過去篇
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宛もなく走っている。
場所も分からない。
瀞霊廷を飛び出した事しか覚えていない。
「よく考えたら、こんな時に行く場所なんて、無いや」
せめて泣けたら良かった。
誰かにわんわんと縋って恨み言でも言えるなら、それが良いのかもしれない。
けれど、何処も思い付かなかったのだ。
ふと、立ち止まって見渡す。
流魂街の林の中のようだ。
遠くまで、来たなぁ。
「やぁ、探したよ。犀峰さん」
名を呼ばれて振り返ると藍染惣右介。
何でだろう、憎らしくも何ともないや。
藍染を見る度に湧いていた、憎らしい様な悲しい様な気持ちがさっぱり浮かばない。
「平子隊長がね、心配していたんだよ」
へぇ、そう。
それだけ。
嬉しくも辛くも何ともない。
おかしいな、くらいは分かるのに。
何も感じない。
これならそのままやっていける?
「はい、何も言わずに出て来てしまってすみません」
そう言って頭を下げると、藍染が肩に触れた。
少しの違和感。身体の中身を撫でられた様な。
分からないまま頭を上げると、藍染と目が合う。
「君は、何も起こらないんだね?」
「はい? 怒っていないと思います」
一瞬、間が空いて「そうか、なら良かった」と藍染が笑った。
「じゃあ、帰ろうか」
返事をして、私は藍染に続いて流魂街の林を後にした。
隊舎に戻り、平子隊長が何か言っていたがよく分からない。
多分、あの時の説明ではない、ということが分かったくらい。
でも、何と返事をしたかも覚えていない。
ただ、平子隊長は笑っていたから、多分ちゃんと返事が出来たのだと思う。
良かった、と思った。