平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ8(仮)
止血の為にしばらく平子さんと近距離を余儀なくされるという状況を、約一時間半で脱してから私は探し物をしていた。
救急箱と古いスマホだ。
昨日はテンパりすぎて救急箱の存在を忘れていたが、一人暮らしを開始した直後に薬局で色々買い集めて詰め込んでいたはず。
そしてスマホはWiFiにさえ繋げば、主に家にいてもらう平子さんと連絡が取れると思ってのことだった。
押し入れの手前の物を出して探しているため、部屋は徐々に足の踏み場が無くなってきている。
「あんまし無理したらまた血ィ出るでェ……」
「もう流石に見つかるはずなので……!」
その言葉通り、古いスマホが奥に置いた棚から出てきた。
「あとはこの上に救急箱があるので……」
カットバンだけでは心許ない指先と平子さんの傷の布を包帯に変えるためだ。
押し入れの中に登って目一杯手を伸ばす。
「うーーーおーーー……」
妙な唸り声を上げながら救急箱を下ろし、平子さんの前で中身を確認する。
今度からもっと取りやすい場所に置こうと決意した。
「ほら! 包帯ありました! ガーゼも買ってあるし、ちゃんと一通り買ってて良かったです」
記憶の通りの中身でホクホク顔の私に、少々呆れた顔をする平子さん。
そのお顔も素敵です。
「早速ガーゼして包帯巻きましょー!」
まず自分の指をサクッと終わらせようとカットバンを外して消毒したガーゼを当てて何度か包帯を巻いた。しかし結ぶのが上手くいかない。
「貸し」
サッと平子さんの手が伸びてきてあっという間に包帯が綺麗に結ばれた。
さっきといい今といい、この御方面倒見が良すぎないか。隊長様だからか。流石すぎる。
「あ、ありがとうございます」
心の中で推しの懐の深さ的なものに圧倒されながら次は平子さんの傷の為の包帯とガーゼを出していく。
その横で次の行動を察した平子さんがTシャツを脱ぎ始めた。
思い切り前から直視してしまい目のやり場に困る。
止血用に巻いていた羽織を割いた布もくるくると外して最早ただの上裸だった。
鼻血を噴かなかったことを誰か褒めてほしい。
「血はある程度止まってますね……」
再び消毒したガーゼの登場です。お子様にも優しい滲みにくい消毒液さん、こいつも名前の割に大変滲みます。痛かったです。
「滲みるので我慢してくださいね」
「ッつーーーーーなンやねんコレ! 入れ物には滲みにくいて書いてるやん! 嘘ッぱちやろ!!!」
そうなんですそうなんです。
私は心から深く頷いた。
何だか先程までのドキドキとした胸の高鳴りが嘘のように、消毒液に毒づく可愛さへの高鳴りに変わっています。
知ってたけど可愛いなこの御方。
ある意味で落ち着きを取り戻した私は平子さんに包帯を巻いていく。巻き慣れてはいないので所々平子さんからアドバイスを貰いながら何とか巻き終わり、平子さんに服を着直してもらい、ホッと一息。
したのも束の間、出しまくった押し入れの物を戻してスマホの設定もしなければ。
「なァ、一旦茶ァでも飲もうや」
私の視線の先を見てまたも行動を察した平子さんが休憩を勧めてくれる。
確かに、一旦休む方が良い気がする。
「そうですね、そうします」
「あー、茶ァくらい淹れてくるからええで」
立ち上がろうとした私を静止して平子さんが立ち上った。
「でも隊長様にそんな……」
「……もう隊長やないからエエねん」
私のオタク思考の軽口に食い気味にそう言った平子さんは、悲しいような怒っているようなそんな様子で私は何も言えなくなってしまった。
