果たしてイライ君はどんな顔をしているのか──、そう思ってワクワクしている中、当のイライ君は何の躊躇もなく目隠しをするりと取………──
「イケメンやないかいッ!!!」
想像していた感じの目とは違うとはいえ、精悍な目をしているイケメンが目の前に現れてびっくりした私は思わず飛び上がりながら叫んでしまった。……まあ、それ以上にイライ君がびっくりしてるわけだけど。いや、でもやっぱり私の方がびっくりした!
「目の色キレイ!ってか意外とキリッとした目してる!」
「え……、えっと【名前】さん……?」
「優しい雰囲気なのに目がキリッとしてるっていうこのギャップ最高!!もっとちゃんと見せて!!」
「え、ちょ……っ」
びっくり通り越して興奮してきた私は思わずイライ君の両ほっぺを両手で挟みながらイライ君の透き通るような綺麗な瞳をマジマジと見る。なんでこんなにもキレイな瞳をあの怪しい目隠しで隠してしまってるんだろう? ホントに勿体ない!
そう思いながら変わらずイライ君のキレイな瞳をガン見し続けていたところ、顔の真ん前にあるイライ君の顔が見る見るうちに赤くなっていく。ここでようやく私は気付いた。
………近くね?
いや……、興奮したあまりイライ君の太ももの上にケツ乗っけてしまってるし、イライ君との顔の距離もうキスする直前じゃんぐらい近いし……、これ見られたら恥ずかしくね???
とまあこういうことを考えたから、これがまんまとフラグになったらしい。背後からするガシャーンという物音、振り向いた先に居る真っ赤にした顔を手で覆ってるエマちゃんの姿……──
「キャーーーー!!ごめんなさいなのッ!!」
そう言うと猛スピードで駆け出して行っちゃったエマちゃん……。
「フラグ、回収されちゃったね♡」
「そんなことよりもッ!!早く誤解を解きに行きましょうッッッ!!」
「イソップく~ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、ビクっと肩を震わせたイソップ君は振り返るなり「ゲッ」というような顔をした。そしてあろうことかその場からすんごいスピードで駆け出した。
……
……
………って!!
させるかアアァァァッ!!!
奴は私がリア充体験をするのにちょうどいい人材だ!逃がしてはならぬ!
そんなわけでイソップ君を猛追することにした。
「なんで逃げんのイソップ君ンンンンンッッ!!?」
「生者が苦手だからです!嫌な予感がするからです!何より追いかけてくるからです!!」
「ノートンさ~ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、前を歩いていたノートンさんは無表情のままくるりと振り返ってきた。
「…何?」
声をかけた人物はこの私だと気付いたノートンさんは体ごとこちらに向ける。そんなノートンさんを見て改めて顔がいいなんて思った。……つまりはだよ? この男とは私がリア充体験するのはもってこいの人材じゃあないか!
そう思った私は心の中で悪い顔をしながらガッツポーズをする。でもそんなのは微塵も表に出さないで恥ずかし気に目をそらすと、もじもじしながら耳かきを顔の横に軽く掲げてみた。
「耳かきしてほしいなぁ~…な~んて♡」
そう言いながらそらしていた目をゆっくりと上目遣いに変えていく。
そういやいつかマルガリータさんが言っていた。「上目遣いにキュンとしない男はいないのよ」なんて。どこか哀愁漂うマルガリータさんを思い出しながら上目遣いでノートンさんを見据えたその瞬間、私の目に飛び込んできたのはスンと何事にも動じていない真顔をしたノートンさんの顔だった。
「なんでやねんッ!!!」
思わず体全体を震わせながら私はそう叫ぶ。だって!たぶん!今の私最っっっっっ高にかわいかったはずだよ!? なのになんでこの男こんなにもスンッとしてんのッ!? バグか!?何を言われても真顔のままのバグにでもなったか!?
「……何で?」
「はいぃ!?」
「なんで僕が【名前】さんの耳かきをしなきゃいけないの? しかも無償で?」
違ったアアアアアア!! バグでもなんでもない!この人はそういう人だったああああッ!!!
