破面篇
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懐かしい一撃
城郭炎上の炎が未だ舞う中から藍染達が姿を現した。
たったそれだけで……。
いや、実際は一人も欠けない十刃にワンダーワイス、得体の知れない大きな虚の存在の所為もあるが。
しかし、出来る限りの重傷者を防いだこの戦場でさえ、漂うのは"絶望感"。
どうするべきなのか。
どうすれば。
何を、どう動く。
ただ待っていても物語は変わらず進むと分かっていて、それでも現状に直面すれば私の頭は最善の策はないのかと回転し始める。
違う、先ずは落ち着かなければいけないのだ。
深呼吸を……。
「待てや」
息を吸う。そのつもりだった。
でも、耳に届いたその声に何もかもの身体機能まで止まってしまった様に……まるで身体の存在さえ忘れてしまった様に、
私の全てが"その声"に惹きつけられる。
「久しぶりやなァ……藍染」
見たい。
貴方が生きていると、自分の目で、確認したい。
けれど、俯いた顔が上げられない。
やっと息を吸う事を思い出せば、今度は脈が速い事に気付く。
胸が痛い、息が苦しい。脚が、身体が動かない。
動け、ちゃんとしろ、笑え。
「久しぶりの御対面や、十三隊ン中に挨拶しときたい相手がおる奴、居てるか?」
「ぐふぉっ」
先程までと違う理由で頭が真っ白になった。
脳内がクエスチョンマークだらけっちゅう奴居てるか? そう問われれば、それは間違いなく私。
目の奥で御星様がキラキラしている。
私はいきなり顔面に直撃したものを確かめるために顔を上げた。
「紫游! そないな羽織着て何してんねん!!」
「ひ、ひよ里さん……」
複雑な気分より喜びが勝ってしまい、ついヘラリと笑う。
「隊首羽織でロン毛でヘラっとすんな! ボケ!!」
嗚呼、見事な蹴りがもう一発。
喜びのアドレナリンが出てなければきっととても痛いのだろう。
だけど今はいくらでも蹴られたい。
「い、いやぁ、嬉しくて、つい」
尚ヘラリと笑う私を、ひよ里さんは懐かしい顰め面で見下ろす。
「なんや喋りまで喜助みたァで腹立つわ……」
「ひよ里さんがどう思っていても、私はひよ里さんが今も大好きですよ」
デレデレとだらしなく笑い続ける私をもう一発、合計三発蹴って
「そういうとこや、言うてんねん」
とひよ里さんは元の場所に戻って行く。
ひよ里さんの御陰で動揺した心が落ち着いた。
今大事なのは、ここから生きて戻る事。
全部終わったら、またひよ里さんと、苺大福を食べたい。