破面篇
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追っては逃げて
「ちょ……! 待て!!」
俺の制止の声も虚しく、紫游はビルの向こうへ走り去った。
「また、逃げられてしもた……」
百年前も、百五十年前もそうだ。
捕まえた、そう思った時にはするりと手の中から抜けて行った後。
"五番隊に入りたい"
四番隊で告げられた時は、霊術院を卒業すれば、また同じ様に笑って俺に纏わり付いて来ると自信があった。
それがどうだ。
卒業してみれば、能面の様な顔で淡々と仕事を熟し、鍛錬に励む。
確かに、死神としては"良い"と言う他無い。
しかし、その有り様は、無意識に俺が望んでいたものとは、おそらく違った。
そして、百年前。
霊術院に入る前に四番隊で見た紫游と、本質は変わらないのだと再び思い始めた頃に、誤解を解く間も無く今の様に逃げられ。
帰って来たアイツは、どういうわけか空っぽになっていて。
それからしばらくして、俺は藍染の裏切りによって、尸魂界から離れた。
「はァ……ホンマ、難儀やな……」
擦れ違いばっかりや。
「もっと、ちゃんと治療を受けて来れば良かった……」
原作とは違い大きな怪我の無い乱ちゃんを、霊圧を消して追いかけるのは今の状態では辛い。
でも、ここで守れなければ乱ちゃんは涙を流すのだろう。
それは駄目だ。
"ギンちゃんも乱ちゃんも泣かずに済む様にしたい"
自分の言った言葉を思い返す。
誓った、と言っても間違いではないだろう。
私は、あの二人の有り得たかもしれない穏やかな日々が見たい。
あの雪の日の想い出ばかりでなく、暖かな日向で生きてほしい。
ギンちゃんは今、生きていたいのか。
それとも、死んでも復讐したいのか。
そのどちらかなんて、私は知らない。
「……邪魔しない、って約束は始めから成立しないんだよなぁ」
どうせ放っておいたら、ギンちゃんは乱ちゃんを必ず泣かせるんだから。