過去篇
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万事休す
「あー……これは……」
意外と、キツい。
先遣と言われたのだし手強ければ救援を求めれば良いと思っていたが、虚の動きが速くて距離も取れない。
こんな事なら彼岸花は置いてくれば良かった。
彼岸花に拒絶されてから、また少しでも同調を高めたいがために持ち歩く癖を付けていたのが仇になった。
虚に飛び掛かられて咄嗟に抜いたのが彼岸花だったのだ。
あれから彼岸花は始解の解号にも応えてはくれない。
「破道の三十二、黄火閃!」
虚の連撃の合間に放った鬼道により白煙が舞う。
練りが甘い……。
詠唱破棄な上に集中出来ず練りも充分に行えなかった鬼道では傷を負わせる程度しか出来ず。
再び虚が爪を振り下ろしーー
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠すものよ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと帆を進めよ 破道の三十一、"赤火砲"」
大きな赤い爆炎。
酷く聞き慣れた声が紡いだ詠唱で放たれた鬼道で、虚は沈黙した。地に伏せ、ホロホロと身体が消えていく。
「なん……」
「ド阿呆!!」
脳天に鋭い衝撃。
頭がクラクラする。
こ、この手刀はやはり。
「何を馬鹿正直に戦ってんねや! 救援出せ! ちゅうか任務なら俺に言うて行け!」
チカチカする視界の中、視線を上げればこれ以上ない程に御怒りの平子隊長。
「も、申し訳ありません……?」
反射的に謝罪の言葉が出る。
「大体オマエは……! て、何笑てんねん」
指摘されて気付いた。
私は声を立てて笑っていたのだ。
しかし理由くらいは自分のことだ、分かる。
「ふふっ、だって、隊長がそんな顔して、心配、してくれたんだな、って」
すぐには笑うことは止められず、笑い混じりに説明する。
「……ホンマ、しゃアない奴っちゃ」
平子隊長はたまにする優しい目をして眉を下げた。
どうしても笑いが止められない。
だって隊長が助けに来てくれて本当に、心底から嬉しかったのだ。