破面篇
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不安定な天秤
総隊長から、雛森桃が快復したと報せがあった。
同時に、桃ちゃんが同席を望んだ現世との通信に立ち会うように要請も。
「あのね、日番谷くん……」
桃ちゃんが日番谷くんと話す中、私は画面に映らない位置に雀部副隊長達と並んで待つ。
久しぶりに見た桃ちゃんは、傷こそ快復しているものの、黒目がちな瞳の下に酷い隈が有り、不眠が続いている様子がはっきりと見て取れる。その微笑みも疲労の色が濃く、精神的には安定していないことが、傍目からはよく分かった。
どうみても、まだ単独では職務を任せられそうにはない。
「藍染隊長にもきっとどうにもならない理由が……そうよ! 市丸ギンに唆され、て」
藍染をまだ隊長と呼び、藍染の話になってから異様に饒舌に藍染を擁護する言葉を並べる桃ちゃんを、総隊長がすかさず白伏で眠らせた。
「すまぬな。本人の意思を尊重して同席を許したのじゃが……まだ早かったらしい」
通信終了後、雀部副隊長が受け止めた桃ちゃんを私が預かる。
「……桃ちゃん、辛いね。これが夢なら、良かったのにね」
意識がないのだから聞こえていない筈だが、我知らずそう言葉をかけていた。
本当に、夢なら……。
通信の日から、再び桃ちゃんを四番隊に寝泊まりさせてもらえるよう卯ノ花さんに頼み、桃ちゃんはしばらく通い、という条件で何とか通常通り業務を行っている。
隊舎に居れば、何処を見ても藍染を思い出してしまうのではないか、と思った私なりの配慮のつもりだ。
自室に戻るには、せめてもう少しよく眠って、落ち着いて思考を出来るようになって貰わなければならない。
「ま、それも私の経験則であるからして、桃ちゃんもそうとは限らないのだが」
「十二番隊みたいな口調で、何をぶつぶつ言ってるんですか? 隊長」
執務室の御馴染みになりつつ光景。
ボヤく私と、呆れる五席。
「いや、平和とはかくも危うい天秤で成り立っているな、と」
「……はぁ」
彼女は遂に、生返事で無視という対応を習得したらしい。
天秤を壊す一石は、こちらの歩みを待たず、もうすぐ投じられる。