平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ31(仮)
「……」
なんだか平子さんの機嫌が悪い。
昨日のこと謝ってないから?
「あの、昨日また泣いちゃってすみませんでした」
「……ええねん、そんなことは」
「……はぁ」
お味噌汁を啜りながら頭をぐるぐる回転させるがどうもなんの理由も思い付かない。
……ま、いっか。
今日も平子さんのご飯が美味しくてハッピー!!
「風呂溜める?」
平子さんがちょっと不機嫌そうなまま聞いてくる。
「いえ、朝まで時間ないのでシャワーで済ませちゃいます!」
「さよか……」
平子さんは先にお風呂を済ませていたらしく、私が上がるやいなや迅速に頭を乾かしてくださった。
不機嫌でも世話は焼いてくれるらしい。
「時間ないねやろ? 早よ寝よ」
「あ、はい」
なんだか急かし方が猫みたい。
いつものように平子さんと人一人分空けて横になる。
するとすぐに平子さんの手が伸びてきて抱き寄せられた。
「あの、暑いですよ?」
扇風機をつけていても、くっ付くと流石に暑い。
それにそうそう毎日くっ付いて寝る仲ではないはずだ。
「ええから黙って寝」
ええー……なに急に……。
黙って寝って黙って寝ろってことですよね。
黙って寝ろもなにも暑苦しくて寝られませんがー!
……でも匂いは落ち着く。
悔しいがどうやら眠れそうである。
なんだか平子さんとくっ付くのも本当に慣れてきた。私が勝手にくっ付いてる時はバレたくないけど。
なんて考えながら目を閉じた。
紫雨を抱き寄せて逡巡する。
この虫の居所の悪さはなんやろう。
紫雨が帰ってくるまでは心配で堪らんかった。
帰ってきたら今度はこの調子。
……大体なんの連絡もないまんま、あないな時間になんのが悪いねん。
そいでもって不用心に呑気な顔して、他所の男の車で帰ってくるんやから、俺かてイライラする。
そうや、しゃァない。
そう納得して、紫雨の頭を抱え直す。
「むぐっ」
なんや呻いたがそんなん知らん。自分が悪いねん。
やっぱり平子さんの機嫌は悪そうだ。
どうにも出来る気がしないからスルーしていたけれど、いつか窒息死させられそう。
触らぬ神に祟りなし……寝たふりしよ。
神は神でも死神だけど。
平子さんはそそくさと寝たふりする私の頭を更に抱え込んだ。
三十秒程は我慢したが流石に息がもたない。
何度か平子さんの身体や腕をタップするが全く離してくれる気配はなく、抜け出すために身体を捩る。だがそれも脚で押さえ込まれてしまった。
え、この御方、ついに私を殺す気か?
そんな考えが過ぎった時、急に腕が離れた。
反射的に肺いっぱいに空気を吸い込む。
「な、なにするんですか平子さ」
抗議の声を上げた口がそのまままた塞がれた。この温かい感触は覚えがある。
何が起こったか、暗闇でも理解した。
酸欠で力の入らない腕で押し返すが何も意味をなさない。
なんでこの人、またキスしてんだあああ!?
元はと言えば平子さんが言ったのだ。私を恋愛対象としては好いていないと。なのになぜ。
ぐるぐると回らない頭で考えていると口が離れた。
「っ平子さん! だからこういうのは!」
「……ええから黙り」
私の言葉を遮って、そのまままた口付けられる。
もう訳が分からない。
いつの間にか侵入してきていた舌が口腔内を蠢く度にびくりと身体が跳ねる。その様子がおかしいのか平子さんが薄く笑ったのが息で分かった。
人の痴態を見て笑うなよ!!
思うようにならない身体とは別に、頭の中は猛抗議でいっぱいだった。平子さんを引っぱたきたくなったのはこれが初めてである。
そして兎に角息ができない。私が不慣れだからなのか元々そういうものなのかすら検討がつかない。息をしようとすると、ただただ唾液を飲み下す代わりに僅かに空気を呑めるだけ。
だんだんと目の前が暗くなってきた気がする。
あ、そもそも真っ暗か。
