破面篇
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不本意な就任
私はこれ以上無く眉間に皺を寄せていた。
原因はこの羽織だ。
「無理に隊長を据える必要は無いのでは? 総隊長」
「仕方がないじゃろう。卯ノ花、京楽、浮竹の推挙が有ってのことじゃ。眉間の皺はそのままじゃったが、渋々でも隊長資格の検分も終えた、もう文句は聞かん」
そう、腹部と手の怪我が快復した後。呼び出しに応じた結果、雪崩れ込むようにあれよあれよと隊長資格の検分を行われ、最早羽織も用意されていたのだ。
腹を立てぬわけがない。
「せめて三席……」
「隊長じゃ」
「雛森副隊長を隊長に……」
「おぬしが隊長じゃ」
絶望した!!
あまりの逃げ場の無さに一番隊舎で、デパートで駄々を捏ねる子どもの真似をやりまくりたい衝動に駆られる。
「やーだー、やーだー、やーだー!!」
というか、やった。
目の前で繰り広げられる情景に、総隊長は深く溜息を吐く。
「分かった分かった。何か一つ我儘を聞こう……それで引き受けてくれぬか。勿論、隊長をやりたくないという我儘は無しじゃ」
ここまでくると孫に玩具を強請られる御祖父ちゃんである。
ただ、この申し出は今、私が欲しかったものだ。
すかさず申し出に乗る。
「ではそれで! 何でも良いのですよね? 隊長ヤダ以外なら」
一応、念押しをしておく。
後で翻されては困る。
「何度も言わせるな、何でも構わぬ」
「ならば、藍染との戦いが終結した後、一人の罪人の罪を減刑して頂きたい」
総隊長の顔付き、霊圧の重みが即座に変わる。
「藍染惣右介を赦せとは言うまいな」
「まさか。藍染は煮るなり焼くなりどうぞ。私が言っているのは"藍染を殺す為に仕方無くあちらにいる人物"ですよ」
この間の双極でのヤケで思い付いたのは、死ぬ運命の者を助けられるか否か。
幸い、彼は死なずとも罪さえどうにかなれば生きていても支障は無い筈。
「それが誰かは、まだ言う気は無いのかの」
「今言ってしまって、もし藍染に悟られればその人の命が危ないので。理由はまた終結後、生かしたまま連れ帰れたら御説明致します」
実際、彼の行動の言い訳についての私の案は、私一人ではどうにもならない。
全て終わってからきちんと相談せねば。
「ふむ……、良かろう。幸い、四十六室は機能しておらん。ただ、儂が納得出来ぬ場合まで保証はせんぞ」
総隊長の霊圧が先程より和らいだ。
一先ず、第一関門はおーけー。
「それでは、取引成立ということで! これから新たな相応しい人物が現れるまでは五番隊隊長を精一杯努めさせて頂きます」
「おい、次が現れるまでという条件は飲んでおらんぞ!」
しれっと付け足した条件がバレた。
「いいえ! 絶対に私より相応しい人物が現れますので!」
首を捻る総隊長に一礼して、一番隊舎を後にする。
背負った"五"は例えようの無いくらい、私には重過ぎる。