【あの人に耳かきしてもらう話(バ・傭・占・納・探) fin.】
----------
納と探はすっかりギャグになりました。
(あとがき ⇒ 「【リクエストあとがき】あの人に耳かきしてもらう話(バ・傭・占・納・探)」)
ここまでのあらすじ:
庭のベンチで耳かきをしながらイチャついているエダさんとエミール君を見かけた私は、適当に耳かきをしてくれそうな人物を探すことにした。
するとそんな適当な人物は案外簡単に見つかったのだった。
「ガンジく~ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、素振りをしていたガンジ君は汗を拭いながらこちらにくるりと振り返った。
「…【名前】か。どうした?」
側にやって来た私に首を傾げつつそう言うガンジ君。この人、かっこいいけれどどこかかわいくてちょっと天然。だからごり押しすれば耳かきしてもらえるかも……なんてことを考えた私は心の中で悪い顔を浮かべてみる。だけど対して表面上では、ふんわり握った拳を顎に当てながら体をくねくねとくねらせるという典型的なぶりっ子ポーズをしておいた。
「耳掃除、してほしいなぁ~…な~んて♡」
渾身のぶりっ子ポーズに続き猫なで声でそう言った私は、上目遣いをしながら持っていた耳かきを見せてみる。これはキマッたはずだ、参ったか!? なんて考えながらちらりとガンジ君を見てみると……、なぜかガンジ君ったらきょとんとしてるんですけど。
「…何だ?」
何だ、じゃねーよ。今説明したやろがい。
思わず口からそんな言葉が出そうになったものの、私はちゃんと堪える。
「だからね~、耳かきをしてほしくってぇ~」
「どうしてだ?」
「されたいから♡」
「……今か?」
「うん♡」
渾身のぶりっ子を継続させたまま頑なに耳かきをされたいということを主張し続けていると、次第にガンジ君は困っているような照れているような顔をしながら頭をポリポリと掻いている。そんなガンジ君の様子を見た私がちょっとかわいいななんて呑気に考えている内にガンジ君は観念したらしい。その困った照れ顔のままその場で胡坐をかくと、しばらくしてから私をじっと見据えてきた。
「何をしてる。早く来い。」
よっしゃー!ゴリ押し作戦大成功ッ!!
そう思って思わず心の中で小躍りをしつつガンジ君の元へ行く。そして組まれた足に頭を置いて横になると、「はい♡よろしく♡」なんて言いながらガンジ君に耳かきを渡した。相変わらず照れたような顔をしているガンジ君はそれを受け取ると、早速耳かきを始めてくれた。
念願のリア充的行動をできたという喜びとは裏腹に、正直に言おう。すっごく気持ちがい……くはない。人に耳かきをしてあげたことがないのかただ単に怖いだけなのかもしかしあたらその両方なのか、ガンジ君は耳のほんの入り口しかかきかきしてくれない。これじゃくすぐったいだけで思わず「ふっ」とか「んっ」とか変な声が出る。
「ガンジく~ん、もうちょっと奥まで来ていいよ?」
このまんまじゃなんかいかんと思った私はそう声をかけてみる。するとなぜだかガンジ君の動きがぴたりと止まってしまった。これに思わず疑問符が浮かんだ私がガンジ君の顔を見上げてみると……、どういうわけだかガンジ君の顔はほんのりと赤くなっていた。
「ん? どしたのガンジ君?」
「……今日はもう終わりだ。」
「ええ~? なんで~? もっとしようよ~!」
「そういう言い方はやめてくれ。」
この後もこのおいしいリア充体験を早々に手放してなるものかと散々ごねてみたものの、ガンジ君が頑なに終わりだと言い続けたためにこの日のリア充体験は残念ながら終了となった。だけど消化不良の私は、後日も「続きをお願い♡」とめいいっぱいのぶりっ子込みでお願いしたにも関わらず、ガンジ君は顔をほんのり赤らめながら断固拒否。なんでやねん。
そういやあの日、頭の下が温かかったような……──
「ナワーブさ〜ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、木陰で気持ちよく寝ていたらしいナワーブさんはフードを軽く上げてこちらを見た。だから私はとびきりの笑顔で手を振りながら近付いていった……
というのにっ!
ナワーブさんは上げたはずのフードを深く被りなおすとまた寝始めたんですけどっ!!
