平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ29(仮)
自惚れやなかったら俺は紫雨に惚れられとる。
その現実に俺は頭が真っ白になった。
やっと深く考える必要がないと気が楽になったとこやったのに、当初の悩みに立ち戻ってしもうた。
俺に惚れとるんやったら俺はどないな態度を取るべきなんや。軽率に手ェなんぞ出して気まずゥなりとうもない。紫雨に追い出されるんも正直困る。
アー……駄目や。俺の自己中心的な思考しかない。
そもそも俺、紫雨のことそないな意味で好きなわけちゃうて言うたばっかしやん。不誠実がすぎるやろ。
頭をガシガシと掻きむしりたい衝動に駆られた。
今、動く訳にもいかんけど。
アカン!! もうどないしたらええんや!!
誰か教えてくれ!! 神様!! ……は俺やし。
指をぴくりとも動かせんまんま、堂々巡りの思考を繰り返しよる。
抱き寄せた紫雨も動かんまんま、膠着状態てこういうことか?
そもそもなんで俺こないに動揺してるんや、今まで通り接したらええだけやないか?
脳内がクエスチョンマークまみれや。
それやのに、こんな時やのに、ゆるりと欲が鎌首を擡げてくるのが自覚出来た。己の自制心の無さを恥じる。紫雨から即座に離れようかとも思うたが、時すでに遅し。もう紫雨にもバレとるやろうと思う。紫雨の身体が微かに強ばった気ィがした。
どないしよう……。
シレッと今起きたフリするか……。
かというて、なんや離れ難い。
無意識にまたギュッと抱き寄せてしもうた。
頭頂部の丸みが俺の頬にちょうど合う。
紫雨がもぞりと動いて顔の向きを変えたのが分かった。大きゅう息を吸う。どうやら息苦しかったよう。
「ひ、平子さん……。起きたんですか……?」
息をたっぷり吸い終わり声を掛けてくる紫雨に、なんやムッときて更にキツく抱き締めた。
「ぎょぇっ」
しゃァからなんやその色気の無い呻き声は。
「お、起きてますよね!!」
「せやったらなんやねん」
「なんで怒ってるんですか!」
「なんも怒ってへん!!」
焦ったように喋る紫雨にシラっとした態度で返すがムッときとんはバレとるようで隠すんもやめた。
腕ン中で無駄な抵抗をする紫雨をもう一度締め上げてパッと解放する。
紫雨がヒーヒー言いながら背ェを向けた。
「暑かったし苦しかったですよ……!!」
そう言う紫雨の首筋が目ェに入るとまたこん気持ちがなんなんか分からんなる。
恋か欲か。
分かりもせんうちに手ェを出しとうないのだけはハッキリしとった。……もう多少出しとるけど。
少なくとも初対面の時よりは俺は紫雨ンことを大切に思っとる。しゃーからこんなに悩むんや……多分。
後生やから、もう少しだけ悩ましといてくれ。
俺ン腹が決まるまで。
