平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ47(仮)
なんやねんコイツ。
俺ンことなんやと思てんねん。
と、思たけど、そうか、実際俺そういう行動しとるやんけ。
「ハア……」
堪らず頭を抱えた。
俺が悪いんやから俺が頭を抱える話とちゃうんやけど。俺が俺に呆れとる。
……どないしょ。
「……俺が悪かった。ホンマにすまん」
どないしょもなんも、謝る他無い。
兎に角、俺が悪い。
堪え性の無い過去の自分に嫌気がさす。
「えっと、何をそんなに謝ってらっしゃるんですか……?」
気ィ付いてへんのんかい!
つまらんツッコミ入れたなるけどそりゃそうか。結局は全ては俺の過去の行いや。
そこでふと自分が紫雨を抱き締めたまんまなことに気付いた。こんなん流石に不誠実が過ぎる。
そっと身体を離し、座椅子やのうて床に座り直す。
「気持ちに気付くんが遅れたこと、気持ちを伝える前に手ェ出したこと、ホンマにすまんかった」
床に着くだけ頭を下げる。
下げたからっちゅーて許してもらえるもんとちゃうけど、やっぱり謝らんと気ィはすまん。これはもう自己満足や。
「あ……はい……」
「許せんやろうとは思とる。何でも言うてくれ」
「と、言われましても……」
紫雨は戸惑うように俯いて目線を彷徨わせた。
「罵倒したってええ、なんなら殴ったってええ」
「そ、そんな……頭下げないでください。痛いでしょう」
「こんくらいなんでもあらへん」
なんならもうこのまんま床にメリ込みたいくらいや。そんくらい自分の行いが恥ずかしい。
「あの……私のこと好きって、そういうことしたいからなのでは……?」
一コマ目に戻る。
自業自得なんやけど俺の信用、地に落ちとんな。
「考え無しに手ェ出したんは俺が全面的に悪い。しゃーけど、紫雨ンこと好きなんはホンマやねん……」
「え、ええ……?」
とても信じられないという声が頭上から聞こえる。
「平子さんが、私を、好き?」
「好きや」
「牛丼屋ではなく?」
「それはすき家。……そうやなくて、好きや」
「……え……と……そりゃ、許せないと言えば許せないです。平子さん、私が平子さんのこと好きなの分かってましたよね?」
紫雨の声はだいぶ苦々しげだ。
俺が弱味に付け込んだんやから当然の怒りやと思う。
「分かっとった」
潔く答える以外に道は無かった。
紫雨が大きく息を吐くのが聞こえた。
「どうしてこうなったのか理由って聞いていいですか?」
「俺が気持ちに気付くん遅れたんがそもそもやけど、気付いてからも紫雨と生きる世界も歳もなんもかんもちゃうんが分かっとったから気持ちを認めとうなかった。……こんなん言い訳やけど」
「……頭上げてください」
ゆっくりと頭を上げる。
紫雨は静かに泣いとった。
「私だって、全部違うのくらい分かってたんです。でも、好きで……」
今しがた謝ったばっかやのに、途中から嗚咽混じりに話す紫雨を抱き締めとうてしゃァない。無意識に動きかけた手ェを抑え込む。
「諦めようと、したんです。でも、好きで……」
しゃくりあげ始めた紫雨を見てまた堪え性の無い自分が顔を出す。俺は紫雨ンこととなると何でこうも口より手ェが早いんやろう。もう嫌や。
嫌やけど、じっとはしとれんくて、紫雨の頬を撫でて涙を拭う。その直後、深く息を吐いた紫雨が手ェに擦り寄った。また良うないもんが込み上げてきてグッと堪える。
「……好きです、平子さん」
俺は何を試されてんねやろう。
なんも許されてへんのに、欲が鎌首を擡げてきてどないしよう。下唇を噛み締めるが、どうも堪えるんが厳しい。
「ホンマにすまんかった……」
「はい」
震える唇も涙に濡れた目ェも全部心臓に悪い。
早鐘のように打つ自分の心臓の音が五月蝿い。
互いの想いを確認した今の方がどう触れてええやら分からん。前は「このまんまいつか離れるくらいやったら触れてたい」っちゅー気持ちが勝っとった。今かて状況は同じやけど。なんやろう。恥ずいような、制御がムズいような。
一旦触れたらアカン気ィがする。
ここまで来たらもう大事にしたりたい。
「……とりあえず涙拭き」
ティッシュを二、三枚掴んで渡す。
「ありがとうございます……。でもなんでそんなじわじわ距離取ってるんですか……?」
「……コレには色々と深い事情があんねん」
自分でも気付かん間ァに紫雨と距離を取っとって意味分からん。いや、分かるんやけど。今は近くにおったらアカンねん。
え、どないしょ。今晩も一緒に寝るんか? 無理やろ。
そない思てる俺を他所に紫雨は赤らんだ頬と泣きはらした目ェでこっちを見つめてくる。
なんや俺、もうええ歳やのに何動揺してん。ガキやないねんぞ。
さっきから同じことグルグル考えとって思考がなんも進まん。
「? 手ぐっぱぐっぱしてどうしたんですか? 手とか痒いです?」
「いや、その……」
冷や汗ダラダラ。耐えろ俺。
狼狽えすぎて目ェが泳ぐ。とりあえずデカイ深呼吸をした。
そもそも怪我も治っとらんやつに手ェ出すとかアカンやろ。そうそう俺、落ち着けるやん。いけるいける。
「ホレ、目ェ腫れたら大変や。今冷やすもん持ってくるわ」
俺グッジョブ。
もう鼻歌でも歌い出しそうや。脚も心做しか弾んどる。
耐え切ったで俺。
笑うたらアカンタイミングやけど口角が上がってしゃァない。
「持ってきたで、目ェ閉じ」
最早お馴染みの冷凍ご飯を瞼に当てたりながら心ン中でガッツポーズした。
