破面篇
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繋いだ手は離さないで
「ごめんねぇ、イヅルくん。指示した側から第一負傷者が私で」
ひよ里さんを守れた後、私は下に降りてイヅルくんの手当を受けている。
出血は多かったが、幸い死に至る様な傷ではないらしい。
「それにしても犀峰隊長……まさか煎餅まで背中に隠していたなんて……」
オヤツのつもりで隠していた煎餅は、今や血塗れの無残な姿で私の横に横たわっている。
「煎餅に背中を守られた死神なんて歴史上初じゃないですか……? 実際、この煎餅が無ければ背骨もこの程度じゃ済んでません。神経も何とか無事な様で良かったですよ……」
我ながら、なんとも間抜けな命拾いだと思う。
「私達、びっくりしたんですよ? 平子さんが血相変えて運んで来たから、死んじゃったのかと」
そう言えば乱ちゃんは平子隊長を知らないわけではないのか。
「って……その話題は止めよう。私が別の意味で死ぬ……」
平子隊長に、あの平子隊長に……おっ……お、御姫様抱っことやらを……。
「隊長! 筋肉に力入れないで下さい! 血管が収縮して出血が!」
今ので治りかけの血管が開いたのだろう。
普段物静かなイヅルくんに、結構な声量で怒られる。
誰のせいだ……誰の。
「イヅルくん、どのくらいで治る?」
「うーん……。神経が無事と言っても、全く損傷が無いかと言えば嘘になります。まだ脚の感覚がボヤけているでしょう? せめて神経と骨が継げるまでは動けません」
「つまり……まだってことね」
焦っても仕方ないのだけれど、焦りが募る。
私の記憶力が完璧なら、僅かばかり不安も減ったのだろうが、そうは問屋が卸さない。
一護……いつ来るんだろう。
卯ノ花さんも、いつ。
「桃ちゃん、手握ってて」
「え? ……は、はい」
出来れば、桃ちゃんも二度と藍染に利用されたくない。
藍染が入れ代わるのは、一護が動揺する少し前の筈。私が、鏡花水月にかかっていないのだとしたら、私は桃ちゃんを守れる。
まぁ……かかっていたら、繋いだこの手は藍染なのだろうけど。
「雛森くん、しっかり握っててあげてね。隊長は平気な顔してふざけているけれど、多少なりとも神経を傷めているんだ……本当なら失神したっておかしくない」
こらこら。
心配させる様な事を暴露するんじゃないよ、イヅルくん。
確かにイヅルくんの言う通り、気の遠くなる痛みが呼吸の度に襲ってくる。
だからといって気を失うわけにはいかない。
この後からの展開が大一番なのだ。