平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ21(仮)
そのうち来る気はしていたのだ。
そういう親だから。
殴られた後、平子さんに手当してもらい、宥められ、泣いてしまった。そして泣き止むまで背中を撫でてくれて、頬を冷やすために何か取りに行ってくれた。
「すまん、米しかなかった」
本当に申し訳なさそうに冷凍のお米を差し出すものだからついクスリと笑うと平子さんも同じように笑う。氷も氷嚢も保冷剤も、無いことは私がよく知っていた。
「ありがとうございます」
ガーゼに包んでくれたそれを受け取ろうとするとそのまま私の手をすり抜けて頬に当てられた。
ちめたい。
思わず眉間に皺が寄ると平子さんがまた少し笑って、部屋の中の穏やかさが戻って来た気がして、やっぱりまた私も笑った。
「親父さんはずっとああなんか?」
「まあ、そうですね。私が思う通りに動かないのが許せないんだと思います。平子さんがいるのも見られちゃったのでまた家で色々言って怒ってるだろうと思います」
「じっとしとれんくてすまんかったな」
「いえ、助かりました。ありがとうございます」
平子さんがあんまり真っ直ぐ見詰めて謝ってくれるものだから「自分さえ我慢すれば」なんて思っていた自分が申し訳なくなった。
「でも、ああ見えて気の小さい人なので、暫くは来ないと思います」
紫雨はそう言うて笑う。
傷と腫れた頬のせいで引き攣っとるし、よう見れば無理に笑うとるのくらいすぐ分かった。チラと盗み見た手ェがまだ震えとったから。
「……なァ、さっきも言うたけど泣いてええんやで」
震えとる手ェを緩く握るとピクリと跳ねた。
「なんぼ泣いても俺は怒ったりせぇへんから」
「でも……」
「でももだってもあらへん」
へらへら笑う紫雨を抱き寄せる。
俺に気ィ遣わさんよう一生懸命笑う顔が、親に愛想尽かされんように必死な子どもに見えた。
ほんなら泣きたい時に甘やかしたらな、いつ甘やかすんや。
紫雨は、大丈夫だなんだとまだもごもご言うとるがそんなん知らん。
「泣きたいだけ泣いたらええねん、もう黙って早よ泣き」
ただ今だけでも何も考えんと穏やかであるように。
