平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ42(仮)
また仕事かー。と思いながら支度をする。
だけど前と違って休みは待ち遠しくない。
家に居ても平子さんと、前みたいな気持ちでじゃれたり出来ないから。
次の休みが来るのが怖い。
「昏水さんさー、次の休みオレがこないだメッセージで送ったカフェ行かないー?」
「え? 次の休みって言っても夜笹さん仕事じゃ……」
「その日は夕方からなんだよねー」
ああ、なるほど。昼間はパートさんがたくさんいる日か。それなら確かに昼間は夜笹さん暇だろう。
それにちょうど休みに家にはいたくなかったところだ。これは渡りに船だなと思った。
「良いですよ。何時頃にしますか?」
「オレは朝から全然おっけー!」
「了解です」
夜笹さん元気だな。休みとなると朝起きれるか少し心配だ。
だけど家にいる時間は少しでも短くしたい。
いつも通りに毎日を過ごしてやっと公休。
前の日は多少服選びで夜更かししたが何とか起きれた。それよりも、服選びに平子さんが何も言わなかったのが少し以外だった。
「気ィ付けてな」
「はい、行ってきます」
今までなら「どこ行くんや」とか「何のために服選んどるん?」とか「俺ならこう着る」とか五月蝿かったんじゃないかという気がするけれど、今日はあまりにもするりと送り出された。やっぱりあの日以来、距離感は確実に変わっていっているのだろう。
家を出るとすぐ側の電柱辺りに夜笹さんが立っていた。
「お待たせしました」
「大丈夫ー! 今来たとこー!」
すぐに向けられた笑顔に私は内心ホッとした。
やっぱりこれで正解なのだ。
「とりあえずぶらぶらするー? オレ、久しぶりにゲーセンとか行きたいかもー」
「良いですね! ゲーセンなら色々ありますし」
近所のゲームセンターはなかなか規模が大きく、飽きがこない。長時間一緒に居るとなれば良い選択だろう。しかも家からかなり近いのだ。
ちらりと「平子さんとも行けば良かったかな」なんて考えが過ぎったが見ないふり。無かったことにしよう。
そうこう考えながら話しているうちにあっという間にゲームセンター前。中から楽しげな音や、人の話し声が聞こえてくる。自動ドアをくぐると喧騒は更に鮮明になった。
「久しぶりに来るとちょっと五月蝿く感じるねー!」
店内の音に負けないように夜笹さんが耳元で話す。私も肩を寄せて「そうですね」と返した。
クレーンゲームやらエアホッケーやらレースゲーム、もう店内の全部の筐体を遊び尽くしたんじゃないかという頃に、夜笹さんがプリクラを撮ろうと指差した。
「あまり撮ったことないのでやり方教えてください」
「了解! 簡単だから真似してねー!」
夜笹さんがお金を入れて背景やらを選択している。眺めていると、カメラの位置を示す矢印とポーズの指示が出た。
「このポーズでも良いしー、好きなポーズすればいいんだけど……」
と言いながらまずはオーソドックスなピースサインをするので、私もそれを真似た。笑顔はぎこちなくないだろうか。
「じゃんじゃん行くから着いてきてねー!」
カメラがぱしゃぱしゃと次々写真を撮っていく。
置いていかれないように夜笹さんの真似を続けていると、突然ぎゅっと肩を引き寄せられる。
「ごめんね」
店の喧騒に負けそうなくらい低く、小さく囁かれた。
肩を引き寄せたことだろうか? それにしてはやけに申し訳なさそうに聞こえた。
そんなこんな無事に取り終え、落書きとやらをして、プリントアウト。
ホカホカのプリクラを手に「これってシールなんだ」と思い至る。
「あ、別にそのまま取っておく人も多いよー」
私の顔をみて察したのか夜笹さんが助言をくれた。そのままで良いなら貼る位置を悩まなくて良いなと思った。
「ミルクティー好きなのー?」
「ええ、まあ」
なんてよくある会話をしながら朗らかにカフェでお茶をしている。なんだかリア充みたいだ。
気温も今日はちょうど良いし、風もある。汗をかかないわけではないが比較的過ごしやすい日だと思う。
陽射しに目を細めながらのどかな気分でミルクティーを吸い上げる。
「……あのさー」
「?」
咥えていたストローを離し、居住まいを正した。
次の言葉を待っていると、夜笹さんには珍しく僅かに言い淀んでいる気配がした。ずっと視線が斜め前だ。
「…… 昏水さんさー、オレと付き合わないー?」
思わず椅子ごとひっくり返りそうになった。
