平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ34(仮)
おはようございます。
出勤三日目の朝です。
なんでまた平子さんに抱き着かれて寝ているのでしょう。
昨夜は抱き寄せられないように毛布でバリケードを張った記憶がある。
その毛布は今や床の上。何者かによって撤去されている。
一人しかいませんがね!!
私が自分で投げ飛ばしたとかじゃなければ、だけど。
一応自分が投げ飛ばした線もあるとして、今回は何も言わずにおくことにした。
静かにベッドを出て朝の支度をする。
いつも通り、続いて平子さんも起きてきて、あっという間に出勤の時間。
「今日も終わったら連絡しーや」
「了解です」
「ほんなら気ィ付けて」
「行ってきます」
最早おなじみとなりつつなある遣り取りを交わして出発。
今日の私は目標が出来た。この夏、ちゃんと望みのありそうな好きな人を作る。
渡りに船とばかりにそろそろ職場の夏の飲み会なのだ。職場の人全てを把握している訳ではないので、もしかしたら良い出会いがあるかもしれない。
平子さんに不毛な期待を向けれるほど、私は夢見がちではないのだ。
「昏水さん、大丈夫?」
天崎さんがタオルを渡しながら、眉を下げて話しかけてくる。
「大丈夫です、アルコール臭いですけど……」
店の終わりに、最後まで残った酔っぱらい集団に退店を促したところ、お酒をかけられてしまったのである。
閉店間際で良かった。
ただし、大ジョッキ一杯分を丸々被ってしまったのでびしょびしょなのだ。
あ、平子さんに終わった連絡もしないと……。
「昏水さん着替えとかないもんね。今日も送って行こうか? またお友達さん来る?」
天崎さんが心配そうに聞いてくれる。その優しい聞き方に、まるで自分が幼稚園児にでもなったような気がする。
なんだかバツの悪い気分になり、タオルでワシワシと頭を拭く。
「あ、まだ肩とかも濡れてるから……」
追加でタオルを肩に掛けてくれる。
「多めに持ってたタオルが役に立って良かったよ。本当は、何か着替えを渡してあげれたら良いんだけど……」
優しさの塊かな、この人は。
タオルは洗って返さねばなるまい。
「着替えなら多分、友達に頼めば持って来てもらえるので。ありがとうございます」
ロッカーからスマホを取り出して手早くメッセージを送る。幸い、平子さんからは直ぐに返事が来た。
「着替え持って来てくれるそうです」
「なら良かった」
心底安心したような顔。
多分、天崎さんみたいな人を好きになれば人生幸せなんだろうな。
平子さんの強引さと無意識に比べてそう思った。
少しして、店の扉が開く音がした。
どうやら平子さんは一人だと歩くのがすごく速いようだ。もしかしてこの世界でも瞬歩が使えるのだろうか。
「僕が受け取って来るね。昏水さんはそこに座ってて」
今の格好では表に出ていくことは憚られるので、天崎さんの言葉に私はコクリと頷いた。
「お友達さん脚速いねぇ、あんまり早いからさっきのお客さんとかだったらどうしようと思ったんだけど」
安堵の表情を浮かべた天崎さんが私の着替えを手にロッカールームに帰ってきた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「じゃあ僕は外に出てるから」
着替えを受け取って天崎さんを見送る。
扉がパタリと閉じてから手早く脱いでいく。身体がお酒でベタベタしていて気持ち悪い。
袋の中を見ると平子さんは無難なTシャツとGパンをチョイスしてくれたようで有難かった。
身体をもう一度しっかり拭いてから、それらを身に着ける。
よし、さっきよりはマシだ。
「お待たせしました」
ロッカールームを出ると平子さんと天崎さんが店の椅子に座って待っていた。
平子さんはやっぱりなんだか不機嫌そう。
「服、それでえかったか?」
「はい、バッチリです。ありがとうございます」
「平子さんいて良かったねぇ」
あれ、いつの間に名乗ったんだろう。
あ、今の間か。
「……帰んで」
「あ、送りますよ」
スっと立ち上がった平子さんに続いて天崎さんが立ち上がる。
平子さんが視線だけで「どないする」と問いかけてきた。
「じゃあ有難く、お願いします」
天崎さんに頭を下げてからちらりと平子さんの顔を盗み見るとやっぱり不機嫌そうな顔だった。
