平子真子逆トリ(仮)
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平逆トリ14(仮)
それから何事も無く、平子さんお手製の有難いご飯をいただき、お風呂に入り、平子さんの髪をドライヤーさせていただいている。
緊張した割に存外平和に時が流れ、ホッとした。
「そういえば平子さん、今日の買い物の服、試着してみませんか? 寝間着にちょうど良さげな浴衣も買いましたよ」
「おー、ドライヤーと扇風機であんまし聞こえへんけど何となく言いたいことは伝わったでェ」
平子さんは扇風機の風に、涼しそうに目を細めて当たっている。猫みたいで可愛い。
またたっぷり一時間程かかって髪を乾かし終えた。
今回は平子さんが髪の水分を取っている間に私もお風呂を済ませたので、続けて私の髪を乾かす。
「なァ、俺が乾かしたろうか」
聞き間違いだろうか。
ドライヤーを止めて表情だけでもう一度と要求した。
「俺が髪、乾かしたろうか」
「へ」
固まる私に平子さんは苦笑いで肩をすくめる。
「俺のン乾かしてくれとるお礼に」
「い、いえいえいえ……恐れ多いですし……」
「ええよ、そんなん。ええから貸し」
平子さんは惚けている私の手からするっとドライヤーを抜き取って私の後ろに着いた。
「前向きィ」
言われるがままに扇風機の方を向いて大人しく乾かされていく。
頭皮を掠めながら髪を梳いていったり、時々首筋に触れる平子さんの手にそわりとする。
夕寝の時に触れられた手の感触が思い起こされ、少し顔が熱くなるのを自覚した。
私の髪は平子さん程長くないので落ち着かない時間もあっという間に終わり、ほっと胸を撫で下ろす。
「……ありがとうございました」
「どーいたしまして」
そう言って薄く笑う。
何だかやっぱり平子さんの雰囲気が少し違うかもしれない……気がする。ただの気のせいかもしれないけれど。
「あの、試着しますか?」
「そうしよそうしよ」
下着は既に新しいのを渡していたけれど寝間着は初日のままだ、そろそろ着替えたいだろうと思う。
「まず寝間着候補の浴衣です! 洗濯機で洗えるタイプで生地柔らかいのできっと寝やすいはずです!」
「浴衣エエなァ、ちょォあっち向いててや」
「はい!」
そうか、浴衣は着る時に下着一枚になっちゃうし……。上裸を見たからあまり変わらない気もしなくはないのだけれど、普通恥ずかしいよね。
後ろからしゅるしゅると衣擦れの音がする。
すぐにシュッと強めの音がした。
「ええで」
振り向くと綺麗に浴衣を着こなした平子さんが立っていた。さすが平子さん、やっぱり様になる。
「着心地はどうですか?」
「エエ感じや。おろしたてとは思えんな、やらかいわ」
平子さんはニコニコしながら腕を回したり脚を曲げたり、動いて着心地を確認している。
非常に可愛らしい。
そして私が見る限りでもどこにも不具合は無さそうだ。
「良かったです!」
「おおきになァ」
「他の服はどうしますか?」
私がそう聞くと平子さんは顎に手を当て、少し首を傾けた。
「せやなァ……もう遅いし、明日の朝にしよか」
平子さんの目線の先を追って、時計を見るともう時計の針は十二時を大きく回ってしまっている。
確かに今日全て試着していては寝るのが何時になるか分からない。
「そうですね! もう寝ますか!」
そこまで言って一瞬夕寝の時のことを思い出すが、ぶんぶんと頭を振って思考を追い払う。
あくまで私達は健全に寝るのだ。
何も起きはしないし起こさない。
そう堅く決心し、布団に入った。
夕寝の時とは違い、一日目と同じように奥側を平子さんに使ってもらう。きちんとタオルケットと念の為の毛布も渡して、これで間違いは起こるまい。
私は己の対応の早さへの満足感から、心の中でドヤ顔をしていた。
「ほな、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
そうして安心して目を閉じた。
