尸魂界篇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
変わらない
誰にも自分から聞くわけにはいかないから、耳を澄ませることを覚えた。
「十三番隊の朽木が現世で行方不明だってよ」
それを聞いたのは、ぼんやりした演技にも慣れ始め、一角さんとの鍛錬も素直に楽しめる余裕が出てきた頃。
ああ、また物語が動く。
行方不明、ということは黒崎一護は死神に、そして浦原さんは既に義骸をルキアに貸し出したのだ。
記憶が確かならば、ルキアが連れ戻されるのは夏。あと三ヶ月程度の猶予。
その猶予が終わってしまえば、もう穏やかなだけでは過ごせまい。
「市丸隊長が優しいからって調子に乗らないでよね!」
「……」
そんな矢先にコレ。夢小説で七割位の確率で一度は発生するイベント!
この台詞を生で聞く日が来ようとは……。
「アンタ、話聞いてるの!?」
御免なさい。私は貴女が結構可愛いって事と、突然身に降りかかった夢小説イベントにワクワクしています。あ、でも君坂さんの方が可愛いです。
「市丸隊長と何でいつも一緒にいるのよ!」
それは藍染が見張らせてるだけだと思います。
淡々と胸中で受け答えしつつ、ぼんやりとした芝居を打つ。
その間も三人の女性死神はキャンキャン言っているが、無視するしかないのだ。何かの拍子に藍染に見られたらアウト。
真ん中の女の子が手を振り上げたが、それの意味を分かっていて、私はただ目を閉じた。
「あなたなん」
「何してるん?」
来てしまったか事の元凶め。
背後に突然現れた話題の中心人物に、女の子達は飛び上がり、途端に水を打ったように静かになる。
今後が更にややこしくなると思いつつも、現状を脱却出来るのは有難い。
「なんや賑やかやと思たら。こないなとこで、えらい楽しそうやね。ボク、お邪魔してしもたやろか」
トレードマークのにんまり笑顔とはんなりした嫌味。
「も、申し訳有りませんでした!」
蜘蛛の子を散らすとはこういうことか。
あっという間に女の子達は去って行った。
「有難うね、ギンちゃん」
「御礼なんてええよ、面白いなぁと思ただけやし」
恐がられながらも何故ギンちゃんはモテるのか。
どうでもいい疑問が浮かぶ。
「ギンちゃん、しゃがんで」
脈絡の無い要求に、ギンちゃんはキョトンとしながらもしゃがむ。
その頭を百年前の様に容赦無く撫で回す。
「あの、紫游ちゃん……もうボク、大人なんやけど……」
そう言いながらも、大人しくされるがままになっている彼は、やはり百年前と同じに可愛いままで。
守りたいと、そう思った。