破面篇
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絶望を運ぶ皇子様
思ったより消耗した。
やはり、初めてまともに使用した卍解でいきなりあの巨大なアヨンを融かしきるというのは、少し無茶をしたのかもしれない。決して霊子密度も低くはなかった。
もっとペース配分を考えなければ肝心な時に戦えない。
いくら霊圧が高いといっても霊力は無尽蔵ではないのだから。
「ということで! はい! みんな休憩!」
副隊長組に重傷を負わせまいとした試みが、なまじ上手くいってしまったがために、彼等は隊長達の援護に回る気満々だ。
しかし、重傷はないにしろ、消耗した今行っては……。
特に日番谷くんは、やり辛いだろう。
それならば、原作通りここに集めておくしかない。折角守った彼等の命を、悪戯に奪う恐れのある選択は、するべきではない。
それ程この三人の
特にバラガン。
命を賭けるのと、命を捨てる事は違うのだ。
という言葉が現状を表すのに最も即していると思う。
「京楽さんも、砕蜂さんも、日番谷くんも、負けるわけないさ。だから、みんなもう少し身体を休めてよ。必要があれば先に私が行くし」
それでも納得のいかない顔をする面々に念を押して、戦況を見るために空に視線を移す。
「……何もかもを拾っては、別の物を取り零す……」
私は、今この時、何か取り零したものはないだろうか。
「あ……」
見上げた空に一文字の黒い亀裂。
麻布を引き裂く様な耳障りな音が響く。
ワンダーワイス。
何を思うよりも身体が先に動いた。
それが霊圧の高さによるものであろうと、最も上達の早かった瞬歩で、間に合わないなどあってはならない。
今間に合わなかったら、副隊長達に嘘を言ったのと同じだ。
「浮竹さん!!!」
唖然と空を見上げる浮竹さんの背後に迫ったワンダーワイスの手を彼岸花で受け止め、払う。
「うー?」
防がれた自分の手を見て首を傾げたワンダーワイスは、こちらに興味を無くしたらしく、共に現れた大きな虚の方へと去った。
間に合った事、あの手を防げた事、興味を無くした事、全てに胸を撫で下ろす。
例え、遊びの一撃であろうとワンダーワイスのあの手は喰らえばただでは済むまい。
額を伝う汗を拭いながら、先程消したアヨンを思い出した。
すぐに響くのはワンダーワイスの"あの声"。
思わず耳を塞ぎたくなる高音。
音波、なのだろう。
ハリベルを包む氷天百花葬は砕け散り、雀砲雷光鞭の爆炎の名残の中からバラガンが再び姿を現わす。
そして、ワンダーワイスの言葉を聞いた大きな虚が、総隊長の城郭炎上を呆気なく吹き消した。
「バースデーケーキの蝋燭じゃあ……ないんだぞ……」
とうとう、藍染達を封じるものはなくなった。