平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ36(仮)
真面目に働き続け五日越し、待ちに待った再び有給を使ってやるぜのターンです。
店長に相談したらあまりにも嫌な顔をされたので、通常のお休みに繋げる形で合計三日の休みになりました。
やったぜ。
「さて、平子さん。姿見買いに行きますか」
「おう」
あら、なんだか今日は平子さんがニコニコな気がしますね。
いつもの様に手早く着替えた平子さんは洗面台の鏡で髪を梳かしている。さり気なく鼻歌なんて歌っちゃって。
その間に私は平子さんから死角になる場所を選んでコソコソ着替えを済ませた。
「次、洗面台使ってもいいですか?」
「ん、もう終わんで」
……何を鏡の前で決めポーズしてんだ? という気持ちと、可愛い! という気持ちがねるねるねるねしてるな。
「あ、てか最近ネットで見てんけど、舌ピアスってお洒落やんなァ」
おっふ。
え、これ私が関わって良い話??
「そ、そうですね」
「俺も開けよかな」
ていうかあなた、私達の間では開けてるのがデフォルトです。
「……イインジャナイデショウカ」
「……なんで棒読みやねん」
呆れ顔の平子さんを見ないようにしながら髪を梳かしてまとめていく。
あんまり干渉し過ぎるのも良くないんじゃないかと思いつつ、平子さんが自ら探し当ててしまった情報なら仕方がないと割り切るしかない。
「今日姿見のついでにニードルとか買うかァ」
ずっと御機嫌なのはそういうことか。
しかし、自分で開けるのは多分、いや結構危険では?
でもこの人なら大丈夫なのかな。
流石に私、保険証偽造出来ないし。
あれ? でも原作でも義骸だから普通の病院かかれないよね。浦原さんが開けたのかな。
「準備済んだか? 忘れモンもないか?」
「はい、ないです」
まあなんにせよ、今日は久しぶりの平子さんと二人のお出かけだ。
「これええんちゃう?」
平子さんが指差したのは黒と橙色の縁の姿見。
え、思い切り自分カラーの物持たせる気ですやん。
可愛いから良いですけど。私の部屋は木目調なんですが。
「平子さんが欲しいならそれにしましょう」
結局平子さんに甘い私。もう嫌。
顔はにっこり、心の中は口がへの字。
そんな私に引き換え、平子さんはもうずっと御機嫌。鼻歌をずっと歌っている。
買うことに決めた姿見を、早くも脇に抱えレジへ持って行こうとする。
「あ、先にピアスの道具買わなくて良いんですが? 今姿見買うと重いですよ?」
「? こんくらいワケないで?」
平子さんはキョトンとした顔で、姿見をひょいひょいと上下に動かす。
心配したけれど平子さんにとっては大したことない重さらしい。確かにもう、最初の頃の傷も小さなものになっているし、男の人だし、言われてみれば大丈夫なのかもしれない。
「じゃあ先に買っちゃいますか」
「今日も
「意外とピアス開ける道具って必要な物多いんですね」
帰宅して、荷物を整理する。
まず食材冷蔵庫。姿見設置。そしてピアスの道具。
「さア、やるでェ」
どうやら平子さんはニードルを刺す役も自分でするらしい。私は舌を押さえる役。
ビニール手袋を装着し、いざ。
"べ"と突き出された舌を握ると、昔した鰻の掴み取りを思い出した。だが、それより温かく、遥かに艶かしい。好きな人の舌というだけでどうにも直視出来ない。
「へーはらふへんよう、ひゃんほひへへはぁ(手ェから抜けんよう、ちゃんと見ててやァ)」
舌を出しているせいで舌足らずに平子さんが話しかけてきた。手の中で舌がぬるぬると動くのがやっぱりいけないことをしている感覚になる。
視線を戻すが、もちろん光景は変わらない。
深呼吸をして気合いを入れ直す。
私の持てる力の全てで舌を押さえる。平子さんは僅かに顔を顰めたが、指で丸を作って大丈夫だと知らせてくれた。そして私の持つ手鏡を覗きながらニードルを刺す場所を決めているようだ。
「!」
一瞬だった。
あっという間に、舌の真ん中にはもう穴が出来ていて平子さんは消毒済みのロングバーベル型のファーストピアスを通していく。
「ほーひはははひ(もう舌離し)」
言われて慌てて離す。
そのまま平子さんはスタスタと洗面台に向かい、うがい薬で口内の消毒をしている。
少しして、涼しい顔でこちらに向かってくると、徐ろに舌を出した。
「どや、えやろ」
見慣れた位置に見慣れないファーストピアス。
分かっていたはずなのに呆気にとられる。
なんとも表現し難い違和感を感じながらも、それでもやっぱり、私の知る平子さんにどんどん近付いていることだけは確かだった。
「よく、お似合いです」
なぜだか胸が騒いだ。