「なんでやねんッ!!?」
「うるせーよ!」
ナワーブさんの元へやって来るなりナワーブさんのフードをガバリと捲り上げてそう叫んでみたところ、当のナワーブさんは額にうっすら青筋を浮かべながらこう答えてきた。女の子に「うるせー」なんて失礼だな、そんなことを思ったけれど私はめげない。だって耳かきしてもらいたいもん。
「ところでさ、突然なんだけど耳かきして?」
「……本当に突然だな。」
「だってぇ!してもらいたいんだも~ん♡」
ナワーブさんはなんだか今度は事情を掴めないといわんばかりに呆れたような薄ら笑みを浮かべているけれど、やっぱりめげない私はナワーブさんの太ももにドスンと頭を下ろして寝転んだ。
ふふふ…、わかってるんだよナワーブさん。あなたは目つきが悪い癖にいい人だ。だからこうやって半ば強引に甘えてしまえばため息を吐きつつも付き合ってくれるんでしょ。そんなことを考えながら心の中でニヤリとほくそ笑んだ私はナワーブさんに耳かきを渡してみる。すると案の定ナワーブさんは、はあ、とため息を吐くと「ちょっとだけだからな」と言いながら耳かきを受け取ってくれた。
そんなナワーブさんだけど、耳かきがすごく上手だった。もしかして誰かにやってあげたことがあるんだろうか。ナワーブさんが
そんなことを考えながらもあまりの心地よさに体をブルルルルと震わせる。
「うぅ~ん、そこそこ!めっちゃ気持ちええのぉ~」
「やめろ。おっさんかお前は。」
「いやあ、こんなに上手に耳かきしてくれるんなら最初に見つけたのがナワーブさんでよかった。」
あまりの気持ちよさにポロリと本音をこぼしたその時、なぜかナワーブさんの動きがぴたりと止まる。これに「ん? どしたの?」と言いながら体勢を変えてナワーブさんの顔を見上げてみると、ナワーブさんはなんだか怪訝な顔というか何か言いたげな顔をしていた。
「いや、お前……、『最初に見つけた』って何だ?」
「いやあ、エダさんとエミール君がね、耳かきしながらイチャついてたんよ。めっちゃうらやましいじゃん? だから私も誰かに耳かきされながらイチャつきたくて。で、最初に見つけたのがたまたまナワーブさんだったわけよ。」
「…じゃあ、他の奴に会ったらそいつに耳かき頼んでたのかよ?」
「うん、そだよ?」
なんでこんな質問するんだ、そう思った私が頭の上に疑問符を浮かべながらそう答えた次の瞬間、ナワーブさんはその怪訝な表情のまま持っていた耳かきをパキリと折る。これに「あ!」と声を漏らしたのも束の間、なんだかナワーブさんが禍々しいオーラを放ち始めたような……?
「……ナ…、ナワーブさん…? なんか怒ってはります?」
「全然。」
「いや!絶対なんか怒ってんじゃん!いや、顔怖!顔すんごく怖くなってきてる!」
段々とそれはもう恐ろし気な顔になっていくナワーブさんを目の当たりにして身の危険を感じた私はその場から逃げ出すことにした。
……だけども!なぜか逃げる私の後ろから汚い緑色が猛追してくる…ッ!!いやああああああああああああッッッ!!!!!
この後、ナワーブさんは私のことを
当分「尻軽女ならぬ耳軽女」と呼んできた……──
当分「尻軽女ならぬ耳軽女」と呼んできた……──
「イライく~ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、ベンチに座ってるイライ君はにこやかにこちらへと振り返る。
「やあ【名前】さん、今日はいい天気ですね。どうかしましたか?」
「うん♡ 耳かきして♡」
いやあ、最初に見つけたのがイライ君とはラッキーだ。だってイライ君は何を隠そう超絶いい人だ。だから変な小細工なんて必要ない。だから直球勝負で十分なのだ!!
「ええ? 困ったなぁ。でもまあ、私でよければ。」
すると案の定OKしてくれたイライ君は自身の太ももにどうぞと誘ってくれる。だから私は「わーい!」なんて子供じみた喜びの声を出すと、遠慮なく膝枕してもらった。
次いで図々しく耳かきを渡すと、それを受け取ったイライ君はいつもしている目隠しに手をかける。その時私はあることに気が付いた。……そう、実はイライ君の素顔を初めて見るかもしれないということだ。果たしてイライ君はどんな顔をしているのか──、そう思ってワクワクしている中、当のイライ君は何の躊躇もなく目隠しをするりと取………──
「イケメンやないかいッ!!!」
想像していた感じの目とは違うとはいえ、精悍な目をしているイケメンが目の前に現れてびっくりした私は思わず飛び上がりながら叫んでしまった。……まあ、それ以上にイライ君がびっくりしてるわけだけど。いや、でもやっぱり私の方がびっくりした!
