尸魂界篇
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薄月
瞼を刺す西陽で目が覚めた。
どうやら随分しっかりと眠ってしまったらしい。
欠伸を噛み殺しつつ、窓の外の夕陽に目をやる。
嗚呼、今日は夕陽が綺麗だなぁ。
そう思い、のんびりと立ち上がって伸びをした。
「あっ」
マズい。非常に、マズい。
今夜はルキアが連れ戻される日ではないか。
隊長格の霊圧を感じておいて無視をするのもおかしいかもしれない。
「恋次くん、暴走するし……見に行くか」
すっかり暗くなり、淡い月の光がぼんやりと辺りを照らす頃。
おそらくそうであろう、と予測される場所の近辺で、電柱の上から道路を見渡す。
「あれか」
懸命に走る小さな姿が遠目に見えた。
しばらく見ていると、やっぱりというか何というか。朽木白哉と阿散井恋次が現れる。
そのまま、殺すだの何だのと物騒な事を言い始める恋次くん。
うーん、実際見てもアレは動揺している。
誰って、恋次くんと白哉さんが。
傍観も出来ず。私は、また"殺す"と言った恋次くんの前に出た。
「あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ」
はい、言ってみたかっただけです!
ええ、気持ちいいです!!
「なっ、犀峰! テメェ、四十六室の命令を邪魔するってのか!」
邪魔っていうかですね。それは四十六室の命令じゃなく藍染なんですよ。
とは流石に言えず。
「恋次くん、命令は"朽木ルキアを連れ帰る事"だよね? 君は今、命令外の事をしようとしてないかな」
苛立ちを露わにする恋次くんとは反対に、白哉さんは沈黙を守っている。
私だって、連れ帰らないと話の筋が変わってしまうから、連れ帰ることに関しては阻止しない。
でも、そのために人間やルキアを傷付けるのはきっとオカシイ。
「ね、話し合いで解決しようよ」
「やだね、テメェには関係ねェ」
「……分かった。四席ごときが、出過ぎた真似を致しました。では、失礼します。朽木隊長、阿散井副隊長」
もういいや、私が穏便に済ませてしまったら一護は鎖結も魄睡も砕かれないことを思い出したし。
そうならなければ物語が変わる。
きっと、今は誰一人として、冷静になんてなれやしない。
多分、私も。
平和には進むことの出来ない世界に、ギリと奥歯を噛み締めて背を向けた。
今宵、月にかかる雲の様に、藍染惣右介は、いとも簡単に心を曇らせる。