尸魂界篇
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浮いては沈む
翌朝、夜一さんによる見事な引っ掻き傷を携えた一護の顔に、笑いを堪えるのが大変だった。
志波家への道すがら、夜一さんと一護以外の三人に改めて自己紹介をすると、みんな聞くことは同じで。
「死神なのに、どうして?」
勿論、返す言葉は"楽しそうだったから"。
本当の理由は、夜一さん以外にはまだ話せないし、きっと話す必要がある場面はない。でも織姫ちゃんには、いつか話すのも楽しいかもしれないと思う。
死神生活で、長いこと忘れていた乙女心というものが少しだけ、擽ったくなった気がした。
「お、アレじゃ」
会話を終えて物思いに耽っていた私は、夜一さんのその言葉で我に帰る。
「あー……。凄く、前衛的、ですね」
原作で強烈なインパクトを残した、旗持オブジェが人の腕の家。
実物を見ると、もう圧感である。
「ここに……入るのか」
ええそうです、石田くん。
私は心の中で返答をしつつ歩を進め、一拍置いて、一護達は諦めた様に遅れて付いて来た。
「待てぇい!!」
家まであと数メートルのところで、太陽の逆光の中、華麗に金彦と銀彦が飛び降りてくる。
私は一歩引いて後ろへ。傍観する態勢に入る。
「奇怪な出で立ちをしておるな。 しかも二人は死神と見える!」
あ、モブでも勘定に入るのね。
少し気恥ずかしい。
敵と見做し、長々と喋る金彦と銀彦は、夜一さんの麗しい御尊顔の前に掌返し。
やはり夜一さんは余程恐いと見える。
空鶴さんと夜一さんの遣り取りが終わり、私達は室内に正座をして並ぶ。
ここに座って想うのは、志波海燕さんのこと。
私は内在闘争中とはいえ……いや、きっと内在闘争などなくとも物語の流れを守る為にそうしただろうが……。
私は、海燕さんを見捨てた立場といえる。
それを思い出すと、ここに居ることが志波家への酷い侮辱の様に思えて来た。
自己満足と分かっていても謝りたいと思ってしまう。
しかし、真実も話せないまま謝るのは騙しているも同じなのではないか。
「テメェ! 何でここに!!」
物語の進行を示す大声で、私の沈んだ思考は再び引き戻された。