破面篇
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霜夜
手刀を喰らわした後、プツリと糸の切れた操り人形の様に、紫游はその場に倒れた。
卍解の拘束を解かれた藍染は、あっという間に一護が連れ去り戦争は幕を閉じたが、四番隊へ運んだ紫游は目を覚ますことはなく月日は流れて行く。
あの日から紫游は眠ったまま。
「傷はとうに完治していますし、失った霊圧も大方回復している筈です。それでも目覚めないのは、彼女が生きることを諦めてしまっているからではないかと、私は思います。……それも、単なる憶測ですが」
紫游が目覚めないのは、心の問題だと卯ノ花さんは言った。
ならば、生を諦める原因とは何か。
いつも置いて行かれるばかりの俺には判断の付けようがない。
他の事なら、大体検討も付く。
市丸をどうしたかったんか、とか。
その為に俺に何をさせようとしたんか、とか。
それらは実行した。
紫游の望んだ通りに上手く行った筈やと思う。
せやけど、コイツが目覚めんかったら、コイツは自分がやった結果を見ることも出来ん。
「なァ……オマエはまた、何を諦めたんや」
話しかけても何の返事もない。
それでも卯ノ花さんの助言に倣って、殆ど毎日見舞いに来て、こうして一方的に話す行為を続けている。
手を握って、声をかけて。
「人が見舞いに来たったっちゅうのに……呑気に寝てんちゃうぞ」
出てくるのはいつぞやの見舞いの時と同じ言葉。
「五番隊も、他の隊の奴も、心配してんで。俺等かて、そや」
特に五番隊五席の子は、毎日目を腫らして見舞いに顔を出す。
慕われていたことくらい容易に見て取れた。
「早う帰って来い」
突然、握った手がぴくりと動く。
驚いて顔を上げると、紫游の頰を涙が伝い、唇が微かに開いている。
「せや、早う帰って来い! 今度はオマエが他所行く前に、ちゃんと迎えに来たったで!」
思わずグイと手を引くと、頑なに閉ざされたままだった目蓋が約一年ぶりに、薄っすらと持ち上がった。