「目の色キレイ!ってか意外とキリッとした目してる!」
「え……、えっと【名前】さん……?」
「優しい雰囲気なのに目がキリッとしてるっていうこのギャップ最高!!もっとちゃんと見せて!!」
「え、ちょ……っ」
びっくり通り越して興奮してきた私は思わずイライ君の両ほっぺを両手で挟みながらイライ君の透き通るような綺麗な瞳をマジマジと見る。なんでこんなにもキレイな瞳をあの怪しい目隠しで隠してしまってるんだろう? ホントに勿体ない!
そう思いながら変わらずイライ君のキレイな瞳をガン見し続けていたところ、顔の真ん前にあるイライ君の顔が見る見るうちに赤くなっていく。ここでようやく私は気付いた。
………近くね?
いや……、興奮したあまりイライ君の太ももの上にケツ乗っけてしまってるし、イライ君との顔の距離もうキスする直前じゃんぐらい近いし……、これ見られたら恥ずかしくね???
とまあこういうことを考えたから、これがまんまとフラグになったらしい。背後からするガシャーンという物音、振り向いた先に居る真っ赤にした顔を手で覆ってるエマちゃんの姿……──
「キャーーーー!!ごめんなさいなのッ!!」
そう言うと猛スピードで駆け出して行っちゃったエマちゃん……。
「フラグ、回収されちゃったね♡」
「そんなことよりもッ!!早く誤解を解きに行きましょうッッッ!!」
この後、私とイライ君の噂は
猛スピードで広まった……──♡
猛スピードで広まった……──♡
「イソップく~ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、ビクっと肩を震わせたイソップ君は振り返るなり「ゲッ」というような顔をした。そしてあろうことかその場からすんごいスピードで駆け出した。
……
……
………って!!
させるかアアァァァッ!!!
奴は私がリア充体験をするのにちょうどいい人材だ!逃がしてはならぬ!
そんなわけでイソップ君を猛追することにした。
「なんで逃げんのイソップ君ンンンンンッッ!!?」
「生者が苦手だからです!嫌な予感がするからです!何より追いかけてくるからです!!」
この後私は180秒牽制された……──
「ノートンさ~ん♡」
耳かき片手にとびきりの笑顔でそう名前を呼ぶと、前を歩いていたノートンさんは無表情のままくるりと振り返ってきた。
「…何?」
声をかけた人物はこの私だと気付いたノートンさんは体ごとこちらに向ける。そんなノートンさんを見て改めて顔がいいなんて思った。……つまりはだよ? この男とは私がリア充体験するのはもってこいの人材じゃあないか!
そう思った私は心の中で悪い顔をしながらガッツポーズをする。でもそんなのは微塵も表に出さないで恥ずかし気に目をそらすと、もじもじしながら耳かきを顔の横に軽く掲げてみた。
「耳かきしてほしいなぁ~…な~んて♡」
そう言いながらそらしていた目をゆっくりと上目遣いに変えていく。
そういやいつかマルガリータさんが言っていた。「上目遣いにキュンとしない男はいないのよ」なんて。どこか哀愁漂うマルガリータさんを思い出しながら上目遣いでノートンさんを見据えたその瞬間、私の目に飛び込んできたのはスンと何事にも動じていない真顔をしたノートンさんの顔だった。
「なんでやねんッ!!!」
思わず体全体を震わせながら私はそう叫ぶ。だって!たぶん!今の私最っっっっっ高にかわいかったはずだよ!? なのになんでこの男こんなにもスンッとしてんのッ!? バグか!?何を言われても真顔のままのバグにでもなったか!?
「……何で?」
「はいぃ!?」
「なんで僕が【名前】さんの耳かきをしなきゃいけないの? しかも無償で?」
違ったアアアアアア!! バグでもなんでもない!この人はそういう人だったああああッ!!!
それでもリア充体験したくて
泣く泣く1万渡したところ、
そういうサービスの人かってぐらい
ノリノリで耳かきしてくれた……──
泣く泣く1万渡したところ、
そういうサービスの人かってぐらい
ノリノリで耳かきしてくれた……──
【あの人に耳かきしてもらう話(バ・傭・占・納・探) fin.】
----------
納と探はすっかりギャグになりました。
(あとがき ⇒ 「【リクエストあとがき】あの人に耳かきしてもらう話(バ・傭・占・納・探)」)