過去篇
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有頂天
紫游の様子がおかしい。
「なァ、この書類……」
「はい! 修正ですね!」
「ちょォ、」
「はい! 三番隊に書類ですね!」
「お」
「はい! 御茶です、隊長!」
この通りやたらと機嫌が良い。
それどころか今まで仏頂面か無表情、良くて営業スマイルだった紫游が、満面の笑みでアレコレ世話を焼いてくる。
「平子隊長! おやつは何が良いですか?」
「さ、酒饅頭……」
今にも鼻歌でも歌い出しそうな調子でオヤツの買出しに向かう紫游の背中を、心無し顔を引攣らせながら見送った。
嬉しいような、気味が悪いような……。
オマケに他隊でもこの調子らしく、親しい者からはこの機嫌の良さについての問い合わせが続々と来ている。
それもそうだろう。
先程も言った通り、良くて営業スマイルまでの犀峰紫游が、矢鱈滅多御機嫌で廷内を忙しく走り回っているのだ。
何も無い訳はない。
さり気なく瀞霊廷は"御機嫌な犀峰紫游"の話題で騒然としている。
まるで珍獣発見やな……。
終いには「犀峰さんに恋人はいますか!?」なんて至極個人的な質問まで平子に回って来る始末。
「そんなん俺が知るかァアア!!」
鳴り止まない伝令神機と遠慮無く問われる紫游の事に思わず叫び、机に伏せて長い溜息を吐く。
機嫌のええ理由に見当が付かんわけやない。
せやかてコレは……。
「物静かになった思たら、昔と全然変わらんやんけ……」
声を弾ませて"五番隊に入りたい"と自分に告げた、まだ幼い紫游を思い出す。
今日はサボる気こそなかったものの、また違う理由で仕事がままならない平子であった。