尸魂界篇
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決心
「兄貴は死神に殺されたんだ!!」
夜中に私は飛び起きた。
翌朝聞く筈の岩鷲くんの叫びを夢に見たのだ。
身体がシンと冷えて、冷汗と震えが止まらない。呼吸が、苦しい。
「何で……来ちゃったんだろう……」
勝手に溢れようとする涙を、歯を食いしばって堪える。
何が、こちらなら息が出来そうだ。
何が、楽しそうだ。
私が、全てを知っている限り、何処にも安楽な場など無いに決まってるじゃないか。
何で、忘れようとした。
何で。
「後悔しておるのか」
唐突に聞こえた声に、心臓を握り潰される心地がした。
涙が見えぬよう、立てた膝に顔を埋めて返事をする。
「夜一さん、突飛な話でも、聞いてくれますか」
もう、一言も溢さず飲み込み続けられはしなかった。
泣いても、吐き戻しても足りない。
身体中、約百五十年の見ない振りの後悔と自責でいっぱいで。
「なんじゃ、おぬしが突飛なのはいつものことじゃろう。ここで言い難いのなら外へ出るか」
無言で頷き、先を行く夜一さんに続いた。
「ここなら良かろう」
志波家を出て、少し歩いた草地に夜一さんは座る。幼子がするように大人しく私もそれに倣う。
「あ、の……」
引き攣った喉では、最初の一言がどうしても辿々しい。
「私は、全て知っていて、百五十年、ここに居ました」
「全て、とは?」
喉が時折ヒュッと鳴る。
こちらを見ないように聞き返してくれる夜一さんに感謝しなければならない。
目が合えばきっと私は話せない。
「藍染のこと、これからのことも、全て」
一瞬、夜一さんの身体が強張った。
また後悔が重なる。一人で抱えられないからと、話すべきではなかったのではないか、と。
「ふむ……それで、今はおぬしの知るままに進んでおるのか」
「私以外の事は、おそらく滞りなく……」
「ならば……問題はないのではないか?」
何が、問題ないのだろう。
「私は、救えたかも知れないんです。平子隊長達や都さんや海燕さ」
「もしそうすれば、おぬしの判断では未来が良くはならんのじゃろう?」
心中を言い当てられた気がして、居た堪れなさから、また無言で頷いた。
「おぬしの知る通り進まねばならぬなら、それは仕方のないことじゃ。目に見えるもの全ては拾って歩けぬよ。手当たり次第に拾っては、別のものを取り零す。喜助は、彼奴は"運命なぞない"と言うじゃろうが……考えてもどうにも出来ぬ事は、やはり"運命"なのじゃ」
「私の、考えが足らぬのでは、とそう思う事ばかりでした……。浦原さんの様に、考えれる人なら、と」
「……気負うでない。おぬしは、おぬしの知る未来を守れば良い」
未来については何も聞かず、ただ私を赦してくれた夜一さんや、この世界で懸命に生きる人々の為にも、私は、私の知る未来を守るべきだと、決心がやっとついた気がした。