平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ6(仮)
翌朝早朝にアラームで目覚めた。
平子さんを起こさないように素早く止める。ろくに寝ていないので至極眠いが、こっそりと布団を出た。多分眠ったのは四時を回っていたはずだ。
昨夜は平子さんとポツポツ他愛のない会話をしつつ、気付いたら眠っていた。
平子さんは電子レンジやシャワー、トイレ、ドライヤー等に興味を持っていてそれらについて軽い質問をされたのは覚えている。
ぽつぽつと寝起きの頭で記憶を整理しながら静かに廊下に出て、職場の番号に電話をかける。こんな早朝だというのにコール二度目で繋がった。
「すみません、昏水ですが本日から二十……いや十日程有給を頂きたくて……はいあの理由は旅行にでもしていただけますか? はい。はい、よろしくお願いします」
出たのが上司でなくて良かった。上司であればこんなにスムーズに電話が終わらなかっただろう。
書類は有給明けに出せば良いのでこれで今日から少しの間出社しなくて良い。自分のためには有給を使えないくせに推しのためならなんのそのである。
ついでに台所でお茶を入れて戻って来ると、平子さんはまだ眠っていた。余程疲れているのだ。
そっとベッドサイドのローテーブルに近付いてお茶を置き、平子さんの方を盗み見る。
何度見ても綺麗な顔だ。肌はキメが細かく、滑らかという表現がしっくりくるし、思いのほか睫毛も長い。カーテンの隙間から僅かに入る光が、髪と睫毛にキラキラと反射していて幻想的だ。
なんて、烏滸がましくも寝顔を観察しつつ、微かにすうすうと聞こえる寝息に耳を澄ませているとなんとも言えない幸福感に満たされた。その場で合掌したい。
というかした。
大変有難い。
「!?」
眠る平子さんのあまりの神々しさに合掌しているとマナーモードのスマホが突然振動した。画面を見ると職場から。
慌てて廊下に戻り通話ボタンを押す。
「はい! 昏水です!」
電話の相手は上司で、有給は連続五日を限度として使ってくれとのことだった。どうしても有給をたくさん使いたいなら他の人との休みの兼ね合いもあるから五日休んだらまた数日出勤してから使ってくれと。
終話ボタンを押してから台所にへたり込んだ。
「……今時、五日が限度なんて知らねぇよぅ……」
せっかく夢のような現象に遭遇しているのにやっぱり現実は現実だと思い知ったからである。社畜は社畜なのだった。
